Double Threshold Training ”閾値の2部練” | 酒井根走遊会のページ

みなさんこんにちは。

 

酒井根走遊会です。

2023年があっという間に過ぎ、2024年になってしまいました。

前回の更新が2022年12月だったので、2023年は一度も更新できず。

 

今年は様々な変化が訪れる年になりそうですが、昨年計画したことを一つひとつ確実に実施していく年にする所存です。

また昨年更新できなかったブログですが、今年はできるだけ多く更新できるように頑張りますので、是非お時間ありましたら各記事ご一読ください。

 

2024年最初のブログは翻訳記事になります。

最近日本では流行りのトレーニング、”ダブル閾値”です。

私が読んだ文献から受けた私の感想は、”閾値の2部練”といったところが長く日本で日本人として長距離種目に取り組んできた中でしっくり来ているような気がします。

今回紹介するトレーニングは、最近のヤコブ・インゲブリクトセン選手活躍と相まって最新の中長距離の基礎トレーニングとして流行っているようですが、実際にはノルウェーのエンデュランスアスリートには1990年代から採用されているトレーニング理論であり、2000年代にかけて洗練されてきたトレーニングとなっています。

前置きしておきたいことはやはり各トレーニングには合う合わない、効果が得られる得られないという個人差がありますので、実際に試してみて自分の体で知ることが重要だと思います。

またトレーニングの注意点、特に2部練習による疲労・乳酸値測定・トレーニング範囲などの解説も書いてありますので、ただトレーニング内容だけをまねるのではなく、記事を最後まで読み、まずは自分の現在のトレーニングを分析するところから始めることをお勧めします。

 

まず今回の記事は翻訳記事ですので、翻訳元リンクを以下に明記しておきます。

※Double Threshold Training: The Complete Guide For Runners 【Marathon handbook】より

https://l.facebook.com/l.php?u=https%3A%2F%2Fmarathonhandbook.com%2Fdouble-threshold-training%2F%3Ffbclid%3DIwAR1FAtbR9nevRoIeuTpdooFoyQgsBmmqweNDpg9C01mP03FHKHDFSRtpGwQ%23%3A~%3Atext%3DThe%2520general%2520premise%2520for%2520double%2520threshold%2520training%2520is%2Csession%25E2%2580%2599s%2520pace%2520will%2520be%2520at%2520their%2520threshold%252Fanaerobic%2520pace&h=AT36T4tC0tE_yUjw-X-vs2bou04urczzoUjRe7TSA5mZnOajsB6Teed5-zNM6qwTuijGAwp1h8Se4bJEERUvgqMenoo0zp3TovCdI8oeYxpwFuAMtQKkHrzS3_C9b9ULEieh70CxhYpd5s861cJZ3Q

 

 

ーーーーー以下本文ーーーーー

 

流行りのノルウェー選手のトレーニング理論である“閾値の2部練習”

 

この記事では、“なぜ”そして“どのように”私たちのトレーニングにこのシステムを組み込んだ方が良いのかを考えていきます。

 

昨年から私たち中長距離ランナーの間では、“閾値の2部練習“に関して非常に多く話されるようになりました。

 

このタイプのトレーニングの流行は世界中に広がりを見せていて、

それはそのトレーニングが、ヤコブ・インゲブリクトセンの走りに“確かな効果をもたらしているだろう“、ということをもとにしています。

また、インゲブリクトセン兄弟の非常に大きな成功のもと、多くのランナーが、”閾値の2部練習”に取り組むようになっているためです。

 

(雪国ノルウェーはエンデュランスが伝統的に強い *写真は北海道)

 

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“閾値の2部練習“はノルウェー選手の基礎トレーニングとして紹介されています。

1990年代以降、ノルウェー選手は乳酸値測定器を使ってトレーニングの質を調整してきました。

 

しかし、現在のトレーニングモデルは将来を嘱望されてアメリカの大学に渡ったマリウス・バッカンが、トレーニングモデルをいくらか改良して流行らせたものです。

 

