囀る鳥は羽ばたかない 第61話【だったら】
「囀る鳥は羽ばたかない」61話の私的ネタバレ覚書。甲斐率いる竜頭に襲撃された綱川。綱川のそばにいた百目鬼が瞬時にかばったのは矢代。シャツに血が滲み、苦悶の表情を浮かべる百目鬼。ほんのり早めだった本紙チラ見せから、自分に都合の良い予想妄想で頭をぱんぱんにして発売を待ちました。※毎度の注意事項: 以下がっつりネタバレ含みます。 登場人物の心情とかストーリー解釈とかは あくまで個人の感想・深読み(妄想もあり)です。******どうしたら、一緒にいられる――******矢代と百目鬼、ふたりアップで寄り添う扉絵の破壊力にも心臓握りつぶされかけましたがこの煽り文がもうね、ついにここまで来ましたね!?という感慨深さに本気で泣きそうに。矢代の逡巡にもとれるし離れてからの4年間、日々考え続けた百目鬼の切迫した胸の内にもとれるし。今回、矢代がほぼ沈黙状態。ほんの数分前、綱川の嫌味に対して、笑顔を浮かべ軽口で流していた矢代が襲撃者の逃走後、綱川に声をかけられ、軽口っぽく返しはしたもののいつもの口調ではない。作り笑顔もできない。百目鬼から離せなかった視線は、綱川の声掛けでそらしたものの綱川がその場を離れればまた百目鬼に戻る。桜一家の組員に運ばれる百目鬼を目で追い、七原に声をかけられ、一瞬の逡巡の後矢代は組員に声をかける。桜一家が納得し、穏便に百目鬼を引き取れる、適切で簡潔な助言。(チラ見せで、矢代が百目鬼を影山医院に連れて行ったことはわかっていたけど、私はたとえば組長に背を向けた百目鬼がその場で桜一家から捨てられたとか「この怪我は俺のせいなんで」みたいなこと言って矢代が強引に百目鬼の身柄を奪ったとか想像したりしてたんですよね。はずれたー。浅かったしそうあってほしい感もりもりの妄想だったー)後部座席に脇腹を押さえて顔面蒼白の百目鬼を乗せ、影山医院に向かう間もほぼ沈黙。七原への行先と「もっとスピード出せ」の指示くらい。あの七原が空気を読み、無言を貫く。影山に百目鬼を託した後、矢代も七原もそばで治療を見ていない。七原やほかの組員、従業員のときには室内でわちゃわちゃしてるのに。廊下で長椅子に座り、静かに待つ。七原は実務的な要件を簡潔に伝え、それに対する矢代の返答もこれ以上ないくらい簡潔。そして七原が医院を出て行った後、ひとり静かな廊下で視線を落としたまま動かない。やがて診察室から出てきた影山が、静かに座っている矢代に「まだいたのか」と声をかける。影山は矢代がいることはわかってたと思う。自分が部屋から出てくるまで、矢代はいる。鈍さに定評のある影山、百目鬼がらみの矢代と矢代がらみの百目鬼には妙に鋭い。できる限りの処置を施し、判断できる限りの症状を伝える。矢代からこぼれ出た「死なねーのか」は「死ななくてよかった」影山もわかってる。影山がその場を離れた後も矢代は静かに座ったまま。やがて立ち上がり、百目鬼がいる診察室に入る。百目鬼が眠るまで、時間を置いた感じかな。靴のアップ、カーテンをそっと開いてベッドの横に立ち、寝ている百目鬼を見下ろす。2巻10話の矢代と百目鬼が入れ替わった描写。差し伸べかけてこらえた指先。その場を離れようとした矢代に、背後から百目鬼が声をかける。4年前、声をかけられた百目鬼は振り返ったけど、矢代は振り向かず立ち止まる。「聞かないんですか どうしてなのか」どうして綱川ではなく矢代を守ったのか。矢代は背を向けたまま少し間を置き「聞かねぇ」と答える。百目鬼はその言葉に目を閉じ、「お返しです」と言って体を起こす。4年前の自分。矢代を守ったつもりで実は自分が守られていたこと。甘栗に指摘されたときには理解できなかったこと。散々守られたそのお返し。たぶん、「お返し」は取り繕った言い訳。なにかあったら、今度こそ守る、自分を盾にして、命と引き換えになっても。それは矢代が撃たれた時に決め、ずっと思い続けていた。等価交換みたいな言い方したけど決してそうじゃない。「バカなことしたな 綱川が大目に見るとは思えねぇ」そう言って診察室のドアを開け(入ったときちゃんと閉めたのね)出ていこうとする矢代を重傷負ってるとは思えない速さで追いつきバックドアドン(文字にすると何が何だか)で引き留めた百目鬼が、振り向いた矢代の耳元で「だったら俺を…っ」言いかけてはっと気づいて言葉の続きを飲み込む。熱で浮かされてなんか変なこと言いました、気にしないで行ってください、みたいなこと言いながらふらふらベッドに戻る百目鬼の後姿を、矢代は見つめ、静かに診察室を出る。ドアの前で何かを思う矢代、ベッドに座って顔を手で覆い、何かを思う百目鬼。×××思ったことをポンポン口に出す七原(個人的イメージ)がうずくまったまま動けない百目鬼の出血を見とがめる。でもそのあと、いつもの七原ならもっと声をかけたりした気がする。道心会のトップが某夢の国ではしゃぐ姿を想像し、こらえきれずに笑いだすとか後部座席で黙り込む上司の様子を気にせず、変わってしまった百目鬼の文句を言い続けるとかまあまあ空気読まないキャラの七原が空気を読むなんて(ほろり)もっとスピード出せ、と言われても「はい」としか答えない。スピードに関してはおそらく何度も言われてると思う。すでにスピードは出しまくってる。