久方ぶりに坂口安吾を読んでます。実は全集持ってます。
「単なるエゴイズムというものは、肉慾の最後の場でも、低級浅薄なものである。自分の陶酔や満足だけをもとめるというエゴイズムが、肉慾の場に於いても、その真実の価値として高いものでは有り得ない。
真実の娼婦は自分の陶酔を犠牲にしているに相違ない。彼女達はその道の技術家だ。天性の技術家だ。だから天才を要するのだ。それは我々の仕事にも似ている。真実の価値を生むためには、必ず自己犠牲が必要なのだ」
「人のために捧げられた奉仕の魂が必要だ。その魂が天来のものである時には、決して幇間の姿の如く卑小賤劣なものではなく、芸術の高さにあるものだ。そして如何なる天才も目作の小さな我慾だけに狂ってしまうと、高さ、その真実の価値は一挙に下落し死滅する」
(『いずこへ』より)
うむ、すごく分かる。若い頃はヤリたいばっかしで相手は誰でも良かったが ー 特に野郎は ー ある年齢に達したら、いちばん気持ち良いのは愛する人と致す時。と初めて分かる。この辺男は女より子どもなのかも知れない。
好きな人には夜、もっぱら奉仕する、己が肉体的に気持ち良くなるというより、相手を満足させるのに専念。しかして自分も、精神的に愉悦する。
奉仕=己の幸せに繋がるのは、夜のアレが典型的ではございます。
・・・まあ朝にヤってもイイんだが。
これを芸術・高踏的ないし一般的に敷衍したのが安吾さん。
いっぽう氏は、とある女を語ります。
「この女は着物の着こなしの技巧などに就いて細々と考え、どんな風にすればウブな女に見えるとか、どの程度に襟や腕を露出すれば男の好色をかきたてうるとか、そしてそういう計算から煙草も酒も飲まない女であった。然しながら、この女の最後のものは自分の陶酔ということだけで、天性の自己犠牲の魂はなかった」
「裸になれば、それまでだ。どんなにウブに見せ、襟足や腕の露出の程度に就いて魅力を考えても、裸になれば、それまでのことだ。その真実の魂の低さに就いて、この女はまったく悟ることがなかった」
自分は年寄りだからか、己が裸身を見て貧弱だと思う。年寄りはしかし経験値だけは高いので、いかに化粧で誤魔化そうとも女の素顔が直ちに分かる。
「この人、剥いたら全然セクシーじゃないんだろうなあ」
つまり女も男も、ほれ、アメリカの刑務所で写真を撮られるでしょう? すっぴんで真正面に立って、なんなら裸で〝気をつけ!〝して。
俺は女を見るとき、そんな姿を想像します。するとあら不思議、千年の恋も覚めちまう。
では何が残るかというと、精神性ですね。人柄などなど。
若い時と違って、ルックス云々よりここで峻別する。もっとも、不美人より美人の方が良いっちゃ良いのだが。。。
ストーンズ『ブラック&ブルー』を聴いたのは、リリースされた1976年にリアルタイムで。くだんの安吾との繋がりは、はあ、当時付き合ってた女の子との関連だったり無かったり。
中1ん時に同じクラスで惚れました。で、クラス替えで別離した翌春、彼女の方からワタクシに告白されました。ラッキー✌️
ところが半年後、彼女は手紙を寄越しました。曰く
「家庭教師にイタズラされて、男の人が怖くなりました。なので別れます」
マジすか!
事実なら、圧倒的に犯罪である。自分中坊ながら訴訟も辞さぬ。
しかし時は1975-6年。俺はただただショックだった。当時自分は13歳、こんなこと先生にも親にも言われず、黙って受け入れるしかなかった。
◆当該アルバムより『メロディー』
『ブラック&ブルー』のブルーの方。ひたすらブルー。
さてここからが肝なんだが・・・
あれから40年経ち、Facebookを通じて氏と再会。おお、久しぶり〜。この夏帰省するけんが、博多で飲まん?
彼女はOK。
博多駅近くの、2階の飲み屋で再会。昔話に花が咲く。
互いにメートル上がって来て(メートルが上がるとは、酔いが回ってイイ調子といふ、もはや古語です)、くだんの性被害問題に話が移った。すると。。。
「あれ、実は真っ赤な嘘なんよ✌️」
えっ?
「あの時なんかめんどくさかったんよね」
マジすか!
「で、あたし、I君と付き合いたかったし実際付き合うたんよね〜」
殺すぞおまえ
◆ヘイ、ネグリータ
A子ちゃんてば黒いよなぁ。
・・・。
互いにもはや50代(当時)。そんな昔の〝うっそピー♪〝話を云々してもしょうがない。
ただ・・・
往年自分が悩み苦しんだアレはいったい何だったんでしょうか。
善意で解釈すると、彼女は事実家庭教師にイタズラされていて、それを韜晦してワタクシに嘘の上塗りしたのかも。
真実は未だにわからない。再三訊くなぞ野暮はするべくもないし。
とまれ俺は大人で良かった〜。 20代だったら、ショックのあまり死んでますもん。
しかして、な、坂口安吾って慧眼だろ? 少なくとも彼女に奉仕の精神はなかったと云ふ。。。
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最前、ストーンズの新譜について書きました。期待は今や、范文雀(半分弱)。
自分が好きなアルバムは、60年代終わりならもちろんべガーズ・バンケット。60年代初頭だと『12×5』。
70年代のステッィキー・フィンガーズや『山羊の頭のスープ』も良いが、76年には上記の思い出あってか『ブラック&ブルー』すね、やっぱし。
オープニングはHot Stuff 。
ホット・スタッフからこの曲への流れが最高だったり致します。
◆Hand of Fate
ブラック&ブルーもA子ちゃんも、なんか黒くね?
取り急ぎ。