バッカンはこのトレーニングを、ランナーとしての彼自身が信じる自分自身の限界値・最大能力を引き出すトレーニングとして、彼自身がどのようにこのトレーニングシステムを使ったかを項目・解説に幅広く書き示してきました。

 

“閾値の2部練習“の基本原則は、

・    あらかじめ行う日数を決めておくこと

・    1日の中で2回の練習を行うこと

・    朝1回 ‐ 夕方1回

・    各トレーニングペースは“LT(有酸素性作業閾値)”と“無酸素作業性閾値(AT)”

 

まずは私たちはこのトレーニングのもたらす“効果“を見る前に、どのように私たちのトレーニングに安全に取り入れていくかを考える必要があります。私たちは、現状の基本的な無酸素性作業閾値、乳酸値、それらを計測する機器をそろえる必要があります。

 

 

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トレーニングにおける閾値トレーニングとは何か?

現在の科学で、私たちの5kレースパフォーマンスを推測する一つの指標となるものが、乳酸性作業閾値です。この乳酸性作業閾値の運動強度は私たちのランニングペースで、血中乳酸が増え続ける手前のペースとして位置づけられます。

 

これは多くのケニア選手の考える重要なトレーニングの一つであるテンポランニングにみられます。

週1回、高地の土トラックで行うテンポワークアウトは、彼らの長距離競技における重要な一つの要素です。

しかし、毎週のトレーニングで、規則的に行われるテンポワークアウト・無酸素性作業閾値のワークアウトでは、ペースが速くなりすぎて“乳酸を持続する“前にペースが落ち始めるということが起こります。

 

テンポワークアウトのペースは、基本的に最近の5kのレースペースよりも1kあたり20秒/1マイルあたり30秒 遅いペースに設定します。

簡易な設定方法では、もし最近のレースが5k17’05”(3’25/km)であれば、テンポペースは3’45/kmとなります。

 

もし心拍計(ハートレートモニター)を使っている習慣があれば、さらに専門的な方法を用いることができます。

最大心拍数がわかれば、テンポワークアウトでは基本値として最大心拍数の80-85%をトレーニング心拍ゾーンに設定することができます。

 

ー血中乳酸値とLT・ATー

乳酸値は通常mmol/L(ミリモル/リッター)で計測され、

乳酸性作業閾値は2mmol/Lで起こります。*LTの始まり

 

ここからさらにランニングの強度を高め続けた場合、乳酸が体内で生産されるペースが、私たちの体は乳酸を除去(体内で効率よく利用)できるペースを超えてしまいます。この分岐点が“乳酸閾値“とされています。

このポイントはよく乳酸値が4mmol/Lあたりで起こります。*閾値の上限(AT)

 

 

多くの一般的なトレーニングでは、テンポワークアウトは基本的な7日サイクル・10日サイクルの中で少なくとも1回が行われます。

 

殆どのコーチは、テンポワークアウトは800-1500mの中距離選手から3k‐マラソンまでの長距離選手のトレーニングブロックの基礎期に必須のトレーニングであると考えています。

 

そのため、

”アスリートに結果をもたらす計画の中でテンポワークアウトの量というものは増加傾向にあるのでしょうか?”

この問いに対して運動生理学者は、VO2maxを向上させる最善策としてVo2maxに対する80-100%でのワークアウトを行うことに賛成しています。

 

 

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“閾値の2部練習“とはなにか?

