クロスカントリーを走る
みなさんこんにちは。
酒井根走遊会です。
今回は『クロスカントリーを走る』というテーマでお送りします。
記事では、“クロスカントリー“のレースにおける戦略や疾走感覚、クロカンをベースとしてトラックに繋げていく流れなどを紹介していきます。
目次
1 クロスカントリーの特性 “疲労”
2 クロスカントリーのレースペース “余力の配分と判断力”
3 クロスカントリーのレースが体に及ぼす影響 “各能力を刺激し、総合力で走る”
4 クロスカントリーで用いる走技術 “エネルギーシステムと技術”
5 クロカンからロード・トラックのレースへ “クロスカントリーシーズンのトレーニングを活用する“
6 クロスカントリーを得意とするには…
今回は5・6を紹介していきます。 ※1・2の記事へ ※3・4の記事へ
5 クロカンからロード・トラックのレースへ “クロスカントリーシーズンのトレーニングを活用する“
クロスカントリーのレースの準備として、
“ピュアスピードのベース” (プライオメトリクス・ヒルスプリントなどの神経系・筋出力)
“有酸素能力のベース”(ロングラン・テンポ走などの筋持久力・LT)
を様々なトレーニングから開発できていれば、クロスカントリーのレースを思い描いたように走れるだけでなく、トラックシーズンのトレーニングに“広大なベース”ができた状態で臨むことができます。
ベースができていれば、次の段階への取り組みがスムーズになるだけでなく、レースに対して十分であるポイント、重点的に強化すべきポイントが明確になります。
例えば、
100m×4で、最大スピードや最大下スピードを確認したときに思ったように出力することができれば、トラック期にはその分野は“維持“するトレーニングにとどめておきます。
1000m×4で、思ったペースと実際のペースに差がある(実際がやや遅い)ときには、トラック期前半は3000mや5000mのレースペースを反復することで、感覚と疾走ペースのすり合わせや、レースペースの走技術の安定化、VO2を強化するトレーニングを重点的に行ってレースに向けてレースペースの感覚を研ぎ澄ませていくこともよいと思います。
ここでは100mのストライド、1000mのインターバルに関してあげましたが、他にも
・ トラックでのテンポ
・ 1600‐2000mなどの10000mペースでのインターバル
・ 200mなどのショートスピード
・ 400‐800mの無酸素能力と動き
などトラック期に導入する様々なトレーニングの中で、
“思ったようにできること、感覚と実際の動き・タイムに差があること“
を分析して、
“重点的に強化していくのか、維持にとどめておくのか”
といったことを考えながら計画を進めていくと、クロスカントリーシーズンに作り上げた大きなベースの上に、トラックシーズンで発揮するべきスピードと動きのキレを積み上げていくことができます。
もちろんクロスカントリーシーズンのトレーニング、そして連戦で体と心は疲労しているので、シーズンの終わりには小さなブレイクを挟む。これによって、心も体もフレッシュな状態で新しいシーズン、トレーニングブロックを始めることができるでしょう。
6 クロスカントリーを得意とするには…
さて最後に“クロスカントリー“というレースを得意になるポイントを私なりに考察します。
以下の二つが、最も重要な要素だと考えています。
① 状況・状態を判断する
② 苦手と思わない
① 状況・状態を判断する
クロスカントリーのレースでは、
少しずつ疲労が蓄積されて、『きつい時は相手もきつい』という状況は必ずしも起こりえないということです。
状況によって、”突然脚にくる”・”呼吸が回復しなくなる”といったレースでは、どちらもきつい時もあれば、どちらか片方は楽になり、どちらか片方は急にきつくなる、ということは良く起こります。
そのため、自分がきついから相手もきついだろうと思っていたら相手は楽々だったということはよくあります。逆の場合もよくあります。コースの状況や、自分の消費した体力とその先の余力を考えながら、自分の限界を超えない範囲を変化するペースの中で見極めなければなりません。
急に脚が動かなくなる、突然スピードが鈍る、大きく失速するクロスカントリーのレースでは、
トラックやロードレースのように、“突っ込んでいって行けるところまで我慢“という作戦はあまり通用しません。突っ込んでいけるところまで行くと、あとは体力を使い果たして失速していくのみとなります。
コースを走りながら、ライバルと競り合いながらも、自分の走りをレースの流れに任せるのではなく、大きく消耗するところ、回復できるところ、ライバルと差が開くところ、自然につまるところ、丁寧に地面を捉えるところなど、、、をよく考えながら自分の力をゴールで“0”になるように使い切る様な判断力が必要になります。相手のきつさと自分のきつさを比較して粘る走りではなく、
『自分の余力と勝負所を見極める』
クレバーな走り方をレースを重ねるたびに研ぎ澄ませていくとクロスカントリーという一つのレースの中で、現在自分の持てる最大限の力を引き出すことができます。
② 苦手と思わない
クロスカントリーのレースにトラック・ロードのレースと同じような感覚で臨んだところ、ペース感覚が悪かったり、きついところで粘れなかったり、大きく失速したりすることがあります。そこから、“クロスカントリーは苦手”という意識が芽生えてしまいます。
特に日本ではクロカンのレースを走ることは年に1回あるかないか、といった経験になるので、1回の失敗は苦手意識に繋がりやすいです。
しかしよく考えてみれば、クロスカントリーはペースの変化・不整地・起伏など、トラックで一定ペースで走りながら少しずつ体力を消費していく種目とはかなり異なります。
800m走を10000m走の感覚で走れば全く通用しません。もしくは10000m走を800m走のイメージで走ろうとしてもうまくいかないでしょう。そのため、クロスカントリーを『10000m走の感覚で走ろう!』と思って望んでもあまりいい結果は期待できません。クロスカントリーに臨むにあたって、5000mや10000m走と同じような感覚で走りに行って結果が出なかったとしても、それを苦手意識と思う必要はありません。
持つべき意識は、クロスカントリーはクロスカントリー走という種目ととらえて出場し、回数を重ねながら様々な状況・状態での判断力を改善していくことです。うまくレースをまとめられるようになれば、
“クロスカントリーは得意種目である”
“クロスカントリーのレースが好き”
”クロスカントリーは楽しい”
と自信をもって言えるようになると思います。
高めてきた“走る“という能力を、状況に応じて使い分けながら30~40分(もしくはもっと短いか長い時間)の中でフィニッシュラインをまたぐときに”0“になるようなレースを目指すこと、自分の能力を最大限使い切れたというランナーとしての満足感を得られることが、クロスカントリーの醍醐味とも言えます。
もちろん相手に競り勝つ、引き離すレースができればランナーとして勝利の瞬間をかみしめられることでしょう。
トラックのレースで“ペース”という外的な支配に疲れた時。そこから解放されて“内在する感覚と体感“を頼りに全力で野山を走るクロスカントリーに中長距離ランナーとしての走る喜びを発見してみるのもいいかもしれません。
是非、チャンスがあれば“クロスカントリー”に挑戦してみてください。
最後になりますが、私はタイムを追いながら勝利も追う、勝ちに行く、タイムを追求する、トラックのレースももちろん好きですので、付け加えておきます。
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