試合の相手が誠とわかった田所が、
「この県予選、この級は俺と誠しかいないけど、当日の試合はお互い力を出し切って、いい試合にしような」
と言って握手をしてきた。
誠は差し出された手をしながら、田所の顔を見た。
心の中で、
お前は余裕でいいよな。俺はほぼ負けが決定したようなもんだわ。
さわやかに握手なんか求めて・・・。
と悲観的になっていた。
そんなある日、
いつものように、誠と勘吉、進之介での練習の帰り道
進之介が口を開いた
「なぁ、俺さ-。今度のインターハイ県予選・インターハイが終わったらジムを辞めようと思うんだ。」
その言葉に誠はドキッとした。
誠も同じことを考えていたのだ。
進之介が、
「俺、大学で考古学という分野を勉強したいんだよ。
そのためには今の学力では足りないんだよね。
だから今回の試合が終わったらジムを辞めて、勉強に集中しようと思うんだ。」
その考えは、誠の考えとは少し違っていた。
誠も同じ高校3年生として、進路は考えていたが、誠のジムを一番辞めたい理由は、会長の暴力やシゴキに絶えられないこと、練習のハードさや練習時間の長さであった。
ボクシングから早く離れたい、それが誠の一番の理由であった。
トップ選手なら、そのような考えはなく、きついトレーニングやコーチのシゴキに耐えていく根性があるのであろう。
誠にはそれがなかった。
メンタルが限界であった。
誠にとってボクシングは、怖さと苦痛でしかなかった。