今日は初任給の日。。。 | Roll of The Dice ー スパイスのブログ ー

Roll of The Dice ー スパイスのブログ ー

稀に・・・となるかも、ですが、音楽や演劇、書籍について書きたく思ひます。

給料日に真っ先にすることは?

▼本日限定!ブログスタンプ

あなたもスタンプをGETしよう

 
真っ先に、すか?
金を下ろすのは当日ないし近日中。やっぱ家賃の振り込みスね。
 
大学生のころ、某保谷市の某東伏見駅から徒歩5-6分、和菓子屋さんの上に住んでいた。上といっても2階じゃなく、ビルをおっ建てたそれは綺麗めのアパート。
自分は三階建の3階に。東向きで、トイレはあるが風呂なしの5.5畳。
 
なぜ6畳ではなく5.5畳かというと、部屋の形が微妙に三角形だったのです。それも二等辺三角形というより直角三角形に近い。
酔っ払ってっからテキトーだけど、だいたいこんな感じ。
 
 
な、変な部屋だろ?
 
しかも、こんな狭っまい部屋なのに、入口ドアにピンポンが付いている。たまに来客がピンポン押すと腰を抜かすほどのデカい音が部屋内に響き渡って、それはそれは往生したもの。
家賃はいくらだったかな。月ニーゴーかニーナナくらい。
 
80年代前半の東京では、斯くなる三多摩もちろん都内でも、学生が住まうに風呂なしアパートが当然であった。世界初、風呂付き住居を見たのは5年生(※)のころ、後輩男子が暮らす白金台の高級マンションに行った時。
くだんの後輩くんは、あの太陽誘電の孫だった。
 
※ 我が母校に留年といふシステムはありません(でした)。規定の単位を取れなければ、ただ学年が上がるだけ。もちろん学生証には「5年生、6年生・・・」と記されるから、はあ、留年と違って4年生が「きみ、同級生だよね」などと気安く言おうものなら、さあ大変。「きさんコラ、誰に向かってもの言いようとや? 撃ち殺すぞ!」などと凄まれたもの。← 凄んだのは他ならぬワタクシです♪
 
ともあれ、くだんの東伏見のアパートメントを営む和菓子屋夫婦さん。歳のころは奥さんが40いくつでご主人が50代と見受けた。前者はちょっぴりヤンキー、もとい下町風の、昔はさぞかし美人だったろうな系。後者は柔和で、気の勝った奥さんとマイルドなご主人とのナイスバランス・コンビ。
 
家賃の払いは振り込みではなく直接持参する形も、まあよく溜めたもんだ。がはは。
 
いや溜めたくて溜めたわけではもちろん、ない。故郷の親も一所懸命仕送りしてくれてはいたが、いかんせん大東京では ー いかな田舎の保谷とは言え ー 食費を賄うだけで、さてどうかという状態。
ほかに通勤交通費でしょ教科書代でしょ、そして交際費でしょ。贅沢せずとも人間、生きていくだけでやたらと金が要るもので、むろんバイトをしまくったがなかなかに追っつかない。
 
「働けど働けど、なお我が暮らし楽にならざる。じっと手を見る」
 
とは石川啄木の有名な詩。で、家賃を払えない時ゃどうするか。
 
お金の代わりに手紙をですね、深夜、和菓子屋さんのシャッターの下から忍ばせた。「ご迷惑をおかけし、まことに申し訳ありません。じっと手を見る」つって。
 
こんないかがわしいアレをご夫婦が笑納されたかどうかは未だに判然としない。ただ、自分が30数社を回った就職活動の挙句に某社から内定をもらい、いよいよ横浜磯子のタコ部屋に移る際、挨拶に行ったら
 
「スパイス君、T社に決まったんだって? 立派な会社に決まって良かったなぁ。頑張りなよ」
 
そうご主人が。
 
・・・自分は直立不動。次いで最敬礼をしたのは言うまでもない。
 
〝Tに決まった〝と一言もいってないのになぜ和菓子屋さんがそれと知ったのか。当時は、ええ、大企業というかマトモな会社は学生を雇うにあたり、「身上調査」をふつうしていたから。
例えば学生運動・クソ左翼ではないか。あるいはヤクザ/暴力団との関わりはないか・・・から始まって、日々の行動、人柄あるいは家賃を溜めたりしてないかまで。
そこでご主人はきっと「そげなことはありまっしぇん」と、調査員に答えてくれたのだろう。
 
今はどうだか知らないが、東京下町のみならず、昔は斯くなる大人があった。さんざん迷惑かけたにも関わらず、
 
「若い者の未来を潰してはならない」
 
と、就職先の調査員に良いように言ってくれる、そんなスピリットがあった。
〝訴えるぞ〝くらい言ってもおかしくはないのに。まさにThis is 愛情である。
 
和菓子屋ご夫婦とは、自分の引け目もあってあんまり交流しなかった。ただ、自分のまさに岐路に当たって上記のごとき対応は、普段親しくせずとも心に来たのはアパートを、出て行く時のその最後。
 
もちろん溜めた家賃は清算しました。なんなら菓子折り買って、贈りました。
そこの和菓子だけれども。。。
 
爾来、給金入ると真っ先に、家賃を振り込むことにしています。払うべきものを先ず払い、あとどうするか。
 
このクソ物価高で、諸人も自分も苦労が絶えない。無理は禁物だが、できることをするしかない。
自民や維新に決して投票しないといふことを含めて。
 
いっぽう、キリストの神はこう言われる。いやクリスチャンだろうとなかろうと、全人類に。
 
「野の花がどう育つか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。
しかしはっきり言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花のひとつほどには着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。
ましてあなた方は尚更のことではないか」
(マタイによる福音書、6章28-30)
 
この物価高・アベノミクスもいつかは終わる。希望を持って、生きまっしょい。
むかしあった事は今にもある。おそらく鬼籍に入られただろうが和菓子屋ご夫婦の仕業は、今も生きる。
厳しい世の中だからこそ、せめて他人に愛情を。
 
ーーー
 
音はむかしを彷彿させる、
◆ジャクソン・ブラウン ー Fountain  of Sorrow