野呂元丈(のろ げんじょう)は、伊勢国多気郡波多瀬村に元禄6年に生まれた。本草学者で蘭学の先駆者と言われている。20歳のとき京都に出て、医学や儒学、本草学を学んだ。享保の改革を行った将軍徳川吉宗の命を受けて青木昆陽とともに蘭語を学んだ。肖像は松尾芭蕉に似てるけど、元禄時代の学者達はこんな姿だったのだろう。今でも多気町には越後屋の創業者三井六右衛門高利を輩出した三井、高橋、野呂、坂口などの姓が数多く残っている。
元丈は吉宗のお抱え医師で漢方薬に通じていた。今で言えば、東洋医学だけでなく、西洋医学の薬学にも通じていたスーパードクターだったのだろう。ヴィソンの山頂には薬草湯があり、四季の薬草風呂を楽しむことができる。湯船には惜しげもなく薬草の袋がぷかぷか浮かんでいて濃いお茶に身を浸しているような感じになる。ここで働くスタップは元丈に習って江戸時代の漢方医が着る作務衣姿なのが面白い。
午後からは県内県外の観光客が入ってくるので、朝六時から営業している早朝の湯船が空いているのがねらい目。菰野町にもアクアイグニスとというリゾートがあるが、設計者が同じなのでサウナや泡風呂など余計な施設はない。のんびり薬草湯だけを楽しめるのがいい。ホテルからはお風呂までは直通だが、日帰り入浴だと山頂駐車場から歩かなければならない。しかも、舗装がしてないので雨の日は不便。その分、入る人は少なくなるから雨の日はのんびり楽しめる。これから寒くなるからここでのんびりしていたら最高。
湯船からあがった休憩室は竹がいっぱいあって竹林の風情。多気町は平安時代の延喜式という法令で、竹が沢山採れるので「竹の国 たけのくに」と呼ばれていた。多気とは気が多い、気とは命を指すが、命あふれる場所であるらしいが、これは後世のだれかがこじつけた解釈。確かに本草の湯に入っていると、身も心も癒されて気持ちも体も活性化されるのは事実かも。
ヴィソンの本草湯の山頂エリアは、いたって静か。余計な物がない。ここからは西方に局ヶ岳や白猪山、北には堀坂山など伊勢三山が一望できる。高原の趣があるがこれは山を切り開いて平らにしたもの。エスカレーターで下に下りればマルシェなど三重の山海のグルメが楽しめる。移動するにはエスカレーターか車で移動する。電動カートも使える。健脚の人はマルシェの駐車場から山頂駐車場まで歩けば、往復で10kmは歩けるからちょっとしたトレッキングにもなる。今は紅葉が美しい。
ホテルヴィソンの下にはスノーピークの専門店もあり、アウトドア派にはメッカになるかも。ゆるキャン△などでたき火が流行っているので、そんなグッズも売っている。ちなみにスノーピークのホームページで完売御礼になっているガスランタンが店内で売っていた。今はLEDランタンが主流なのでさすがにガスランタンは要らないが、ガスの炎が照らすテントウォールは風情があっていい。耐熱強化ガラスでできたランタンはもはや工芸品の域! ガスランタンの完成形かも。
マルシェにはいろんな物が売っている。中でも伊勢のカルダモンコーラのシロップはマストツーバイの一品。カルダモンやシナモンにバニラビーンズなど体にいい物が煎じてある。それを飲むレモンジュースと言われているマイヤーレモンが入っていて、コーラと言うよりも野呂元丈の煎じ薬って感じ。香りといいお味といい美味しい。体にいい物がまるごと入っている。これを作っている人の気持ちが飲んでいると直接伝わってくるから不思議。野呂元丈本人がこれを飲んだらどんな顔をするだろう? 多気とは命が活性化する場所とうそぶいていたことが現実味を帯びてきた。