ランニングタイプと練習計画 回復  | 酒井根走遊会のページ
ランニングタイプと走行距離
ランニングタイプと練習計画

ここで練習の条件
・1週間に6日~7日練習する
・スピードの維持とは200mのベストタイムから∔2秒以内、1000mのベストタイムから10秒以内
・基本的なeasy-runのペースは3分20秒~4分40秒
・スピード練習の合計距離はアップ・ダウン・リカバリーJOGを含む

ランニングタイプ
A 1日2回 60’(15㎞)以上の練習をしてもスピードを維持・向上
B 1日2回 朝30’~40’(8㎞~⒑㎞) 午後60’(15㎞)以上の練習をしてもスピードを維持・向上
C 1日2回 40’(⒑㎞)以内の練習でスピードを維持・向上
D 1日1回 もしくは1日2回 合計60’(15㎞)以内の練習でスピードを維持・向上
E 1日1回 40’(⒑㎞)以内の練習でスピードを維持・向上

A のランニングタイプ群では週間走行距離は200㎞を超え、月間走行距離も900㎞前後になります。このタイプ群に推奨される練習は距離走です。30㎞~40㎞の距離走を週に2回、もしくは5000mや3000m、1500mといった実践に即した練習を週に2回といったように、ショートスピードよりもロングスピードとスタミナを強化する練習を推奨します。
ここで示される練習量に対しての体の耐性がある選手が、日本の大学・実業団で活躍しているように思われます。
日本従来の練習計画はこのランニングタイプ群に適したもので、B 以下のランニングタイプ群に属する選手に対してはオーバートレーニングになります。この練習内容により、疲労感や故障が長期的に続く選手(一時的に回復したとしても再度同じ状況に陥る選手)は ランニングタイプが適していないと考え、B 以下のランニングタイプの練習量に落とす必要があります。

B のランニングタイプ群では週間走行距離は120㎞~160㎞、月間走行距離は450㎞~600㎞といった範囲になります。このタイプ群に推奨される練習は、スピード練習は200m~1600mのインターバル、速いペース走5㎞~8㎞以内といった内容になります。
1回の練習距離が8から15㎞になるので、あまり長い距離を設定すると、動きの悪化や故障・疲労につながります。ある程度走力があっても(5000m14分・10000m29分以内)、この範囲が適している選手が多くいることは事実で、そういった選手は、時間があれば練習量に関して物足りなく感じることが多くあり、ついオーバートレーニングになりがちの選手が多くいると思われます。
そこでこのランニングタイプ群に当てはまる選手は、軽い練習後(または、レベルを落とした集団で練習したのち)の1000mや1500m、600mなどで自身のスピードをチェックする時間を持つことを推奨します。この全力疾走が体のキレ、動きの良し悪し、本来の乗れている動きを持っているかどうか、を確認する重要な時間になります。

C のランニングタイプ群はでは週間走行距離は120㎞~140㎞、月間走行距離は400㎞~500㎞といった範囲になります。このタイプ群はほとんどBのタイプ群と推奨される練習は同じです。またBのタイプ群同様に5000m14’、10000m29’以内の選手が多くいることも事実です。実際にオセアニアのトップレベルの選手はこのあたりの練習量とスピードを推奨している選手が多くいます。私自身もこのランニングタイプ群に入ります。このランニングタイプでは、距離走やペース走を週に何度も行うことは控えたほうがよいと考えられます。
というのも、数回の距離走やペース走で得られる効果と失われるスピード能力を比較したときに、失われる能力のほうが大きくなる傾向にあるためです。これは筋に対する高強度トレーニングからの回復も含まれ、高強度の距離走やペース走の後、スピード能力が著しく低下もしくは回復しない選手にとっては、能力向上の利益が失われることがしばしばおこります。
スピードが発揮できなくなる、すなわち走効率の悪化が長距離におけるパフォーマンスの低下を招きます。しかし、優れたランニングフォームと走効率があれば10000m・ハーフマラソン・マラソンもこの練習量の範囲で優れたパフォーマンスを発揮できる選手も多くいます。ここで重要なことは、前述したように、距離を延ばすにあたって、距離走やペース走を増やして週間走行距離を増やしマイレージを超えてしまうと、優れたパフォーマンスは失われてしまいます。もし距離を増やすのであれば、休養日を増やす、1日1回練習にする、など軽いランニングの日を休養にあてることでオーバートレーニングを予防することができます。

