【公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
Once Upon A Time in Hollywood
【監督】
クエンティン・タランティーノ
【キャスト】
レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、カート・ラッセル、ダミアン・ルイス、マイケル・マドセン、マイク・モー、オースティン・バトラー、ルーク・ペリー、アル・パチーノ
【あらすじ】
あらすじ
リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)は人気のピークを過ぎたTV俳優。映画スター転身の道を目指し焦る日々が続いていた。そんなリックを支えるクリフ・ブース(ブラッド・ピット)は彼に雇われた付き人でスタントマン、そして親友でもある。目まぐるしく変化するエンタテインメント業界で生き抜くことに精神をすり減らしているリックとは対照的に、いつも自分らしさを失わないクリフ。パーフェクトな友情で結ばれた二人だったが、時代は大きな転換期を迎えようとしていた。そんなある日、リックの隣に時代の寵児ロマン・ポランスキー監督と新進の女優シャロン・テート(マーゴット・ロビー)夫妻が越してくる。今まさに最高の輝きを放つ二人。この明暗こそハリウッド。リックは再び俳優としての光明を求め、イタリアでマカロニ・ウエスタン映画に出演する決意をするが―。 そして、1969年8月9日-それぞれの人生を巻き込み映画史を塗り替える【事件】は起こる。
96点
2回見てきて感想。
いや~やっぱ好きだわ。ただし他の有象無象の映画よりははるかに好きだけどタランティーノの作品のベストではない。でも半分より上かも。
とにかく多幸感にあふれている159分。ヒッピー文化があのまま盛り上がってくれていればもっと自由な時代になっていたのかな。
町の再現度合いも半端じゃないうえに相変わらず選曲センスもたまらない。ミセスロビンソンをイントロだけ流してブツッと切るのが憎いぜ(笑)
カーラジオが重要な役割を果たしていた。当時の風俗が伝わってくる。
終盤までは小ネタの連続で明白なストーリーはない。しかし、リック。クリフ、シャロンの三者が交互に描かれ彼らがハリウッドの三つの層を象徴しているのはなんとなくわかる。
ポランスキーと結婚し、若く、これからのキャリアにも恵まれていたシャロンテートはハリウッドの上流の象徴。リックは少しだけ成功するもキャリアは後退し、現状維持に躍起となって落ち目な自分を惨めに感じているハリウッドの中流の人間。中途半端に成功している分辛さがのしかかってくる。
そして一番年上のクリフはスタントマンとリックの雑用をして愛犬とトレーラーハウスに暮らす一見負け組なハリウッドの下流の象徴。しかしクリフは日々を刹那的に生きており楽しそう。ドッグフードもマカロニチーズも不味そうなのに幸せそうに食べているのがたまらない。戦争の英雄だけあって生きているだけで儲けものと考えているいちばん成熟した人間ともいえる。
そしてそんな特殊なキャラにこれ以上ない説得力を与えるのが全盛期ばりのカッコよさを振りまき体バキバキなブラピ。声、表情、たばこの咥え方、仕草、全部がバチクソかっこいい。ブラピの後期代表作だろう。色気も半端ねえ。
そんなクリフの雇い主のリックを演じるプリオはレヴェナントでの気合入り過ぎな演技とは打って変わって肩の力の抜けた軽妙な演技を見せる。精神不安定ながら憎めない中年の可愛さ全開でこちらも魅力的。セリフ覚えてなくて鏡の自分に向かって罵りつつ、思わずまた酒を飲みそうになってしまってまた切れる場面とか最高だった。
あの撮影のシーンもカメラの存在を感じさせない少し不思議な雰囲気だったな。カットの終わりとセリフ間違えた時だけスタッフの存在が画面外から感じられる。
