三重県に「多気郡」という所があります。平安時代の法律である延喜式には「多気の国 たけのくに」と書いてあります。平安時代に地名を漢字で二文字にする法令が出ました。三重県の「志摩 しま」は「島」でした。「多気」とは「竹」のことなのです。地名の通り今でも竹の山がたくさんあり、3月ともなれば高級料亭にタケノコが出荷されます。
竹は夏に活動がお休みです。夏眠をする竹は暑い季節に活動を停止し、ひたすら眠ります。そして、冬の寒さとともに活動を再開し、地下茎に栄養を蓄えます。そして、春先、見事なタケノコを産します。私たちはその恵みを少し頂戴しているのでしょう。今は秋、近頃寒くなりました。そして、冷たい北西風が吹き出します。やがて竹の木は眠りから覚め、活動を始めます。
小春日和の今日、黄色い菊が花を咲かせています。小春日和とは、小春つまり10月23日から12月22日までのことで、春のような暖かい日を指します。季節が春なのかと思えば、秋から初冬にかけての暖かい日を言うようです。ミツバチが最後の蜜を求めて飛んでいます。こちらは冬眠のための備蓄。日差しは温かいです。でも、北風が吹くとその暖かさを一気に吹き去ってしまいます。
松尾芭蕉の一句にこんなのがあります。
月の鏡 小春に見るや 目正月
小春日和というように、こんな時期に鏡のように澄んだ月を見るのは目の正月だ。美しい物を見て目を楽しませることを「目正月」と言います。「鏡」と「目」はどちらも見ることから「縁語」を使っています。江戸時代の美意識は「いき」でしたから、ここでもちょっといきを使ってみたのでしょう。この時節の月は空気も澄んでいて美しいですから、江戸時代の人たちは大いに月を愛でて楽しんだことでしょう。

