喜多方の、妻(丘みつ子)の実家に帰っていた福島県警二本松署の刑事・浦上(萩原健一)は、担当している事件がヤマ場を迎えたと署から連絡を受け、急きょ休暇を切り上げ二本松に戻る。
数日後、「定期観光バスで帰る」と妻から電話。峠道を走行中のそのバスはしかし、崖から80m下に転落。
乗員乗客合わせ、26人が即死。妻と幼い娘も現場から遺体で発見され、たった1人の生存者も意識不明の重体。
事故原因を調べた二本松署の鑑識は、バスの運転手が遠方から猟銃で狙撃されたことを突き止める。事故ではなくて、大量殺人事件だったのだ。
署は直ちに特別捜査本部を設置。被害者遺族の浦上だが、署長に直訴して捜査本部に加わる。
いったい誰が撃ったのか、動機は何か。バスに乗っていた27人全員を洗うしかない。
自分の妻を含めて。
『死人狩り』は1978年の12月から翌79年1月にかけ、全5回で放送されたドラマ。高2の時に毎週見ていた。
毎回エンディングは、バスの転落シーンにこの曲が被され、深く心に残っていた。
◆柳ジョージ&レイニーウッド / 雨に泣いてる
40数年ぶりに再び、某動画サイトで全5回を観た。
原作は笹沢左保。『木枯し紋次郎』同様、彼の作品には文字通り木枯しが吹く。
冬の東北・二本松。寡黙な若い刑事が、妻子の通夜にもろくに出ないで捜査を続ける。
上司の黒木係長(中村嘉葎雄)と、先輩の伊集院刑事(常田冨士男)が時に厳しく、そして温かく彼を支える。
昏睡状態だった唯一の生存者も死ぬ。彼は暴力団関係者だった。そして浦上が担当していた事件も暴力団絡み。
バスを追いかけていた、茶色の外車の目撃証言。乗客の1人(本田博太郎)は大物総会屋を殺害するためその別荘に向かっていた。くだんの総会屋には、新宿でクラブをさせてる愛人がある。
なぜ妻は、予定より1時間後のバスに乗ったのか。喜多方で、妻に会っていた男は誰か。
全員を洗わなければならない。
乗客で身元不明の4人はいずれも東京から。また、妻が会っていた男も東京在住。
舞台は二本松から東京へ。
「いよいよ行き詰まったな」
「いや、まだ1つ残ってる」
「奥さんのこと言ってんのか? 浦さん、それ考えすぎだよ」
「これはあんたが最初に言い出したことだ。これだけは、まだ残ってる」
「とにかく二本松へ帰ろう、やり直しだ」
我が妻を、しかも被害者たる妻をも疑わざるを得ない寂しさ。先の見えない捜査の行方。
監督は1話目が工藤栄一、2話目以降が田中徳三。東映/大映と違いはあれど、陰影の濃い映像を撮る。笹沢左保の原作に手練れの映像、寡黙朴訥たる浦上刑事役のショーケン。これらが相まり全編を寂寥感が覆う。
第1回の冒頭、坊さんの祈祷に合わせて流れるナレーションは、
未だ陽上がらずの世界に 別れを告げるひとつの殺意
遠い日の殺意を明日の宴に 遠い日の死を今日の喜びに
ただただ失せし者のみに 際立つ肌の波ゆきて
心喪う、今日