「囀る鳥は羽ばたかない」57話の私的ネタバレ覚書。
読み返しては受け止め方や感想が変化していく56話。
ゆるゆるまとめたり、まとめなおしたりしていたら57話まで間に合わなかった。
57話が56話から続いているので、その辺もうまとめちゃおうかなとも思ったけど
そんなことしたら大長編になりそうなのでやっぱり分けよう。
57話は57話で言いたいこといっぱいだし。
簡潔にまとめられる能力が欲しい!
56話のその2は別枠でおいおいまとめます。
57話を読了後、
まず最初の感想は
「百目鬼ホントキス大好きだな!」
「これ百目鬼正念場だ」
でした。
※毎度の注意事項:
以下がっつりネタバレ含みます。
登場人物の心情とかストーリー解釈とかは
あくまで個人の感想・深読み・妄想です。
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こころと
言葉が
すれ違う
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百目鬼がキス大好き、キングオブキス魔だとわかってるつもりでいたけど想像以上にもほどがあるキス大好きっぷりを披露する57話。
チラ見せも全コマキスで舞い上がる私。
前回のラスト、矢代に首を引き寄せられキスしてから、おそらく延々キス。
再会後、ずっと百目鬼とのキスを妄想し望んできた矢代が音を上げても押さえつけてさらにキス。
唇を離したと思ったらふたりのブツを握り込んで兜合わせ。
やめろ、早く挿れろと言われても愛撫を続ける。
乳首をなめられ、同時に扱かれて矢代がのけ反る。
酷く…しないのかよっ
酷いの好きでしたよねと聞かれて好きだと答えたのにしない。
(焦らしプレイは酷くないらしい)
これまでの『性欲処理』と称した百目鬼の攻めとは全然違う。
さらに矢代のものを咥えた百目鬼の頭を押しながら
も、いいって…
言って…
百目鬼が内腿に唇を這わせた瞬間、
矢代の脳裏に4年前の光景が浮かぶ。
身体中舐めつくし、脚にも唇と舌を這わせた百目鬼、知らない快感に身を震わせる自分。
思わず百目鬼を蹴り飛ばした矢代は動揺し、焦点が定まらない顔で息を切らす。
百目鬼はそんな矢代の様子を冷静な目で窺い、手首をつかむと我に返った矢代に振り払われる。
お前
やっぱ しつこい
4年前、レクサスの後部座席での矢代のセリフ。
そう言って顔を背ける矢代に百目鬼は小さくため息をつく。
吐きたいなら吐けばいい
百目鬼も4年前とほぼ同じセリフをnot敬語で言って続行。
百目鬼は矢代がもう吐き気も催さないであろうと確信しているようにも。
そして背を向けた矢代に、後ろから挿入。
背面側位で激しく突き、感じている矢代の腕を取ってつながったまま上半身を返し、頭を抱え起こしてキス。
(え、またキス!?みたいな顔しつつも百目鬼の舌に舌を絡める矢代がとてもいいです)
正常位で向き合い、矢代を見つめる百目鬼の顔に手を差し伸べ
(5巻で百目鬼が自虐を言った時のように)
ヤリたくってしょうがねえってカオ
してんな
第1話のセリフ、リフレイン!
言われたことはすべて覚えている百目鬼が
懐かしいこと 言いますね
と返しても、自分が言ったことを忘れる矢代はピンと来ない。
差し伸べられた矢代の手を取り、押さえつけて深く入り込み、またキス。
くちびるが触れたまま百目鬼が問う。
(この、距離ゼロのふたりも、5巻で矢代が百目鬼に腕を回して引き寄せて自分からキスした後「お前のそういうとこが ホント腹立つ」と言った時と同じなのよね)
自分はどうなんですか
自分は(そんな顔)してない、と言ったそばから屈曲位で攻められ、そんな顔になる。
…いちいち指摘するのが野暮に思えてきたけどこれも5巻再び。
見んなっ
これも5巻とリンク。
本気で感じてる顔は見られたくない。
19歳のころ、三角に「ヤッてる時の顔とかやらしーぞ」と言われた時
「そりゃあ良かった!」と笑顔で明るく答えていた。
いやらしく、煽情的に見えてるならよかったと。
ということは、プレイで本気で感じていたわけではなかったのでは。なんなら演技していたのかも。
痛くされ、酷くされながら突っ込まれて感じる俺。
ずっと演技だったとしたら。
そんな顔を見られてもなんとも思わない。
4年前、男たちとのプレイの最中の顔も百目鬼に見せてるし。
演技じゃない、心底快感だけででよがる自分の顔は見られたくないということかな。
百目鬼がずっと見たかった顔。
自分しか見ることができない顔。
見るよね!!