バッカンは“閾値の2部練習の父“として紹介され、彼のもとには世界中のコーチから彼のトレーニングシステムに関しての詳細を求める質問が溢れかえっています。

幸運なことにワールドランニングコミュニティーのために、彼は忙しいスケジュールの合間を縫って、トレーニングシステムの詳細をブログに書き示し、講習会を開き、さらに彼自身も“コーチたちのトレーニングシステムの形成・洗練を助けたこと”で多くの経験や知見を通して学んでいきました。

 

1990年代から2000年代にバッカンはこのトレーニングシステムを開発しましたが、この

 ‐ 世界中に広まったノルウェー選手のトレーニングモデル ‐

の基礎にはいくつかの重要な原則があります。

 

ノルウェー選手モデル:基本原則

‐ 週2回  ”閾値の2部練習” を行う(だいたい火曜日と木曜日)

‐ ワークアウト  ”短いリカバリーのインターバル” を設定する(続けて走るテンポランの代わりとなる)

  1:閾値を超えない最速ペースで行える最大量の確保のため

  2:典型的な閾値2部練習は、朝2kx5本 R1分・午後1kx10本 R1分

‐ 2部練習の2回目は短い距離のインターバルで、閾値(4mmol/L)に近づけていく

‐ 各ワークアウトの休養時間は大きく気にする必要はなく、選手が十分に回復する時間。

 

一つの重要な要素は、乳酸値は基本的な閾値の上限は4mmol/Lであるが、さらに低い3mmol/L以下でトレーニングを行うことが望ましい。

もしトレーニングで乳酸性作業閾値の効率の良いポイントである2.3-3mmol/Lでトレーニングを継続できれば、故障のリスクを避け、最大限のトレーニング量を確保することができる。

 

“閾値の2部練習“の一日の例は以下のようになります。

火曜日 朝 6分×5本 R1分 (2.5mmol/L) ※テンポペースより遅いペースでおえる

火曜日 夕 1k×10本 R1分(3.5mmol/L)※テンポペースより速いペースでおえる

 

もしくは代替え方法として(トレーニングを距離で計算することが多い選手)は

火曜日 朝 2k×5本 R1分 (2.5mmol/L) ※テンポペースより遅いペースでおえる

火曜日 夕 400m×25本 R30秒(3.5mmol/L)※テンポペースより速いペースでおえる

のような方法も考えられる。

 

上記の例から読み取れるように、

朝練習では選手は長い距離のインターバルを行う必要があるが、ペースはテンポペースよりも遅いものであり、血中乳酸濃度も低めになる。

そして、午後練習では短い距離のインターバルで本数を増やす。ペースはテンポペースよりも速く、血中乳酸濃度も高めになる。

 

それでは実践してみましょう!もちろん基本に基づいて現状に合わせたトレーニングの調節(設定)をすることを忘れずに。

 

(時計と心拍計。心拍数の計測だけでは”閾値の2部練”の最も効率の良いポイントに迫ることは難しい)

 

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見てわかる通り、質の高いワークアウトを継続的に積み重ねていくことは非常にハードな日々になるでしょう。

まず第一に、選手は非常に大きな疲労感に苦しむことになるかもしれません。それはワークアウトのペースが閾値ペース(質が高い)であることだけでなく、2部練習からくるトレーニング量は、通常のトレーニング量と比較しても非常に大きなものになるためです。(1日の走行距離が非常大きくなる)

例えば、5kレースペースから考えるテンポペースが3’45/kの選手を例に挙げます。彼らはおよそ19㎞をインターバルセッションで走ることになり、ウォーミングアップとダウンを考えると少なくとも約25㎞かそれ以上を走ることになります。

 

そのため閾値の2部練習に挑戦する前には、選手もしくはコーチは現在のトレーニング量や最近の故障歴なども踏まえて、まずはこのトレーニングは(計画から)外す必要があると考えることも必要です。

 

重要なことは、上記で紹介したトレーニング概要の基礎と量はバッカンのようなエリートアスリートによって利用されてきたものです。

そのため、一般的なアプローチと慎重さを期すために、十分すぎるほどの時間を使って閾値の2部練習の量を徐々に向上させていくことが強く推奨されます。

 

さらに加えて、アスリートは12週間おきに試験となるレースやタイムトライアルを行い、閾値の2部練習がもたらしている効果と進歩を測っていくことが推奨されます。

 