そしてあの子役の子はいったい何者だ!?上手すぎるしもう顔が完成されとるやないか!もしかしてあの役は後のハリウッドの大女優になる誰かだったりするんだろうか。いや、役名あったから違うか。あそこでの大人と子供の立場が逆転しているかのようなプロ意識の差のやり取りも笑えた。あの子もハリウッドの未来を担う上流だろう。
役に立たなくなっていく自分を小説の主人公に重ねて泣き出す演技も切り替えて本番で見せる名演も、その後子役の子に最高の演技と言われてウルウル来てるのも全部グッと来たぜ、さすがプリオ。
そしてシャロンテートの場面は友達踊ったりパーティしたりお気に入りの曲を聞いたり自分の映画を満足げに眺めたりひたすら楽しく幸せな時間だけ。特にシャロンの演技が観客を笑わせている場面がエモイ。事件の被害者ではなく未来が約束された優秀な女優だったということをしっかり描いている。タランティーノの愛を感じる。あの頃の幸せなシャロンをよみがえらせたいという。だからわざわざ出てくるスティーブマックイーンもシャロンを称えて惚れていたということにしてるし。
そんなシャロンとクリフたちをつなげるブルースリーの存在も大きいが、サングラスを外すまでは滅茶苦茶似てたのに外すとイマイチ違ったのが残念。あの尊大な態度は結構実際に近かったらしいが。
そんでリックがスパン映画牧場に行く場面も不穏で素晴らしい。あの絶妙なBGMや何も起こっていない時間の盛り上げ方はまさにタランティーノ。ダコタファニングのノーブラ姿も見られたし(笑)。
その牧場へとクリフをいざなうプッシーキャットの子も可愛かったな。あの誘惑の仕方は反則だが、ワインスタイン事件のこともあってかしっかり断るブラピさんカッコええで。そういやブラピだけはワインスタインから当時恋人だったパルトロウ守ったんだっけ。
マンソンに洗脳されてるヒッピーどもと絶対に自分を失わないクリフの対比も痺れる。そしてタイヤに刺さったナイフを見て犯人をボコって直させる展開もクライマックスを示唆していたんだろうな。
そこから半年時間が飛ぶのは少し唐突だった。リックを読んだのがレオーネじゃなくてコルブッチってのは笑ったけど(笑)。架空の映画たち見てみたいな。特にアントニオ・マルゲリーティ(イングロリアス・バスターズでブラピたちがイタリア人として潜入した時の偽名でもある)監督のダイナマイト大作戦は面白そう(笑)。
あの急に出てきた嫁も面白かった。
そしてリックとクリフのコンビがイタリアで小銭を稼いだ後に終わりそうになっているという展開に胸アツ。
あそこで多くは語らずにとりあえず今夜は飲もうかとなるのも切ない。
そしてリックはマルゲリータで酔いつぶれ、クリフはLSDでハイになりながら散歩。
可愛いなこいつら(笑)。
そして終盤の衝撃展開(とはいっても読めたけど)。
マンソンファミリー側の事情をほとんど描かないのが潔い。とにかく殺しにやってくる。実際の事件ではマンソンが恨んでいたのはポランスキー邸の前の住人だった音楽プロデューサーのテリーだからシャロンたちの死は完全にとばっちり。おまけに殺害事件を「ヘルタースケルター」(黒人と白人の最終戦争)を引き起こすためにブラックパンサー党のせいにしようとしていたんだからほんと最低。タランティーノの怒りが良くわかる。
テックス・ワトソン、スーザン・アトキンス、ケイティ(パトリシア・クレンウィンケル)、の3人も調べたら結構似てたな。そして逃げ出してしまうリンダ・キャサビアン(実際の事件では逃げずに外で見張り役)をマヤ・ホークが演じていたのにも笑う。ユマサーマンの娘こんなところで使うかね(笑)。
標的がリックダルトンに変わるきっかけになる路上での罵りの場面でリックがヒッピー=デニス・ホッパーみたいなこと言うのも笑ったな。
