東の空に明るい星が・・・ | バイカルアザラシのnicoチャンネル

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 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

 今日もお疲れ様でした。暑い地球を離れてたまには夜空を見上げてみましょう。もう夕暮れなので日本列島は黄昏時だと分かります。これからユーラシアに太陽が当たっていきます。

 

 台風も去り、日本各地に災害をもたらしていきました。台風が日本海に抜けて、少し青空も出てきたようです。東の空に明るい星が昇ってきます。木星です。ガリレオ衛星もくっきり見えます。

 

 今夜8時の木星はこんな感じで衛星が並んでいるでしょう。コンピューターグラフィックスで描いてみました。

 

 水星が4000万キロに対して木星は6億5000万キロ離れています。こんなに遠いのに大きく見えます。太陽になれなかった巨大ガス惑星木星、太陽系の惑星をすべて集めても2.5倍の質量があります。実はこの木星、私たちの地球、そして、生命に対して重要な役割を果たしてきました。太陽とともに恵みを与え、災いも降り注ぐという私たちの生命を支配する星でもあります。口径12cmの屈折望遠鏡から見た姿は木星とガリレオ衛星とともに夏の星々も写し出していました。

 

 太陽系は少し他の恒星系とは違った並びをしています。他の恒星系は中心に恒星があり比較的近い場所にスーパーアースのような地球の数倍もある岩石惑星があるのが普通です。あるものは木星のような巨大ガス惑星が近くにありこれはホットジュピターと呼ばれています。ところが、太陽系には水星・金星・地球・火星など小さな惑星しかありません。

 

 実は45億年前、木星は火星近くの軌道を回っていました。その頃、水星から火星にかけて小惑星がたくさんありました。このままなら地球や金星、火星まではもっと大きな惑星ができていたはずです。木星が火星近くの軌道にいたためこれらの小惑星を太陽に衝突させたり、太陽系外にはじき出してしまったのです。スーパーアースを作る材料はなくなりました。上の図を見ると小惑星ケレスが見えます。小惑星帯をすべて集めれば立派な惑星に成長していたはずです。しかし、木星がこれを妨害してしまいました。木星と土星が公転するごとににより互いの重力が干渉し合い木星は現在の位置に大きく変えたからです。

 

 もし、木星が太陽系になければ地球はもっと大きなスーパーアースとなり、水も少なく生命を発生させることはできなかったかも知れません。しかも、惑星が大きくなれば重力が強くなり変化は小さくなります。さらに重力に引かれて水素やヘリウムなどのガスが集まればガス惑星になる可能性もありました。地球付近の小惑星帯が消えたことにより、彗星が地球に衝突し地球に水がもたらされました。こうして地球は水の惑星になったのです。

 

 太陽系はなり損ねの星が多いことでも一風他の恒星系と違います。太陽になり損ねた木星、惑星になり損ねた月とケレス、観測すればもっとなり損ねの星が見つかるかも知れません。木星があと4倍の大きさになっていたら太陽系は二重星、太陽が二つあることになっていました。スターウォーズで太陽が二つある空がありますが、実は天の川銀河の中では意外に多い、いや、三重星や四重星もあります。月がもう少し大きければ二重惑星になっていたかも。そうなるともう一つの地球が近くにできて宇宙船で新世界に人類が進出できたかも。でも、二重惑星は軌道が不安定で極端な温暖化や寒冷化を引き起こすでしょう。互いの引力で二つの惑星に潮汐力がかかり、とてつもない巨大噴火が起こります。いずれにしても地球生命発生には好ましくない現象です。

 

 天文シミュレーターを動かしていると木星と同じように小惑星も動いていることが分かります。つまり、木星の重力が小惑星帯を動かしているのです。近年、小惑星から木星に黒い斑点ができました。小惑星の木星衝突です。ひよっとしたらこれが地球に降り注いでいたかも。木星は地球の身代わりに小惑星を吸収していてくれたのです。しかし、いいことばかりではありません。逆に小惑星の軌道が木星の重力に反応して地球に小惑星を投げつけてくることがあります。八億年前に起きた地球と月に対する小惑星シャワー、6550万年前に恐竜を絶滅させた隕石。近年ではロシアでの小惑星衝突。ひよっとしたら木星の引力が係わっているかも知れません。

 

 地球を水の惑星にしてくれた木星、それだけで木星は私たち生命にとって重要な存在です。木星探査衛星ジュノーや宇宙望遠鏡、VLTなど8mを越える巨大望遠鏡によって木星の姿が明らかになってきました。また、スーパーコンピュータの出現は様々なシミュレーションをさせることが可能になりました。国立天文台四次元宇宙ビューアーを使えば誰でも太陽系から銀河、そして、宇宙の構造までCGで瞬時に描くことができます。今夜も6億5000万キロ彼方から明るい姿を南の空に見せています。あの明るい光は地球にどんなメッセージを送っているのでしょう。

 

 それにしても夜空が明るくなりました。都市部では星が見えなくなりました。こんな片田舎でもLED街灯の眩しい光が夜空まで照らしています。防犯といえば、何とも言えません。防犯が目的ならもう少し低いところに街灯を点けて街路だけスポットで照らして欲しいものです。特に夏、満天の星はみんなの宝物です。天の川が流れているのを見えないのは何と寂しいことでしょう。どこか街灯のない漆黒の闇夜で望遠鏡を稼働させて心ゆくまで満天の星を撮りたいと思います。