雨が上がりました。棚田の新緑のあぜ道には野生の芥子が黄色い花を咲かせています。一面新緑中の中で黄色い花はよく目立ちます。
芥子というよりタンポポの仲間かもしれません。周りは昨夜からの雨で梅雨が緑の葉っぱにいっぱい結んでいます。
イヌノフグリも一面の真緑の中、薄青色に群落を作っています。春の盟主といってもいいでしょう。
棚田は田植えが終わって早苗の水面に稲荷山公園が映っています。青空なら新緑もくっきり映って綺麗なのですが、今日はどんより曇っていて色鮮やかさはありません。
カエルが大きな目を見開いて獲物が来るのを待ち構えています。周りではアメンボがすいすい泳いでいます。
あぜ道のススキの穂の先端に水滴が丸く結んで、こんなに小さな凸レンズの中に広い逆さの世界を映し出しました。
雨にたたられた薔薇はいつもよりも香りを強く放って周りは薔薇の芳香まみれ。
この季節、青葉若葉が萌え出て本当に美しい世界が広がっています。北原白秋の短歌にこんなのがあります。
草わかば 色鉛筆の 赤き粉の ちるがいとしく 寝て削るなり
この季節の色を一言で表せば、「もえぎ色」と言うことができます。萌え出るような緑の中で、色鉛筆をしきりに削っています。その粉が散るのを愛おしくなって、寝てはいつまでも削っていることだ。緑の赤のコントラストは本当に美しい耽美的な世界です。時間を超えるかのようにいつまでも削っている。ただそれだけの短歌なのですが、白秋が過ごしたこの一瞬ひとときを見事に三十一音に凝縮して、百年の時空を超えて私たちの心に今朝、届きました。