行政事務の民間業務委託で個人情報は守られるのか? | 真の国益を実現するブログ

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過日発生した日本年金機構の個人情報漏洩事件やマイナンバー制度の施行が近づいてきたこともあり、個人情報の保守管理に関して、色々と騒がしいのですが、行政事務の民間業務委託の問題点を記す中で、その点にも触れてみます。

(そもそも、私には大した財産もないし、漏れて困るような情報もない、また、個人情報なぞ既に漏れまくっているではないか、今さら騒いでも栓無い、という考えもあるかと思います。私も本音はそちらに近いのですが、一旦置いておきます。)

三つほど、民間業務委託の問題点を挙げてみました。

1 民間事業者への委託となるので、当然ながら、特定の民間事業者の利益が増します(若干は、採算割れの受注もあるかもしれませんが)。公共団体では不可能、あるいはノウハウに乏しい業務ならいざしらず、それまで公共団体で行っていたのは、公共性や専門性、情報秘匿の確実性という理由があったからであり、それらの特殊性を担保出来る民間事業者は限られること、どうしても人材派遣業に偏ってしまうことから、業者選定段階において公平・公正さを保つことは非常に困難であると考えます。逆に、広く参入可能となれば、公共性や専門性、情報秘匿の確実性が犠牲にされる恐れが増します。

2 マクロ経済的な視点ではどうでしょうか。
現状では、定数削減ありきの公共団体において、増大する行政需要への対応あるいは行政サービス向上のために、民間委託が行われるケースが多くなっています。
したがって、従来であれば公務員増なり職員のスキルアップで対応すべき業務を民間委託としているわけであり、多くのケースにおいては、職員増による人件費増加分よりも安価で委託業務が可能と算定した結果ということになります(経費削減に結びつかないケースも多々あるという意見もありますが)。

 ミクロ的な視点では、経費削減及び効率化が図られたので良しとすべきなのでしょうが、有効需要不足にあるマクロ経済下においては、当然ながら有効需要の減少となります。経費削減分を他の公共支出に回せば、有効需要は変わらないのですが、それでも、受託した民間事業者は、賃金水準が低いパート、アルバイト、契約社員等の非正規社員を当該業務に従事させることが多いでしょうから、将来の安定的な収入が保証される正社員の増加にはつながらず、結果的には、消費及び民間住宅投資を抑制する方向に作用し、マクロ経済的にはマイナスです。マクロ経済的な見地からは、増大する行政需要への対応策として、公務員(もちろん正規職員として)増加で対応するべきなのです。無論、景気が過熱し、インフレ懸念があるような経済下では、公務員増加は慎重に考えるべきであり、事情は変わってきます。

3 最後に最も大きな問題です。深刻と言っても良いかと思います。
公共団体の業務は戸籍、住民票、税、年金、国民健康保険等個人情報を扱うものが大半です。しかも、所得情報やドメスティックバイオレンスの状況等非常にセンシティブな情報です。
これらの業務についても、データ入力、窓口業務、電話案内業務、調査業務等については、基本的には民間委託が禁止されていません。実際に、各種データの入力、住民票発行等窓口業務、固定資産税の評価のための調査業務、税未納者への電話案内等公権力の行使にかからない業務については、民間業務委託が進んでいます。

 大阪市では、区役所における窓口やバックヤードにおける住民情報業務等をパソナ等人材派遣業者に委託しています。
http://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/0000239366.html

ここで問題となってくるのが、個人情報の守秘義務に関してです。無論、公共団体との契約に守秘義務に関する特記事項を盛り込んだり、公共団体からの情報セキュリティに関する監査を行うこと等で、守秘義務を担保しています。
しかしながら、一般的に公務員が業務を行う場合に非違行為が比較的少ないのは、身分保障による長期スパンでの利益が非違行為による利益を上回るからであり、退職金等ある程度将来の収入が保証された大企業正社員ならともかくも、身分保障のない民間企業において、守秘義務を契約事項に盛り込んだところで、本当に個人情報の漏えいが防げるのかが非常に疑問なのです。

一例として、積極的に民間業務委託を進めている東京都足立区においては、情報漏洩に対して、業務を受託する業者の社員や非常勤職員にも罰則の適用範囲を個人情報保護条例で定めたようです。
http://www.city.adachi.tokyo.jp/kuse/documents/kojinitibukaiseihp.pdf
しかし、そもそも身分も退職金も保障されないような中小企業社員や非常勤職員が、外部への情報提供で得られる利益と比較衡量した際に、このような罰則で(1年以下の懲役、または3万円以下の罰金)抑止力となるのでしょうか、甚だ疑問です。

次のような動きもありますね。
「戸籍事務の民間委託は直ちに中止を!」 弁護団が足立区に意見書を提出

マイナンバー制度も色々問題があるのでしょうけど、それ以前にもっと深刻な問題として、行政事務の民間業務委託について、特に個人情報保護の観点から問題視するべきです。


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