でもそのことも言わない。バックミラーに映る百目鬼に思う。“なんだよ… お前やっぱまだ”やっぱり。やっぱりまだ社長を…頭を。4年前、竜崎を探しに行く前に百目鬼を呼び出し、矢代を託し、その時に見た百目鬼のうっすらはにかんだ顔。入院中の百目鬼を病院の屋上に呼び出し、矢代との体の関係を問い詰めた時のかたくなな態度から察したこと。バレないようにと念を押したのに、想いを伝えちまったんだろう。頭がへたくそな嘘をついてまで百目鬼を切ろうとしているのはつまりそういうこと。その後4年の間、連絡もなくうわさも聞かず、てっきり百目鬼は堅気に戻って矢代のこともあきらめ、ふつうの暮らしをしていると思っていた。再会したと思ったらやくざになってたし(なってないけど)態度でかいし生意気だし。なのに──トイレと言って席を立ったまま戻らなかった矢代となぜか一緒にいた。矢代さんはどこか悪いのかと聞いてきた。「昨日どうして自分に山川のことを言わなかったのか」と問う百目鬼を「俺と寝てるからって勘違いすんなよ」と矢代が突き放した。ふたりは昨日会っていて、セックスもしたらしい。矢代の口ぶりから、昨日だけではなさそうだ。(「寝た」じゃなく「寝てる」ってことは)冷たくあしらわれた直後に盾になり、矢代を守って負傷した。──やっぱりまだ。そして矢代もまた。黙り込んだ横顔、入っていかない診察室。何も聞けないし、何も言えない。わたくし七原に関しては毎度毎度「そういうとこだよ七原」みたいな定型文の小言ばっかしでしたけど、そういえば七原は矢代を一番そばで見てる人でしたね。黙り込む上司をそっと見て、去る。×××自分に背を向け、矢代を守った背中を間近で見た綱川。まあ…衝撃だったとは思うんですよ。手に入れる=組員として盃を交わす前段階として神谷に命じて人となりを探らせてたくらいには気に入り、目をかけていたわけだから。激昂する連を見て己の怒りがちょっと落ち着いた綱川が「そんなガキはどうでもいい」と言い捨て、連には家に残るよう指示をし、車に乗り込み総会へ。綱川、腕撃たれてたけど大丈夫なのかな。我々読者の目が百目鬼にくぎ付けになってる隙に応急処置した?総会に向かう道すがら、竜頭の襲撃を奥山組にケツ拭かせて、どちらもまとめて一気に、と策をめぐらせる綱川。と同時に、自分ではなく矢代をかばった百目鬼の姿を思う。すうっと先を見据える目。「どうでもいい」と言ったからにはそのまま手放し、捨ててくれたらいいんだけど。そうもいかないんだろうなー!?19歳の矢代にマジ惚れした組員は半殺しにされ、破門になった。(ついでに矢代青年もボコられた)「矢代を殺せ」と命じられたけど殺せなかった竜崎は殺されかけた。矢代が撃たれたとき側にいた百目鬼は小指を失った。真誠会でそんな感じだったら武闘派桜一家なんてもっと凄惨なことされる!?おともだちの天羽が連れてきた男。溺愛する娘が誘拐されたとき、単身で救い出した。いわゆる命の恩人。その娘がめっちゃ懐いてる。う~~む。切り札になり得るか?いやなってほしい、切実に。******矢代もいい加減理解したと思う。百目鬼をそばに置いていたら俺のせいで百目鬼が死んでしまうかも、じゃあ離れよう、じゃないんだよ。よそにいても突き放してもこれだよ。で、扉の煽り文。どうしたら一緒にいられるか。………三角さんなのかなあ!三角に頼んでどうにかなるものなのか。よその組の構成員のことに口出しできるもの?そのために三角は矢代にどんな条件を突きつけるんだろう。影山家の土地を守るため、影山の夢をかなえるため矢代は自分を差し出し盃を交わした。前回の覚書とかぶるけど、(思ったことは何度でも繰り返すけど)悪い予感しかしない。どうか三角さん、どうか…モノローグも一切なかった矢代。いろいろ考えて考え抜いて、診察室を出た表情が「もうこれしかない」と思いつめた感じにも見えて心がざわざわします。一方で必死に隠し通してきた胸の内の欠片をぼろっとこぼしてしまった百目鬼もまた、ぐるぐると思い悩んでいる様子。だったら俺を。そばにおいてください?綱川から奪ってください?いや……うーーーん……本心がバレたらまた逃げられてしまう、と百目鬼は思っているけど、まあなんですか、七原には気づかれてるしね。「守るべき組長を差し置いて矢代をかばった」と言葉にした影山も百目鬼の想いに気づいてる。気づいてないのは矢代くらいだよなぜならあなたが「女がいる」ふうを否定しないからさあ!と思ったけど矢代も百目鬼の本心、うっすら気づき始めてるふしがあるし。とりあえず当分の間かげやま医院でおとなしくしていてほしいんだけどーもたもたしすぎていたら次号のチラ見せ来ちゃったよ!いやいつもより早く来てうれしいけれども!どうやら百目鬼くんおとなしく寝ていない!また次回の覚書にて。天羽さん仁姫ちゃん助けて!!******最初から最後までシリアスな内容だけどいっこだけどうしても言いたい。百目鬼ホント、矢代に近づく速度が尋常じゃないよね!毎回毎回言ってるけど!逃げてる最中振り向いたときの甘栗ビジョンくらいの勢いとは想像できますが今回はあんな怪我して高熱で弱ってて体起こすことすらやっとだったのに、矢代がドアを開けかけた瞬間ベッドからひゅんっ。そしてベッドに戻る姿はよろよろ。本能で動く体。