ここでマンソン側が「TVで殺しを教えたやつらを私らが殺す」って言って攻めてくるのもタランティーノらしいメタネタ。
まさに自分たちの妄想を現実の世に垂れ流してマイナスのエフェクトを出したマンソンファミリーVS映画やドラマのフィクションという構図になっている。
そこでほとんど敵を皆殺しにするクリフがヒッピー文化の象徴でもあるLSDでラリッているのも面白い。おかげで一切怖がらずに腕っぷしとブランディの噛みつき攻撃でマンソンファミリーたちを瞬殺してしまう。タランティーノの映画って毎回誰かが股間攻撃されるけどとうとう犬が噛み千切るようになったか(笑)。
スーザンアトキンスが異常なくらい叫びまくってたのも爆笑。
あんなパニクるかね(笑)。それくらいマンソンファミリーをバカっぽく描きたかったんだろう。有名な「俺は悪魔だ。悪魔の仕事をしに来た」っていうセリフの場面で「お前もっとダサい名前だったろ」みたいに言い返す歴史改変も痛快だった。
そして伏線とは呼べないくらい前半に雑に出てきていた火炎放射器が何故かリックの家にあって、それでスーザンを焼き殺すシーンで場内大爆笑。
さすがにあれ所持していたら犯罪だと思うけど関係ない(笑)。
そしてプールに浸かっているのに焼き殺されるという最高にアホな死に方もフレッシュで素晴らしかった。
クリフがほとんど殺してリックが美味しいところ取りするこの日の出来事は彼らの映画の仕事と同じ。
コンビ甲斐性直前に最後の最後に最高の仕事をして見せ、消えゆく運命だったハリウッドの中流と下流の二人がシャロンというハリウッドの未来を担う人材を救った。
しかし戦争の英雄であり暴力で物事を解決してきたクリフは、リックに「最高の友達でいることを努力している」と言ってさらっと退場してしまうのも切ない。
もう今後の彼らには輝かしい未来はない。しかし彼らがやってきたことには意味があった。これは歴史に埋もれた人々の魂を消化させるおとぎ話。
ちなみにエンドロールでバットマンの曲流すのはリックとクリフの関係性がバットマンとロビンに似てるからかな。
映画の中でくらいシャロンを救いたいし、消えていった有象無象の映画人たちの存在に意義があったことにしたい。
出てくる映画が大脱走以外有名な作品ではないのもタランティーノらしい博愛的な映画愛だと思う。でもディカプリオ版大脱走見てみたいな(笑)。
そんな最高に優しい映画だった。シャロン自身にとってはどんな事件があったのか知る由もないまま全部が解決してしまうのもタランティーノの「妊娠中だったシャロンに怖い思いすらさせない」という矜持を感じた。
もちろんシャロンが無事ってことはマンソンファミリーにインスパイアされたいろんなホラー映画やサスペンス映画、そして心に傷を負ったからこそ作れたポランスキーの傑作たちはあの後の世界には存在しないんだけど、それでもシャロンが無事でいることを選ぶのが熱い。たぶん「テス」も作られていないんじゃないかな。
それにマンソンファミリーの計画が失敗に終わっているってことはヒッピームーブメントもあの世界では終わらないのではないか?ってことはあの世界はずっと自由とドラッグの世界なんだろうか。それは無理か?
それからシャロン・テート事件の前の音楽教師ヒンマン殺し事件はどうなっているんだろうか。
とかいろいろ気にし出すとキリがない。
2回目見てより味わい深くなって好きになった。もはや理屈じゃなくて空気感が好きなんだろうか。ブラピの喋り方真似したい。
でも欲を言えばもうちょい長くあの当時のハリウッドを見たかったし、8月9日のもう少し前から色々見せて欲しかったな。4時間バージョンでも見ますよ。そしてもっとブルース・リーを活躍させてください。
ていうかこれシリーズ化して色んな時代のハリウッドを描いてほしい。
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