地蔵菩薩をお祭りする坂を越えていくと一面棚田が広がっています。石積みの高垣には水が引かれ、早苗が春風に吹かれる季節となりました。稲荷山公園も水面に逆さに映ってシンメトリー。ここにいると上下感覚がなくなります。どちらが上なのか下なのか分からなくなります。右も左も分からない世界がここにあります。
東の空から日輪が昇ると辺り一面は黄金色に染まりました。金色の水面をアメンボがすいすい泳いでいます。カエルが鳴き始めました。何とも力のある声で空まで届きそうな勢いです。
モグラを撃退する風車がカラカラ回っています。本当にモグラを撃退するのか? 疑問は残ります。モグラは神経質で音に弱いと言われいます。ここ数年で高垣に穴を開けて水を放水していたモグラたちは一匹もいなくなりました。おかげて水の管理は楽になり、農家さんたちは喜んでいます。
ミミズがうんこをして米のお味を美味しくします。モグラはミミズを食べてせっせと穴を掘り、反映してきました。そのモグラを蛇が食べます。蛇は肥え太ってやがて地に帰り田んぼの肥となります。田んぼはますます肥沃となり、ますます美味しいお米を生みます。
そんな豊かな環境の循環は、一本の風車で断ち切られました。米を作ると言うことは、別の生き物を犠牲にしています。もっとも私たちはそのお米を食べて生活しています。
人間は米を植えて食べています。別の視点から言えば、稲は米という食料を人間に供給して、子孫を繁栄してきました。人間が米を作っているのではなく、稲が人間に米を作らせている。私たち人間は稲の奴隷だと言った人がいました。