第五章 発明品を改造する | レオナルド・ダ・ヴィンチのノート

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万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチの活躍を紹介していきます。

「さて、エネルギアのテストチャージには1ヶ月間かかるから、その間に幾つかの発明品を改造しておこう。」レオナルドが言うと、サライが応えた。「車と飛行機!」「そうだな、ではまず自動車 から行こう。」レオナルドは何枚かの図面を広げて説明を始めた。「これは私がまだフィレンツェにいた頃に描いた自動車の設計図だ。この自動車は手巻きの板バネシステムによって動くように出来ているから、まさに今回の実験にうってつけだと思う。板バネに蓄えられた力は、このギア装置を通じて後ろの二つの動輪に伝達される。動輪はそれぞれ速度や進行方向に応じて独立した動きをし、前輪はこの舵につながっていて、車の進む方向を決定する。」「ハンドルだね!クラクションは付いてないの?」元気良くサライが言う。「クラクションというのは良く分からないな?。。。とにかく先に進もう。改造点は、この板バネ装置をエネルギアに置き換えること、そしてギアシステムをそっくり頑丈で新しいものにすること。これだけで十分ローマまで走って行くことが出来るだろう。もちろん馬は無しで!速度が出過ぎると危険なので、車を減速させるためのレバーや、風速計を改良した速度計を追加すると良いだろう。」


「次はこの空気ネジ飛行装置!」 ゾロアストロが言った。「そうだな、この機械はミラノに来てから考案したものだが、人力だけでは到底飛び上がることは出来なかった。しかしエネルギアを動力として使えば人を乗せて飛ぶことが出来るだろう。ゾロアストロ、以前のパラシュートの実験の時のように澱粉で目を埋めたリネン(亜麻)の布を用意して欲しいんだ。空気が漏れないようにね。空気ネジの直径は5m。この人力で回すクランク装置とギア装置を取り外して、新型の動力装置を載せる。どのくらいの回転数で空気ネジを回せば良いか計算しなければならないな。軽量化も必要だろう。」「良く見るとヘリコプターみたいだね!」「またサライが訳の分からんことを言ってやがる。さっさと未来とやらへ帰えんな。」ゾロアストロが口を挟むとサライが睨んだ。「おいおい、喧嘩はやめてくれ。そもそもこの装置のアイディアのきっかけはサライなんだからもう少し敬意をはらってやれよ。」そう言ってレオナルドは続けた。


「次、羽ばたき機械 。脚の力でドラムを回転させて翼を上下に動かすものとか、いくつかの発明があるが、操縦性を考えるとむしろこのように下半身はバランスを取るために自由に動かせるものの方が良いと思う。そもそも人間の腕の力だけで羽ばたいて飛行することは無理がある。それから動力源の位置だが、操縦者の頭上、つまり羽根の付け根の真下、重心の位置に設置したらどうだろう。」「賛成、その方が絶対いい。パラシュートの飛行実験の時は空中で脚を動かす余裕なんかなかったよ。操縦に専念出来るような設計が必要だよ。」ゾロアストロが答え、サライが質問した。「飛行機ってどうして飛ぶの?」「良い質問だね、サライ。いいかい?私達の周りには空気という透明な気体がある。」レオナルドは棚から木で出来た小さな羽根を取り出して手で勢いよく回転させて飛ばした。「竹トンボだ!」サライは嬉しそうに弧を描いて飛行する羽根を見上げた。レオナルドはそれを拾い上げると「これはアジアに昔からある空飛ぶオモチャだよ。」羽根の断面を指差し「ほら、ここが斜めになっているだろう?反対側の羽根も同じ角度で斜めになっているね。これを回転させると空気が羽根にぶつかって下の方向に押し出されて風が起きる。この風に乗ってこのオモチャは浮かび上がるんだ。反対向きに回せば羽根の上側に向かって風が起きるから、今度は地面に向かって一気に落ちる。さっきの空中ネジもまったく同じ原理だから、きっとこのくらいの速さで空中ネジを回転させればちゃんと飛ぶだろう。」「僕にもやらせて!」



レオナルド・ダ・ヴィンチのノート-ゾロアストロ


飛行機の研究をするレオナルドとゾロアストロ


「それからこの羽ばたき機械が空を飛ぶ仕組みは、まさに鳥の羽ばたきそのものだ。鳥の羽も断面は斜めに湾曲していてこの羽を動かすことによって、羽根は空気を押し、空気は同じ抵抗力で羽根を押し返す。鳥を良く観察して気がついたことは、鳥の重さの平方根がつばさの長さになるということだ。つまりゾロアストロと機体の重量400リーブラ(約136kg)を持ち上げるには、その平方根すなわち約12mの翼幅が必要というわけさ。天秤による計測によって計算された翼幅は12ブラッチャ(約7.2m)だよ。」「えっ?また俺が飛ぶのか?」ゾロアストロが言った。「そういえば確かパラシュートの時も一辺が12ブラッチャだったな。」


「さてと、とりあえず以上だな。これらが済んだら、次はボート、クレーンで実験しよう。都市すらもエネルギアを使って動かすことが出来るかも知れないぞ。街の風通しを良くして伝染病をなくしたり、人々を高い所に運んだりすることも出来る!沢山の車が走り回ると危ないから、車の通る道と、人の歩く道は完全に分けて安全で便利な街にしよう。」



続く…


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