矢代の両腕と両足も百目鬼にぎゅっと絡んでしがみつく
(大しゅきホールド!!)
怒涛のセックス、ラストカットもキスしてた。
矢代が裸のままベッドにいる横で百目鬼がベッドに腰を下ろして身支度。
(お風呂は一緒に入ったのかしら。それはまだ先かー)
(シャワーも浴びずそのまま着込んだとしたらそれはそれで)
立ち上がった百目鬼は矢代に背を向けたまま「また来ます」と次の約束をする。
セックスしに?
少し間をおいて嫌味っぽく聞く矢代に百目鬼はゆっくり振り返り、矢代を見つめる。
これまでの見下すような冷ややかさはなく、穏やかな表情にまっすぐな目。
矢代の問いには答えないまま百目鬼が部屋を出て行ったあと
矢代はゆっくり煙草をくわえる。
煙草に火をつけず、視線を落とした矢代のモノローグ。
自分は矛盾している、と自覚し
(矛盾の自覚は高校時代からだけど)
酷くされたと責めておきながら
優しく扱われると途端 逃げたくなる
なのに どうしようもなく感じる
酷い扱いも酷い物言いも百目鬼にはされたくない、
優しくされたい。
でも優しくされたことがないから優しさが怖い。
怖くて振り払っておきながら、抱かれて身体が感じてよがる。
あらためて思う、矢代攻略ってハードモード過ぎる!
人は変わる生き物だが
俺については何も変わらないようで
まるで成長しない家畜だ
家畜…家畜!?
ついさっきまでの百目鬼とのことは
冷静に自分の心情を振り返っているのに
この後半のモノローグは…
視線は落としたまま。
ひとりのベッド。
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56話からずっと、
百目鬼が矢代をよく見ている。
どうしようもなく惹かれた人を自分の傍に繋ぎ止めたくて無我夢中で抱いた4年前と決定的に違うのはその目かなと。
自分がしてることに矢代がどう反応しているか、しっかりうかがっている。
前回、キスしたら抱きついてきた矢代の反応で、百目鬼は矢代を試し始めた。
身体を舌でなぞりながら下に向かい、そのままフェラ。
嫌がるどころか両腕で頭を抱え込み、身体を震わせて達した。
あれで百目鬼のスイッチが切り替わった。
自分の抱き方は間違っていない。全否定されたけどあれも噓。
ならば自分が抱きたいように抱く。
でも様子を見つつ。
今回、冒頭から顔の向きをぐりぐり変えるディープキスしてたけど、
百目鬼の両手が矢代に触れていないのが先行チラ見せでも気になってたんですよね。
身体も密着させず、浮かせてる。
これももしかして、矢代を試してたのかな。
触れない状態でキスしても、矢代は逃げも嫌がりもせず百目鬼のねちっこいキスに応えてる。
長過ぎてもういい言われたけど。
「もういい」ですよ。嫌だやめろじゃないんですよ。
兜合わせはちょっと嫌がり、「それやめろ」と言う。
これ前から何度か書いてるけど、
矢代はさんざんヤリまくって百戦錬磨みたいなこと言ってるけど、実際のところは「やらせまくってきた」んですよね。
自分が受けた性的虐待の、心と身体に受けた深過ぎる傷を、痛みを伴う性行為で覆い隠してきた。性行為を軽く扱うことで、なんでもないことだったと思い込んでいた。
チンピラやヤクザを相手にするようになったのも、加虐性が高いから。手っ取り早く痛めつけてくれて、あとくされがないから。
そんな男たちが、愛撫するとは思えない。
マジ惚れした破門の兄貴は多少したかもしれないけど。
でもていねいに乳首を舐るとか身体中なめつくすとか、ましてや後ろの穴に舌を入れるなんて百目鬼が初めてだったのでは。
(レクサスの後部座席で舌を入れられたときのモノローグで「知ってる」と言っていたけど、あれは「挿れられながら扱かれたら」という意味だと思ってる。あそこに舌入れるって相当な愛がないとできないと思うのよ)
(だから後ろの穴をなめられ、舌を入れられるとすごく嫌がる。そこが「穢れた自分」の象徴だと思っているからかも)
今回の兜合わせも、もしかしたら初めてだったかも。
乳首をなめながらブツを扱き、言葉とは裏腹に感じまくっている矢代の様子に百目鬼がアクセル踏み込む。
そのとき、矢代に突き飛ばされ、ハッとして矢代を見る。
怒りでも嫌悪でもない、怯えをはらんだ目。
矢代をじっくり観察し、手首をつかんだのは、矢代を抱き寄せようとしたのかな(個人的願望)
それを振り払われての小さなため息は
「酷くされるのは嫌と認めたけど、優しくし過ぎたかもしれない」
と切り替えたのかなと思ったんだけどどうだろう。
自分はヤリたくてしょうがない顔なんかしてないと否定したそばから快感にゆがむ矢代の綺麗な顔を間近で見る百目鬼の気持ち!
