マイクロツーリズム 多気町のヴィソンから熊野へ | バイカルアザラシのnicoチャンネル

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 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

 ここは伊勢路と熊野路を分ける交通の要所多気町。ヴィソンには辻口チェフのコンフィチュールアッシュ(Confiture H)がある。何と言ってもラ・ショコラレ・デ・アッシュはチョコレートの最高峰。

 

 季節は秋、スィーツも秋の装い。右にあるのはラズベリーのゼリー、と言っても、ババロアやムースが混在していてベリーの香りが口で広がる。甘さと酸っぱさが絶妙。クリームパフは皮が厚くてパリパリ、中は濃厚なシュークリームが充填してある。季節が変わればメニューも変わるんだって初めて知った。

 

 カフェはさりげなく紅葉が飾ってある。棚にはカボチャが。山々の彩りの変化と収穫への感謝が見え隠れする。

 

 マルシェには三重県産の果物が並んでいる。種なしの巨峰を680円でゲットした。大手安売りスーパーと変わりない値段だ。地元の野菜はびっくりするような値段で売られている。マルシェは直売所だった。三重は食材の宝庫。海の幸も山の幸もマルシェには満載している。

 

 伊勢カルダモンコーラの原液をゲットした。知ってる人は知っているという一品。香料の女王と言われるカルダモンをふんだんに使っている。しかも、三重県産のマイヤーレモンをブレンドしている。マイヤーレモンは飲むレモンジュースで、体いいいと言われている。これを炭酸水などで希釈して飲む。

 

 コンフィチュール・アッシュの隣はイチゴ工場になっていた。冬になれば水耕栽培で育てられた極上のイチゴが食べられるのだろう。だいたいここにいるとついつい半日は過ごしてしまう。ここで伊勢路に向かおうか、熊野路に行こうか迷ってしまう。そして、薬草風呂に入ったり、美し国のグルメを楽しんでいる内にここが目的地になっている。今日は、熊野路に向かいたいので早々に引き上げた。

 

 伊勢自動車道の紀伊長島インターからは無料の自動車専用道路になる。さらに尾鷲から熊野まではトンネルが抜けて直行できるようになった。これで名古屋方面から熊野までは高速道路で完全に繋がったことになる。でも、尾鷲で海鮮丼をいただこうと、寄り道した。地魚丼の今日の具は鯛・マグロ・ハマチ・太刀魚。その日にあがった魚が具になるので毎日、品が変わる。今日の太刀魚とは珍しい。

 

 熊野に来たのは、花の窟神社に行くため。ここは日本最古の神社。ご神体は火の神を産んだためこの地で黄泉の国に赴いた伊邪那美命。伊弉諾が黄泉の国に妻を迎えに行こうとしたが、ウジ虫に蝕まれた命は夫を捕まえようと追いかける。伊弉諾は這々の体で黄泉の国から現世によみがえった。彼は妻を偲んでここに花の窟神社を祭った。

 

 境内は立ち入り禁止。ご神体の垂直の岸壁が崩れたため。夏にはこの岸壁に純白のハマユウの花が咲く。クロアゲハが境内を舞う。女神に捧げられ白と黒のカラーは夏の凛とした境内に似つかわしい。ご神体に触れることができないのが残念だった。8月の長雨で境内に張ってある綱も切れていた。

 

 それにもかかわらず、人々はいっぱいここに来る。なぜ人は熊野に向かうのか。垂直の岸壁にはいつも熊野灘の潮騒が轟いている。ここは隈の野、現世と来世の境目なのだ。現世の地の果てに来れば、否応なしに死と向き合うことになる。死を知ることはよく生きることに繋がるのだろう。ここに来ると心がリセットされる。人はまたパワーをもらって社会に戻っていく。

 

 今日の七里御浜は穏やかだった。長雨のせいか海の色がくすんで見えた。台風が来ると国道42号線まで波しぶきがやってくる。波頭が堤防に打ち当たり、10m程に立ち上がり雨は棒のように空から降り注ぐ。今年の秋はどんな顔になるのだろう。女神が穏やかな顔を見せてくれるのいいけど。