誰が植えたのか、川岸に桜の木。高台から見下ろすと眼下には山に囲まれた小さな集落があります。
小高い丘には社があり、境内にはソメヨシノが植えられています。行灯がいくつも架かっていて、いつでも宴会ができそうです。
岸辺には桜の並木道。この季節、だれもが桜の木の下に集います。
山眠り、山凍る冬。山の神様は山にお隠れになり、春になると山里に来られて五穀豊穣を約束されます。それが春祭になりました。梅が春の予兆を告げ、桜は春の到来を知らせます。
満開になるとどこを見ても桜の花びらに包まれます。美しい光景は一瞬。今の季節、春風が小枝を揺らして、美しい一瞬をなかなか撮らせてくれません。
満開の桜の林にツツジが咲き出しました。春爛漫を思わせるツツジの花。濃い桃色から深紅のツツジが咲き始めるのももう少し。でも、今日はあまりにも北風が強すぎます。
万葉集にこんな歌があります。
梅の花 咲きて散りなば 桜花 継ぎて咲くべく なりにてあらずや
奈良時代、花と言えば梅です。花と言えば桜になるのは平安時代のこと。この短歌は大伴旅人の邸宅で開かれた宴で詠まれたものです。梅の花が咲いて散ったので、桜の花が続いて咲くようになったのではあるまいか。こんな意味なのでしょう。梅の季節が終わったのだから、次は桜が咲くからそれはそれで、また、大いに桜の季節を楽しみましょうとでもいうのでしょうか。