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映画ライターもどきの本音ブログ

映画ライターをしている20代後半の男です。好き勝手感想を書くために始めました。

【公開】
2019年(日本映画)

【原作・脚本・監督】
矢口史靖

【キャスト】
三吉彩花・やしろ優・Chay・三浦貴大・ムロツヨシ・宝田明

【あらすじ】

静香は子供の頃からミュージカルが大の苦手。しかし、とあるきっかけで音楽が聞こえるとミュージカルスターのように歌い踊り出すカラダになってしまう!スマホの音や日常に溢れる音楽に反応し所かまわず歌い踊りだすせいで、順風満帆な人生がハチャメチャに。恋も仕事も失った静香は、原因を探すため日本中を奔走する!しかしその先には、裏がありそうなクセ者たちとの出会いと、さらなるトラブルが!果たして静香は無事に元のカラダに戻れるのか!?旅の終わりに彼女が見つけた大切なものとは…?

 

フィルマークスより

 

 

 

 

86点

 

 

さすが矢口監督やで!さすがやで!ド直球160キロのエンタメだ!こういうのを待っていた!イソップの思うつぼの後に見たからかもしれないが、最高に楽しかった。小細工抜きで最高すぎる。

やはりシンプルなエンタメこそしっかり作れば圧倒的に面白くなる。それがしっかりできるのは日本なら矢口監督くらいだろう。主役にしっかり練習させるこだわりが今回もハマっていた。

まずこのアイデアは秀逸。世界初だよね?ミュージカルって何で日常で歌い出すの?って好きな人間でも思ってしまうもんね。

だから歌い出してしまう体質になってしまったOLを主人公に据えて、そのおかしさそのものを話の推進力にするのは巧い。ミュージカルであることそのものが問題で話の争点になるというメタ映画。ミュージカル嫌いな人こそこれを見るべき。

クレバーですな。

そもそも矢口さんの映画って『○○な人が○○な状況になってしまったら』ってワンアイデアを膨らまして出オチじゃない物語を作っていくってのが大半だから、実に矢口監督的な話だな。

それゆえに生まれるツッコミどころは多少目をつぶるしかない。

あんな簡単に催眠かかるわけないし、レストランで静香が踊り狂ってるのにあんなずっと演奏が続くわけないし、あんなことして会社のプレゼンの受けが良くなるわけないんだけどまあご愛敬か。

主人公が幼少期に学芸会でゲロ吐くくだりだって、あんな状態でステージ上げられるわけないし、なんであんな体調悪くなったのかわからないけど、まあトラウマを作った理由付けとしては十分かな。何より監督本人が手ごたえ十分だって言うゲロのリアルさが秀逸。やはりゲロが出るといい映画の法則は間違いない。

ツッコミどころのかわりに日本でミュージカル的なことをするにはどうすればいいのかってアイデアが凝らされていて感心。

特に会社で踊り狂うシーンでシュレッダーのゴミを紙吹雪代わりにぶちまけるという手法に舌を巻いた。

それからレストランのシーンのダンスは「狙い撃ち」の歌詞がそのまま会社のイケメン上司と食事に来ている静香の心情とリンクしているうえに、空間の使い方が縦横無尽で面白い。ポールダンス、壁宙返り、シャンデリアブランコなどなど見せ場も豊富でダンスとしては一番クオリティ高かったな。

あそこがパフォーマンスの凄さとしてはピークになってしまっていたのがちょっと残念だったけど。後、誕生日の曲の次にいきなり「狙い撃ち」流すってどんなレストランだよ(笑)。
ニュース映像でその時の静香の脳内イメージじゃないさまを流す落差も笑えた。

ただの楽しいミュージカルと言うだけでなく、無理して優雅な生活をしてこれが幸せと思い込もうとしているOLが一度その生活を失い、通過儀礼的な冒険に出て、真の自分を見つけるという物語になっているのもグッとくる。

主人公が20代前半なのにやたら昔の歌を知っているのも、元々は定番曲を歌うのが大好きだったという設定だから不自然じゃないし。

おまけに矢口監督作品の中でも主人公の転落ぶりが容赦なくてけっこう怖い。催眠にかかって初日で社会的地位を失うギリギリまでいってしまうってかなりキツイな。

だからこそ物語に強烈な推進力が生まれるし、歌ってる最中も話が止まらない。

前半では歌っている中で彼女の生活がどんどん壊れていくのに対し、後半ではピンチを乗り切ったり、なんとか旅を成り立たせるために歌と踊りが役に立つという方向にシフトしていくのが巧い。

話のついでに歌うわけじゃなくて歌唱とダンスがそのままストーリーテリングの手段になっている。

ラストのダンスだけがミュージカル的な超現実的歌唱シーンになっていたけど、それ以外は劇中で実際に流れている曲で歌っているのが面白い。ラストは主人公がミュージカルに肯定的になったから普通のミュージカル的なシーンがあるんだろう。

と、色々分析してみたけれど、それ以上に単純なミュージカルシーンのエモーションと主役の三吉彩花の魅力がスゴイ。

声もきれいだが、とにかく顔とスタイルが常人離れしていて、画面映えする。手足も長いし、身体能力も高いし、歌っている時の自信満々なナルシスト顔と終わった後のやっちまった顔の落差も面白い。顔のパーツがくっきりしてるから喜怒哀楽がわかりやすい。あとオッパイ大きいし(笑)。

単純に彼女を見ているだけでもう元が取れるレベルだった。

Tシャツ姿でヤンキーに混じって踊り狂ってんのもエロかったな(笑)。

やしろ優もリアルなルーザー感がハマってた。特にカップ焼きそば地面に落ちても食おうとするあの悲哀よ(笑)。

そして宝田明御大は予想外にまだ動きがキレていてさすが。ちょっといきなり冒頭から出てくるのはきつかったけどさすがレジェンドですわ。

ムロツヨシは安定のムロツヨシでした。

ミュージカル以外の笑いを取る場面もさすがのクオリティで場内は爆笑の嵐。

とにかく楽しくて斬新で、ちょっとだけ感動的なミュージカル。

なんでフィルマークスでこんなに評価低いんだろうか。

たしかにあの『年下の男の子』の歌唱レベルで金が集まるとは思えないが、まあそれはいいじゃないですか。