今朝は雨 冷たい雨 | バイカルアザラシのnicoチャンネル

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 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

 昨日から雨。今朝も雨です。薔薇の小枝には雨粒がついて向こうの葉っぱを逆さに映しています。夜明け前、冷たい雨。

 

 朝からうるさいこと。それもそのはず、スズメが電線に群れをなして鳴いているのです。スズメの鳴き声で目が覚めるとは。この声が聞こえ始めると春が近くなります。

 

 夜が明けると下降霧が西の渓谷から東に向かって行進を始めます。その行進は清流櫛田川を通って伊勢湾まで続いています。

 

 薄明からさらに東の空は明るくなり、一日が始まりました。伊勢三山の中央に位置する名峰白猪山は雲に隠れています。朝早くから稲荷山にお詣りに急な石段を上っていく人の影が。何をお祈りに行くのでしょうか?

 

 地蔵坂の白梅の老樹、今年も咲きました。昔ここでお侍さんが斬り合いをしました。そこに眠る名前も知られていないお侍さん、人々はここに祠を建てて弔いました。小さな老樹は緑の苔に蝕まれながらも、数百年の月日をここで春に咲かせています。

 

 昨夜からの風雨で緑の苔の上に純白の梅の花びら。その一片ひとひらは沈黙して何も語りません。

 

 地蔵坂を見上げると大空はまっ白で、微かに白猪山の稜線が見えます。棚田の高垣は大空の広がりを遮って厳然と見る人の上に君臨しています。この坂を越えればどんな風景があるのでしょう?

 

 地蔵坂を越えるとそこはもう春でした。一面にホトケノザのお花畑が広がっていました。それでも吹く風は強く雨は降りしきります。つかの間の春は冷たい風に吹き飛ばされて、いきなり冬に連れ戻されます。冬と春のせめぎ合いは、これからもう少し続くでしょう。

 

 春の神ペルセフオーネがハデスから出でつかのまの原っぱを散歩して、春の足跡を残したのでしょう。しかし、冬の北風は容赦なく女神に吹き付け、女神をハデスに押し戻しました。それでも南からの温かい風が吹けば、彼女はまた地上に現れるでしょう。一雨ひとあめ毎にそれは繰り返され、やがて女神の足跡は棚田を覆い、一面が春のお花畑になります。一雨毎に三つ寒くなり、四つ温かくなる三寒四温の時節は始まろうとしています。