奈良と三重県境にある日本三百名山の高見山に登りました。この時期は樹氷が美しいことで有名です。前半は地上から、後半はドローンによる空撮映像をご覧いただけます。三分間の動画にまとめてみました。
高見山は標高1248mの山で、峠にある駐車場からは標高300m程を一時間程度で登ることになります。登山道はよく整備されていますが、高見トンネルからの林道は積雪凍結時は車両通行止めになります。
山頂には大関高見山が建立した神社があります。その横には避難小屋があり冬の寒風をしのぐことができます。平日なのに避難小屋は人がいっぱい。何やらカップ麺の香りがしてきます。熱々の食べ物は冷えた体にご馳走でしょう。
奈良県側の斜面は細尾根で端正な形をしています。奈良県側から見るとピラミッド型をしていて一面が真っ白、三重県側からは細長い山体でかすかに山頂が白くなっている程度。関西の人から人気があるのは、やはり形と樹氷なのでしょうか。
湿った冷たい北風がひたすら木々に吹き付け、エビのしっぽと言われる樹氷を作っていきます。
これは三重県側の尾根で同じく日本三百名山の三峰山に続いていきます。北斜面は真っ白。
三重県側の眼下には舟戸の集落が見えます。神話の時代に天照大神が櫛田川に礫石を投げ入れ、波が起こって川船がここで止まったと伝えられている村です。波が止まったところまでを伊勢国とし、その以西を大和国に定めました。国分け伝説です。
「山眠り、山凍る」こんな言葉がここでは似つかわしい。すべてが凍っています。好んでここに来たはずなのに、寒くて寒くて仕方ありません。
地面には枝から落ちた樹氷が散らばって積もっています。足を踏めばシャリシャリと音がします。でも足跡で地面を汚したくないのでそこを避けて進みます。
聞こえてくるのは木枯らしの吹く音だけです。遙か向こうには大峰山が見えます。あれが弥山、あれが八経ヶ岳、あれが釈迦ヶ岳と冬や春にビバークした峰々が見えています。
樹氷は西からできて海のある東に向かって成長していきます。二月になれば三峰山も樹氷で覆われるでしょう。やがて三月、海からの南風が樹氷を西に向かって消していきます。冬と春のせめぎ合いは、今は圧倒的冬の勝利。木枯らしの音を聞きながら山々は眠りについています。三月の初め、樹氷に覆われた山頂を踏んだことがありました。太陽が昇ると樹氷はひとかけら、また、ひとかけらと落ちていきます。「パサ、バサッ、パサパサ」と音を立てて落ちる音は、山の眠りを覚ましていきます。今は木枯らしの吹く音だけ、深い眠りはますます深みに落ちていきます。
これが実際に見える人間の視界です。パノラマ合成してみると迫力は増すかも。日本放送協会ではグレートトラバース3で田中陽希さんが昨年高見山と三峰山を踏破しています。夏の日差しの中、深い緑の中を疾走していきました。こんな風景を見たらどう思うのでしょうか。