自国通貨発行国に適用される財政政策等の一般原則(ランドール・レイ「MMT入門」翻訳ブログより) | 真の国益を実現するブログ

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今回は、過日取り上げたランドール・レイの『MMT入門』翻訳ブログ18節から、自国通貨を発行するすべての国に適用できない、あるいは適用される一般原則の概要をご紹介します。

(以下、原文のまま抜粋)
<自国通貨発行国には適用できない命題>

 一般的に信じられているが、実際には誤っているものから始めよう。次の命題は、自国通貨を発行している政府には適用できない。

1、政府は(家計や企業と同じように)予算制約の下にあり、徴税や借入によって資金を調達する必要がある。

2、財政赤字は悪であり、特殊な場合を除いて経済に負担をかける。

3、政府赤字は金利を上昇させ、民間部門を締め出し、必然的にインフレーションを起こす。

4、政府赤字は将来世代に負債を残す。この負担を軽くするためには、今の政府は支出を削減し、増税しなければならない。

5、政府赤字は、投資に使われるはずであった貯蓄を奪ってしまう。

6、投資や政府赤字のための資金調達には、貯蓄を必要とする。

7、今現在の政府赤字が高ければ高いほど、将来の税率は高くなる。赤字から発生する負債の元利を返済しなければならないためである。


<自国通貨発行国に適用される原則>

 上記の誤った命題の代わりに、通貨発行権をもつあらゆる政府に適用される命題を提示しよう。たとえ固定相場制を採用していても、これらは適用される。

・政府は通貨単位を名づけ、その単位で測られる通貨を発行する。

・政府は自らの発行する通貨での納税義務を課すことによって、その通貨への需要を確保する。

・政府は準備預金口座に貸方記入することで支出し、準備預金口座に借方記入することで徴税する。

・同じようなやり方で、銀行は政府と非政府部門の仲介者として機能する。つまり、政府支出が行われたときは預金者の口座に貸方記入し、納税が行われたときは預金者の口座に借方記入する。

・政府赤字は銀行準備預金の純残高であり、非政府部門の銀行預金の純残高でもある。

・中央銀行はオーバーナイト金利を一定の目標水準に保つために、準備預金を増やしたり
 吸収したりする。

・オーバーナイト金利は、中央銀行によって「外生的」に与えられる。準備預金の量も民間銀行の必要と欲求に応じて「外生的」に決まる。そして、「預金乗数」は預金に対する準備金の、単に事後的に決まる比率である。できる限り自然に考えると、準備金に「レバレッジ」をかけた分だけ預金は外生的に膨らんでいくのであり、事前にレバレッジの比率が決められているわけではない。

・財務省は中央銀行と協力し、過剰準備を吸収するために新たな債券を発行し、準備不足を解消するために債券を回収する。

・そのため、債券の売却は、主権政府によって行われる借入操作ではなく、中央銀行が目標金利を達成するために行う「準備維持」の道具である。

・政府はいつも支出に制限を課しているが、財務省は自らの通貨で買えるものであれば常に何でも「買う能力を有している(afford)」。

・政府が制限を課している場合(中央銀行自身が運営上の制約を課している場合も含む)を別として中央政府からの借り入れは無制限に行える。

現段階では、これらの命題のなかに謎めいて見えるものもあるだろう。今後はこれに、明快な説明を加えていくつもりである。政府予算を家計予算にたとえるような「紋切型の知恵」と対比させるために、後に詳説する一般原則を並べてみたまでだ。
 注意しておきたいが、これら一般原則は無制限の政府支出を行うべきだということを含意しない。政府が自国通貨で買えるもの全てを「買う能力を有している(afford)」からといって、全てを買うべきだとは言えない。そして、海外通貨によってしか買えないものは、自国通貨によって政府が直接買うことはできないのは明らかだ。
 これら基本原則は、大きすぎる政府支出がインフレーションにつながる可能性をも否定していない。さらに言うなら、為替レートへの影響も考えられる。即ち、政府支出が過大でるとき、あるいは目標金利が低すぎるときは、通貨切り下げの圧力が発生するかもしれない。つまり、政府の金利設定政策は、財政政策と同じように、為替レートやインフレ率、あるいはその両方に影響を及ぼしうるということだ。そういう意味で金利設定政策や財政政策は、為替レートやインフレ率をコントロールしたいという願望によって「制限」されるのだ。


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