「……比古!……猿比古!」
彼はただ、見せたいものがあるからついて来いと言ってから一度も口を聞いてくれない
今までの付き合いからして、あんな真剣な顔をして嘘をつくような人間じゃないし、猿比古にも考えがあるのだろうと思ったが、無言のまま長い道のりを歩くのはつまらない上にかなりキツい。
「もう少しだから頑張れよ」
やっと口を開いてくれたが、目的地についてのヒントは貰えなかった
よく見ると猿比古は俺よりも息が乱れていて、額から汗かいていた
もしかしたら、話すのも意外と辛いのかもしれないと悟った八田は無言で猿比古の後ろについていった
下を向いて歩いていたせいで急に立ち止まった背中に思いっきり頭を衝突させてしまった
「んがっ?!わりぃ、ぶつかっ……」
長い長い坂道を上った先には街が見渡せる小さめな広場で、今の時間帯はちょうど夕日が沈む瞬間だった
赤にオレンジが少し混ざったような太陽が街全体にグラデーションを作っている
小さい頃は公園で夕日にが沈むのを見ていたことがあったが、こうやって高いところに登って真面目に太陽が沈む瞬間を眺めるのはいつ以来だろう
それほど、この丘から眺める夕日と街によって生み出されるグラデーションは綺麗で、どこか懐かしい心地もした
「ここさ、結構前から行き詰まった時に来るんだよ。誰かに見せておきたいと思って」
言葉にして何かを伝えたかったが、自分の頭の中では見つからなかった。
猿比古が俺を信頼してここに連れてきてくれた事とか、こんな綺麗な景色を見たのは初めてかもしれないとか、とにかく嬉しさでいっぱいだったのは確かだった
「なぁ猿比古、ありがとな……」
今の自分が言えることはこれしかなかった きっともっと何かたくさん伝えたかったけどこれが精一杯だった
それを彼は悟ったのか、無表情で目線をそらしたかと思うと口元を緩めた
その時、伏見猿比古と言う人間の一部を知れたような気がしてこの時間が幸せで長く続けばいいと思った
ペンタブ直ったー└(:3」┌)┘
改行相変わらず解せぬ…!