いいぞ!男、安兵衛!? BS時代劇『薄桜記』第4回「高田馬場」 | リーンのガラパゴスサロン~趣味や娯楽の広場

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 今回の主人公は中山安兵衛(高橋和也)なんですけど、私には典膳(山本耕史)の悲哀が心に残る。


「主君のいない浪人などそれも出来ぬのだ」


 武士は死に場所を選ぶために生きている。いいかえれば、主君の名誉が汚されたなら、その汚名を被るために切腹することができる。扱っている時代は、太平の元禄のころでしょうか、殉死は禁止されていたのでしょうか。でも、


 武士道とは死ぬことと見つけたり


 と、いったのはどなたか忘れましたが、それが美化された武士道の核心なのでしょう。平成の世に他人のために、上司のために死ぬなどあり得ない、そんなことがまかりとおるのが江戸時代なのですね。恐ろしい時代です。人間は世の中に蔓延する常識を超えられない。タイムマシンで私が江戸時代にタイムスリップしたら、江戸時代の人間は死ぬことばかり考えていると思ってを嫌うかもしれない。だが向こうの時代の人間からすれば私などちゃらちゃらしているごみみたいな奴とみるだろう。異常だけれど、妙にすがすがしい、実に奇妙な死生観が、のんびりと自堕落に生きるこちらを突いてくる。


 浪人となった典膳は道場入門の労を取ってやった安兵衛に助けられるかたちで長屋に住むことになる。気ままな暮らし、朝寝坊もできる。向かいの長屋に住む下女に肩をもんでもらうこともできる。


 しかし、なにか物足りない。


 そんなとき、安兵衛が一世一代の事件を起こす。世にいう高田馬場の決闘。伊予松平藩で世話になった叔父のために助太刀を果たし、6人を殺傷する。おそらく、江戸時代では普通に済まされる出来事だったかもしれないが、なぜか今でいうワイドショーネタになるような好事家に蔓延する事件に昇華する。安兵衛が殺めた人数が6人から、9人、やがて18人に増えるところ、噂が噂を呼ぶところなど実に恰好なネタになっている。太平の時代ともなれば、刺激的な事件が起きてほしいし話題にしたいということでしょう。この時代も江戸時代の中では平和ボケした時代なのかもしれない。


 今回、ようやく歴史の片隅に登場する事件があらわれたが、そんな中で典膳は剣を捨てられずに悶々としているかのようだ。安兵衛が華々しく耳目に上る中、典膳のひそやかな焦り、死に場所を得られない無念さがこの後大きく人生を変えていく。浪人暮らしに堕しないで生きられるか、人生の正念場といったところですかね。