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“閾値の2部練習“を行うために必要な道具

【ワークアウトの最中に乳酸測定をする測定器を使う】

バッカンは、

*1血中乳酸濃度が2.3mmol-3.0mmolの間で運動を継続したとき最も効率的なトレーニング効果をもたらすこと、彼の体を必要以上に痛めつけることなく無酸素性作業閾値を強化できること

を発見しました。

 

*1:おそらく、トレーニングの質・量・疲労のバランスが最も良い、さらに無酸素性作業閾値のレベルを少ない関節・筋疲労・精神的ストレスの中で長時間刺激できる。という意味

 

トレーニングセッションを成し遂げるために、乳酸測定器での乳酸値測定は必須のものになってくるでしょう。

 

市場に出回っているもので、

 

① Lactate Scout 4 lactate analyzer は最も良い測定器の一つです。

良い点:簡易・10秒結果表示・500件の記録

 

② Lactate plus meterはもう一つのオプションです。

携帯式であり、指をさして血液サンプルを採取して利用するものです。

 

 

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2部練習をするか、やめるか(1部練習にするか)?

 

有名なコーチであるフランク・ホーウィルは、

“2部練習にするか・やめるか(1部練習にするか)”

というテーマで一度記事を書いています。

 

彼は、多くの素晴らしい結果は【選手のトレーニング量が通常2部練習・もしくは3部練習によってもたらされている可能性がある】ということを調査しています。

しかしながら彼は、トレーニングの量と方法論は細心の注意を払った中で実施される必要があると主張します。そこにはトレーニング内における多くのリスクが存在しているためです。

 

主張の概要は、閾値の2部練習は、

‐ 十分すぎるほどの回復がアスリートに確保されていることに注力すること

‐ 慎重かつ段階的に選手のトレーニング計画の中で実施されること

となっています。

 

しかし現状では、多くのランナーは乳酸値測定器の入手しておらず計測できていないことから、多くのランナーが速すぎるインターバルトレーニングを行っている危険があると考えられます。

 

もしそのトレーニングが【疲労困憊の状態やオーバートレーニング】を結果的に招いている場合には、故障や病気を引き起こし、トレーニングを中断しなければならなかったり、体が壊れてしまったりします。*2これはトライアンドエラーであり、各アスリートは2部練習による追加の負荷からくる体の反応が各選手で異なるためです。

 

*2:コーチの感や経験・選手の主観に元ずくペース設定では、実施‐失敗を繰り返してしまう可能性が高い。より安全にトレーニングを継続し結果を出すためには、計測器の導入が推奨される。

 

(体調や状態は体とよく相談。”無理ならやらない”や”やってもマイナス”というのは重要な判断)

 

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閾値の2部練習がどのように競技力を向上させるのか?

しかしながら、今回紹介した閾値のトレーニング理論が可能性を引き出すことは明らかです。

‐ 乳酸性作業閾値と有酸素性作業能力は向上する

‐ 強化された持久力・筋持久力をレースで発揮できる

これらがレースのパフォーマンスで顕著に表れるでしょう。

 

 

__本文以上__

 

いかがだったでしょうか。

 

今回は最近流行のDouble Threshold training ”閾値の2部練”に関する記事を紹介しました。

私も実際に昨日行ってみたのですが、やはり5kのレースペースや心拍数だけではいいポイント2.3-3mmol/Lにうまくはまっているのかどうか見えてこないと感じました。

走っている時の疾走感、終わった後の充実感は十分に味わえますが…

 

またこの練習を行った理由としては、トレーニングの経験を増やすだけでなく、最近手元にあるシューズで走った時の感覚が一つ一つ随分違うので、心拍数・ペース・ストライド・ピッチ頻度などを計測して、どのような違いがあるのかをLTゾーンで試したかったためでもあります。

 

今回の練習で行ったシューズのレビューやトレーニングの感想はまた次回以降のブログ記事にまとめていこうと思います。