D のランニングタイプ群では週間走行距離は80㎞~120㎞、月間走行距離は250㎞~400㎞といった範囲になります。このランニングタイプでは、スピード練習はB・Cと同じ、距離走・ペース走も行いますが、それ以外の練習では、20~30分程度の軽いランニング5から8㎞以下の練習に抑えることが必要です。
日本で市民ランナーといわれるほとんどのランナーがこの範囲で練習をしているのではないでしょうか。この範囲では、EASYランで得る効果をそのままレースに繋げるような工夫があると、効率よく練習計画を進めることができると思います。
例えば週に1から2回(土日曜日)に長めに走ったりインターバルを入れたりするとします。それ以外の日は、『20分をどのように気持ちよく速く走るか』といったことをテーマに月曜日から金曜日の5回の練習で意識していると、練習量、走行距離にかかわらず、記録を向上させることができると思います。
疲れない程度に練習できるので、走りに対するモチベーションも維持・向上しやすいのではないかと思います。

E のランニングタイプ群では週間走行距離は60㎞以下になります。月間走行距離も200㎞以下といった範囲です。このランニングタイプでは体の才能によりますが、10000m以上のレースは記録向上が難しくなると思います。というのも練習の中でインターバルやレペティションといった練習計画ができなくなるためです。しかし、単発のトップスピードを高める練習を行うことにより、800mや1500m、3000mに関しては効率よく練習できる距離であるとも言えます。常にトップスピードの動きを意識し、そこからの動きが向上した、悪化したという感覚から、EASYランの内容を簡潔に決定することができるため、最も効率よくダイレクトに練習できるマイレージであるとも考えられます。
毎日走りたいランナーにとっては、この範囲で距離を抑えることは厳しいですが、トップスピードを感じることが好きなランナーにとっては、最も適した範囲です。スピードを取り戻したい方、発見したい方、オーバートレーニングからの回復、長期休養後の復帰といったランニングの感性を高める練習としては最も適した範囲ですので、トップランナーであっても、市民ランナーであっても、取り組むべき範囲であるといえます。

ランニングキャリアを伸ばしていく中で、最終的に『この種目で結果を残したい!!』
と多くのランナーが考えることと思います。『その種目』で結果を出すために、参考書を開くと、『この種目でこのタイムを記録するためには、この距離でこのスピードが必要です。』という数値目標が示されています。また従来のマラソントレーニングでは2時間10分を切るには月間1000mが一般的といわれてきました。しかし私たちの体のタイプと筋繊維の割合、ランニングフォーム、VO2MAX、HR...などほとんどが人それぞれ違います。そうした中で自分の最も調子のよい状態のスピードと距離というものが存在していることに練、ランニングライフの中で気が付くと思います。
これを無視して参考書通り、コーチの言う通りに練習していては、結果に結びつけるこては難しくなります。自分の体の反応とランニングタイプを分析した後、正しい目標設定と練習計画を設定しましょう。



ランニングの回復

練習やレースからのリカバリーは、私たちが練習を計画するうえで考慮しなければならない重要なポイントです。スピード練習の回復には約2日、5000m・10000mのレースも約2日、それでは距離走は何日の回復日が必要なのでしょうか。一般的にマラソン後は約1か月の休養が必要と世間では聞かれます。何をもって1か月なのでしょうか。

