いよいよ佳境にはいったドラマ『坂の上の雲』……、と書きたいところですが、旅順港閉塞作戦で終わってまた来年とは待たされすぎです。大河ドラマを経て1年後は長すぎ、なんとかなりませんかNHK様。
今回、日本帝国海軍が行う作戦は先に書いたように旅順港閉塞作戦。ロシア艦隊を黄海におびき寄せようとして失敗したため、逆に穴の中に閉じ込めようとするもの。しかし、港の近くにはコンクリートで固めた大要塞がそびえ、湾を囲むように火砲も待ち構えている。入り口に船を沈めて口封じ作戦はどう考えても無理な話。仮に旅順艦隊を封鎖できても、ロシア本国にはバルチック艦隊が出撃を待っている状況では、日本が絶対に勝ち目が無い。日本近海で挟み撃ちに合うのを待っている状況とは、日本の海軍は生きた心地がしない、よくこんな戦争を仕掛けたものだ。
唯一、日本にとって救いなのが、ロシア皇帝以下、一部の軍人にやや弛緩した空気が流れていること。しかし相手が転ぶことを待っている日本の状況では引き分け狙いがいいところ。今の日本政府と国民なら、帝国ロシアに屈服してもおかしくない。
秋山真之(本木雅弘)が
「全員生還を期するのが作戦の大事」
とことあるごとにいい続ける。この言葉が、二次大戦での神風特攻隊に象徴されるように、玉砕精神で敵に突っ込む後世の日本帝国陸軍への皮肉に聞こえる。日本は昔から精神主義で、「心頭滅却すれば火もまた涼し」のごとく(この言葉を残した快川和尚は精神主義者ではないでしょうが)生きていたのでしょうか。この作品をみていけば、やはり明治の人間は合理主義なのかと思わせる。
秋山とは対照的に広瀬武夫(藤本隆宏)はアリアズナ宛の手紙を真之に託すなど、どこか死を覚悟した身辺整理に似たことをはじめる。広瀬は後の日本軍人とおなじ精神主義者とはおもえないが、真之と対照的に、
「全員生還する作戦などありゃあせん」
といって軽く抵抗する。あたりまえのことをいっているだけで間違っていないが、こんな呟きも今回のドラマの最後におこる悲劇を予感させる。さりげないけれど上手につくっている。
2度目の閉塞作戦のとき、広瀬は沈める船の甲板で部下を探す行動をおこす。上官として合格点の男が海上で一発の銃弾で海の藻屑ときえる皮肉、運命とは残酷なものです。それはロシアにいるアリアズナにとっても……。
この第2部は藤本隆宏さんが主役といってもいい。彼はもと五輪代表の水泳選手だったのですね。どおりで立ち姿が堂々としていて、声もふとくていらっしゃる。ほかのドラマでぜひお会いしたいものです。
そして来年こそ好古(阿部 寛)に大陸でがんばってもらいましょう。
戦争が始まり人間が単なる銃弾一発とおなじ駒のひとつでしかなくなる、いよいよ血で血を洗う苛烈な状況が待ち構えている、ドラマとはいえやり切れません。