試合時間が4時間26分、これはプロテニスの3セットマッチとしては最長時間だという。ロンドン五輪テニス男子シングルス準決勝、ロジャー・フェデラーVSファン・マルティン=デルポトロ。決着がつくのが信じられない試合だった。
マラソンマッチに勝ったのはフェデラーだった。安堵の表情を見せ、左胸のスイス国家のクロスに口づけをした。もはや勝ち方を知っているとしか言いようがない、神がかった精神力で切り抜けた。デルポトロは涙を流す。絶対に決着がつくのがスポーツ。しかし、テニスのそれはあまりに残酷に過ぎる。
この試合はフェデラーが負けてもおかしくない試合だった。アンフォーストエラーはフェデラーが多く、覚えているだけでもスマッシュを2本ミスし、決められそうなフォアボレーを何本もオーバーした。加えてフレームショットが多い。一方のデルポトロは肝心なところでファーストサーブをことごとく入れてきた。芝生の試合でサーブが好調だとブレークが困難になる。第1セットはデルポトロが1ブレークを生かして取り、第2セットはタイブレークでフェデラーがものにした。そして、地獄の第3セット。タイブレークがない最終セットはお互いにサービスキープが続く。最初からサーブの調子がいいデルポトロ、徐々に調子を上げてきたフェデラー、お互いの白熱したプレーで均衡が続く。第19ゲームでフェデラーがブレークするが、なんとサービングフォーザマッチの第20ゲームをラブゲームで落としてしまう。フェデラーが攻め急いだ印象だ。そのあとはまたキープが続き、35ゲームで再びブレークして勝ち切った。
試合後ネットを挟んで二人は抱き合ってお互いをねぎらった。デルポトロは芝生のコートで最高の試合をしたのにフェデラーに勝てなかった。顔を上げることができないほど落胆の表情を見せた。フェデラーが絶対王者といわれる所以は非常なまでに勝ちに徹し冷静さを保てる精神力を持ち合わせていることだ。2007年ごろからナダルと白熱したライバル対決を繰り広げるようになってから、フェデラーはギリギリのところを勝ち抜く精神力の強さが際立ってきた。それが30歳を超えても勝てる要因である。
この記事を書いているのは8月5日21時30分ごろ。あともう少しで決勝戦が始まる。相手は英国のアンディ・マレー。ウィンブルドンの再戦である。体力と地元の利があるマレーが有利かもしれないが、フェデラーのよりどころは精神力。そして今回は5セットマッチ。また眠れない試合になるだろう。どちらが勝っても残酷な結末が待っているだろう。テニスというスポーツが持つ、敗者に容赦ない悲嘆を迫る瞬間が待っている。