画像データ 口径12cm屈折望遠鏡 焦点距離600mm ISO100 1/1600秒 直焦点撮影
今夜は仲秋の名月です。どうりでお月様は明るくて美しい。理科の先生に質問したことがあります。「お月様が大きく見えたり、小さく見えるのはなぜですか?」
先生の答えは、「月が低いときは大きく見えて、高くなると小さく見えます。つまり、あれは錯覚。カメラで撮れば同じ大きさに写ります。月は太陽とは逆に夏は低く、冬は高く昇るので、夏は大きく見えます。」
さすが理科の先生。鮮やかな回答でした。でも、実は月は地球から38万キロ離れていますが、近いときは36万キロ、遠いときは40万キロと楕円軌道を回っているので、月は大きく見えたり小さく見えます。大きく見えるときはスーパームーンなんて言いますよね。
月ができたのは、地球に火星大の小惑星が衝突して別れたのが月です。毎年3.8cmずつ遠ざかっています。ということは、数十億年前には地球のと距離がゼロのときがあったはず。生命が生まれたのは30億年前ですから、その頃の月は地球にもっと近くて月の引力はもっと強かったはずです。そこで潮汐力によって海の水はかき混ぜられて有機物が豊富になりました。私たちはその海の中で生命として発生しました。月がなければ、地球は生命豊かな惑星にはならなかったことでしょう。
源氏物語の作者紫式部がこんな短歌を詠んでいます。
めぐりあひて 見しやそれとも 分かぬまに 雲隠れにし 夜半の月かな
やっとお逢いできたのに、それがあなただと分かるか分からない間に、あなたは夜半の月が雲隠れするようにお帰りになった。まるで今夜の月のようです。澄んだ秋の空なのに、黒雲があちこちに湧いていて月を見えなくしてしまいます。せっかくお逢いできたのにすぐに帰って行くなんて、何て趣のない人なのだと文句も言いたくなるでしょう。
今ならラインかメールで激怒こマークでも送るところですが、時は平安時代。三十一音に女性の想いを書き留めました。その気持ちは数百年の時空を越えて、今夜の私たちにも迫ってきます。
明日は十六夜。「いざよい」という響きが素敵です。そして、月はどんどん細くなり、立ち待ち月、居待ち月、臥し待ち月と月の異名は変わっていきます。立って、座って、伏して一日一日遅れていく月出を待つ。それは、好きな人を待ちに待っている気持ちに通じます。古代の人たちは、このように月への想いはひとしおだったことでしょう。