まずスピード練習と10000m以下のレースについてです。この距離の範囲では約2~3日で回復できると考えられます。回復後(2~3日後)、高強度の練習を再度行うことが可能です。この距離以下では、筋繊維が破壊される時間は最長で約30分程度、また有機的・無機的代謝における最大刺激は10分~15分以下(1600m×4では4分30秒の疾走時間の場合合計で10分)となります。VO2maxトレーニングにおける効果と体の記憶に関しては『TABATA TRAINING・タバタ式トレーニング~究極の科学的肉体改造メソッド(田畑泉 著)』を参照ください。筋繊維における疲労とエネルギー代謝に関しては『乳酸を使いこなすランニング(八田秀夫 著)』を参照ください。
この距離を正しい走動作で全力疾走した場合には、体に対する負荷は、1週間や2週間といった長期間の休養を取る必要はありません。筋疲労の回復から直ちに高強度の練習を再開できます。
もし2~3日間で回復できない場合には、インターバル、レペティションの距離が長すぎることが考えられます。もしくはEASYランの日に疲労してしまっている可能性もあります。もしこの期間で回復できないようであれば、能力以上に距離を踏んでいる可能性が考えられ、前回のブログで前述したとおり、狙った期待値に対してのトレーニングの効果は低下していると考えられます。
再度、距離とペース設定もしくはEASYランの日の練習内容を構築する必要があります。



次に長長距離(1時間以上を90%~100%で走った場合・60分以上の走運動を常に継続し続けた場合・2時間以上の距離走80%~100%を走った場合・マラソンのレース)の練習・レース後に関してです。

私が考えるところの『回復した』とは、『走動作』の回復を意味していると考えます。例えば100%のマラソンレースの次の日に1000mや1500mのレースを走ってベスト記録で走れる人間はいるのでしょうか。おそらくいないでしょう。距離走やマラソンの後は『走動作』がやや悪くなることと『筋疲労』によって、自身の最大スピードが出せない状況になっています。つまり『回復』とは『悪化した走動作』・『破壊された筋繊維』の回復を意味します。

自身の走りが、正しい走動作(筋力走りではない)を作る内容として、流しや200mのインターバルで疾走感を確認する時間をリカバリーランの中に取り入れましょう。正しい走動作であれば、スポットにはまってバネと推進力を感じることができます。ここで推進力を感じられない場合は、走動作が著しく悪化しているので、ドリルやプライオメトリクス等のトレーニングで、体の動きと、部位の位置、反発力を再確認する必要があります。

正しい走動作を感じられる(流しの中で疾走感を感じる・スピードに乗ってきて距離が足りない)場合は200m~600mのインターバルまで距離を伸ばしてみましょう。ここではある程度本数は決めずレペティションのリカバリー時間で行います。1本目で、途中から突然失速、または筋疲労を感じる場合には、筋繊維はほとんど回復していないので、リカバリーランとドリル・流しを続ける必要があります。400mをレペティションペースで5本以上を疲労感なく走れる場合にはほとんど筋繊維は回復していると考えられます。

この練習の2日後か3日後に1000m・1500mのTTを行ってみましょう。
ここでベストを出した時のような感覚、もしくは最初から最後まで正しい動きを維持し、筋疲労なく、疾走感を2分~4分感じ続けることができれば『回復した』といえると思います。本来の練習計画に復帰することができる状態です。

この練習計画と感覚の『回復』は高強度の距離走やペース走、マラソンレース、オーバートレーニング等からの復帰に役立つと思います。
一般的に1週間休養が必要だから、といった考え方や、だいたいこのくらい休めば疲労が抜ける、といった経験論からではなく、

何ができて何ができないのか、数値としてどのような走りができているのか、その中で自身の感じる走りの感覚はどのように感じているのか。といったことを確認出来る『回復期』における練習計画を持てると、効率的に次の練習・レースへつなげることができると思います。

人それぞれ回復するために必要な時間と練習は違っていると思います。『自分自身が回復した』と示せる練習計画と内容があれば、他人に『休み過ぎだ』『休養が足りない』といわれたときにも、自分自身の指標に従って自分の状況を正確に評価できると思います。


こちらの写真は先々週の土曜日に20㎞(3’18”)を行った時のものです。この次の日に100mileリレーがあり、私の記録は5分2秒でした。オーバートレーニングと回復を誤った結果が先週のメルボルンマラソンに現れてしまいました。スピードは見え隠れするものであり、疲労は潜んでいるところから、突然表面に現れます。しかしどちらも練習内容と結果・走りの感覚から気づき、修正できるものです。最高のパフォーマンスを維持・向上できる計画を自分自身の手で作りましょう。

次回は具体的なトレーニング内容に入っていきたいと思います。