相変わらず、蒸し暑い大阪だぜ。
今にも降り出しそうな曇り空じゃ、気分もイマイチだぜ。
仕事場からの帰りに、心斎橋をトボトボ歩いてたぜ。
久し振りの、心斎橋は、また様子が、変わってたぜ。
あった筈の、店が無くなって、また新しい店が、できてるんだもん。
何か、哀しくなって、どうしても、うつむいたトボトボ歩きに、なっちゃうぜ。
馴染みの、画材店に行って、画材を買って
帰りに、立ち飲みに、寄って、生ビールを、クイクイじゃ。
「ダーさん！」斜め前のカウンターで吞んでる
爺さんに、声を掛けられたのよ。
「ダーさん」なんて、玉撞き仲間しか知らない通り名だぜ。
確かに、どこかで見掛けた顔だぜ。
爺さん、飲みかけのグラスを持って、隣に、やってきたのよ。
３５年前の、ナンバ周辺の玉屋の名前を、次から次へと
話し出すのよ。
確かに、その頃は、キュー・ケースを持って
そんな玉屋を、ウロウロしてたぜ。
多分、当時、どこかで、会って、勝負撞きを、したんだろう。
懐かしい、当時のハスラー達の名前が、爺さんの口から
出てくるのよね。
爺さん、かなり酔ってるのか、今の生活について
ウダウダ、愚痴るのよ。
「こんな生き方しか、できなかった。」なんて
言うんだから、参ったぜ。
俺は得意の右から左への聞き流しに
終始してたぜ。
「今日は、会えて嬉しかった。」と、ユラユラ揺れながら
勘定を済ませて、出て行ったのよ。
結局、爺さんは、誰だったか、分からず終いなんだから、笑うぜ。
もう、二度と会うことも、無いと、思うけれど
元気で、居てくれと、後ろ姿を、見送ったぜ。
キャンキャン
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