株式会社は生まれたときから、すでに滅びる運命にある。
社長は就任したときから、すでにむなしく退陣する宿命を背負っている。
福島第一原発の事故が起きて以来、会社と社長、そして政治家とは何なのか、そんなことを漠然と考えて過ごしてきた。今も懸命に生きる被災者の方々、身をとして懸命に働くボランティアや自衛隊員、そして福島第一原発で事故を最小限に食い止めようと必死に身を粉にする現場の作業員、名もなき人々が今もわが身を顧みずに目の前の作業に没頭している。
それに比べて、政府関係者を含む国会議員と東京電力の会長や社長などの役員は、なんと国民と遊離した精神で生きていることか。
原子力発電というエネルギーが出現して以来、政府と電力経営者が原発や放射線に関して国民に流した情報は、ほとんど偽善といわれてもしかたない。
「放射線量はただちに人体に影響を与えるものではない」
「メルトダウンはおきていない」
「原子力発電は安全だ」
安全、安心をいい続けてもあとから情報が公開されるたびにすべて否定される。一号機ばかりでなく二号機や三号機もメルトダウンをおこしていたと二ヶ月以上も経ってから発表するとは国民を馬鹿にしている。お偉いさんという人種は、責任逃れと自己保身、権力の維持と利益の確保ばかりを優先するのがお好きらしい。国策によって原発を維持していれば懐は潤うし、天下りだって思うがままで老後の生活も安泰というもの。実においしい話だ。
原発は国民の喉下に刃を突きつけているようなものだ。その刃は切れ味鋭く、たちが悪いことに姿は見えず、無差別に人の皮膚に確実に突き刺してくる。お偉いさんは刃を国民に向けたまま、自分たちだけはうまみをほしいがままにしている。こんなことが許されていいのか!?
ようやく重い腰をあげて書くことにした土曜ドラマ『ハゲタカ』は、第4話からひとつの株式会社が登場します。
その名も、大空電気株式会社。
カメラ製造の町工場から創業し、戦後の東京五輪の景気にのって冷蔵庫などの白物家電を製造・販売して爆発的に売り上げを伸ばし社業を発展させてきた。創業者にして2004年当時は会長である大木昇三郎(菅原文太)は家族主義をかかげ、「企業は人なり」の精神のもとリストラをしない経営方針がモットーだ。終身雇用の権化といえる。
しかし創業部門のカメラ・レンズ部門は、一眼レフカメラ全盛の時代が過ぎ去りデジカメが世間に浸透する流れに乗り遅れて新商品の開発がおぼつかなくなる。ついには800億円の赤字を出すほどの経営不振に陥った。そこへ大空電気の技術を軍需産業に利用しようとアメリカのレンダント社が目をつけ、ホライズン社にカメラ・レンズ部門のみの買収を依頼する。そこで、大空電気という死肉をあさる“ハゲタカ”として送り込んだのがこのドラマの主人公・鷲津政彦(大森南朋)であり、大空電気を内から改革して“ハゲタカ”の脅威から守り抜こうと呼ばれたのが、三葉銀行を退社しターンアラウンドマネージャー(企業再生請負人)として独り立ちした芝野健夫(柴田恭兵)というのが今回の流れです。鷲津と芝野の宿命の対決がふたたび幕を開ける。リストラ至上主義の合理化経営が勝つか、それとも終身雇用を基本にしながらも21世紀に生き残る新家族主義が勝つか。
第4話のみに登場する大木昇三郎は劇中ではカリスマといわれ社業の発展と経営にかなりの手腕を発揮してきた設定のようです。才覚も先見性もあったはず。しかし、齢を重ね会長となり、事なかれ主義の重役が増えて経営が傾いてくると、いささか緩みがあらわれ事なかれ主義的気分に浸っている。鷲津が自宅を訪ねて大空電気の経営刷新を説いたことに答え、カリスマといわれたひととはおもえない謎のことばを返す。
「やり直したいのなら、何もやらないことだよ」
私はこの言葉をどう解釈していいのかわかりません。赤字を抑えるために手を打たないといっているような事なかれ主義をカリスマがいうのです。歳をとったら安全策に走るということでしょうか。それとも景気が上がるのを待てば自然に赤字も解消されるということでしょうか。
事なかれ主義をひけらかす大木の姿と、東京電力の取締役クラスをどうしてもかさねてしまう。現場で働いたころはやる気も希望もありながら、重役や会長になってフカフカの椅子に座るころにはすべて事なかれ主義でなにごとも押し通す。原発事故で放射能を垂れ流す事態になっても安全をいい続け、800億円の赤字を作っても何ら打開策を打たずに芝野の改革案「フェニックス計画」を握りつぶす。偉い人間ばかり増えたらそろそろ会社は斜陽を迎える。日本航空も似たようなものだ。
鷲津はそうした一部の人間がもたらした事なかれ主義で会社の経営が傾くことが許せない。若いころに世話になった製造業の末端の子会社、三島製作所の社長は“たった200万円”の資金が用意できず(銀行員時代の担当であり、結果的に資金を貸し渋りした)に自殺した。それなのに名のある大企業のお偉いさんは自分の会社の危機にも胡坐をかいているのが理解できない。
「東京電力は、もう死に体じゃないですか。あなた(東電経営陣)が死んでも、東電は生き続けなきゃいけないんです」
いま鷲津なら東電にこんな言葉をかけるかもしれない。腐ったこの国の腐った株式会社は経営を改めないのはやはりおかしい。
倒産寸前、滅び行く株式会社に挑戦状を叩きつけるかのごとく、“ハゲタカ”は株主総会の場で演説をふるうのです。それは彼自身の再生と、過去に世話になった三島製作所の生きる術を心に秘めた孤独な挑戦になるのです。
(まだ続く)