駅で曜君と別れた後の電車を待つ間、ドキドキが止まらずに


ずっと胸が苦しかった。こんな気持ちになるのは初めてだった。


電車に乗り外を眺めていると、母のお墓がある霊園が見えた。


そうだ、母に報告しよう。そう思い立った。


私は母と恋愛話もよくしていた。


彼氏が出来たら必ず報告したし、何かと相談にも乗ってもらった。


心配性な私とは違って、楽天的な母のアドバイスを聞くといつも


助けられた。


最寄駅で降りると、お花を買ってお墓までの坂を上る。


お墓に着くと、今にも降りそうな曇り空から太陽が出てきた。


手を合わせ母に報告をする。


お母さん、好きな人が出来ました。見守っていてね。


そう心の中で言った。


ふと私が初めて好きになった人の事を話した時の事を思い出した。


母は嬉しそうに


「人を好きになるのはすっごく良い事だよ!臆病者のみらいが


人を好きになる事が出来てお母さん嬉しい!」


と抱きしめてくれた。その時はオーバーだなぁとかうっとうしい位に


思っていたけど、母に触れる事も、声を聴く事も出来ない今その時の


事を思い出すと、猛烈に淋しくなった。


生きていればきっと今回も喜んでくれただろう。よかったねって言って


くれただろう。きっと天国で聞いてくれてるだろう。


そう思っても、声が聴きたかった。


お母さん、聞いてる?なんか言ってよ、聞こえるように大きい声で、


耳澄ましてるから


心の中でそう言って目をつぶってみたけど、風の音しかしなかった。


わかってる。お母さんはもういない。わかっている。


しばらく流していなかった涙があふれて止まらなかった。