両腕両脚でしがみつく矢代を抱きながら、百目鬼は舞い上がったりしない。
同じ失敗はしない。
ようやくここまで来た。
ここから詰めていく。
…と、思ってるんだとしたら、
早々に己の女問題解決してね百目鬼。
矢代がどんだけ気にしてるか。
百目鬼が矢代を冷静に観察し、慎重に距離を縮めていっているのに対して
矢代はまだ百目鬼に素直に向き合えない。
矢代の傷が深すぎるうえに、百目鬼には女がいると思い込んでいるから。
今現在、矢代が苛まれているのは義父から受けた心身の傷よりも対百目鬼。
再会したことで、百目鬼への想いを受け入れた矢代。
なのにその百目鬼は自分に冷淡で恨んでいるように見え、その上、女もいる(ガセだけど)
愛にあふれたセックスに怯えて手離したのに、愛のかけらも感じられない『性欲処理』に傷つき、
堅気の世界で幸せになってほしいと望んでいたのに、女がいると聞けば傷つく。
これも矛盾。
「人は変わる生き物」で思い浮かべたのが
ママに寄り添い、優しく声をかける百目鬼。
『ヤリたくてしょうがない顔』を見ておきながら、それが自分だけに向けられていると思えない。
やっぱり今一番のネックは百目鬼の女問題。
まずはこの誤解を早急に解かないとダメだ(断言)
「変わらない俺」で思い浮かべたのが
影山のコンタクトケースを握りしめて泣き崩れた17歳の自分。
自分が選ばれ、愛されるわけがないと絶望したあのころから変わらないと。
それもやっぱり百目鬼の女問題の誤解を(以下同文
心も身体もめっちゃ変わってるのにな。
で、家畜?…家畜って…??
自由を奪われ飼われる家畜…?
自分なんか人間じゃないと思ってるってこと?
人間の、男たちの欲のために生き、己の肉を食わせて死ぬ…??
いやいやいや待って待って
義父の性的虐待、
手を縛られ、四つん這いでレイプされ続けていた。
動物みたいだと思ったのかも。
自由を奪われ、意思を曲げられ、蹂躙される。
となると、傷が深すぎて「家畜」から「人間」に意識を変えるのは簡単じゃない。
穢れた身体、壊れた心、価値のない自分。
そんなことないと気付かせるためには。
…百目鬼だよなあ。
「人に飼われて自由がない」という意味なら
三角さんに囲い込まれ、運命を決められそうな自分、という捉え方もあるかなと思ったけど、これもやっぱりこの状況で三角さんは違うかな。
いずれ答え合わせが来るかも。
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「ただやりたいだけ」と言って矢代を抱き、
「また来ます」と告げて帰る。
矢代もそれを拒まず受け入れた。
百目鬼は矢代に会う理由を作り上げた。
次の約束もした。
(いつとは言ってないけど翌日から毎晩通ったらいいと思うの)
また矢代の部屋に来て、矢代を抱く。
再会から5日(!)、ここまでたどり着いた。
会えばセックスするけど、セックスのためだけじゃない。
躊躇も選択ミスも許されない。
ひとつ間違えばまた逃げられる。
女問題の誤解も解かなくちゃ。
百目鬼ここが正念場。
次号でおそらく9巻がまとまるのかな。
次巻への引きが怖いなあ。
久々にふたり以外の登場人物が出てくるよね。
お仕事パートも動くよね。
つらい展開になるかも。でも楽しみ。
※最後に
兜合わせで矢代と百目鬼、ふたりのサイズがはっきり。
きっと矢代も小さくはないはず。
百目鬼が大きすぎるのね!
男前で巨根で絶倫!!