「OK, you move to HCU from now.」
医師が言った。
HCUとは何?
サポートの人に聞いてみたが、
わからないと答える。
そりゃそうだ、そんな経験はない。と思った。
聞いたことないけど、
ICUは知っている。
よくドラマとかで出てくる、
緊急の手術とかをそこでやってるイメージだ。
入口に赤く光ったランプが使用中がついていて、
外側に家族が祈りながら待っている。
と、突然ランプが消え、医師が現れる。
家族が医師に駆け寄り
「先生!息子は大丈夫なんですか???」
「安心してください。手術は無事終わりました。
しかし、暫くは安静が必要でしょう」
のアレ。
ICUはそんな感じだけど、HCUはそれよりレベル低いけど
そんな感じなのかな?と推測。
早速調べてみようと左手でスマホを持とうとしたが、
ポロっと落ちた。
!?
拾ってもう一回、注意しながら持つ。
普通に持てる。
ちょっと左手を動かしてみる。
やっぱり痺れていて、細かい動きがしづらい。
はぁ・・・どうなってしまうんだろうか???
考えながら、HCUを調べてみる。
~~~続く
ここにきて、一層左手と左足の痺れがつよくなってきてる
と、感じてきた。
それは憤りの感情も手伝っているのだろう。
そんなことを思っていると、次の医師からの質問がきた。
「(爪楊枝を各所にあてながら)左右の感度の違いありますか?」
もはやここまで来たのなら、大げさに答えてやろうと思った。
「思いっきりあります。」
「どれくらい?違いは?」
「左の方が感度低いです。」
「右に比べて何パーセント?」
おっと何パーセントと来た。
これは答えが結構難しい。
大げさに言ってもいいけど、あまりにも低くいっても
何かされてもアレだし・・・」
「7, 70%,,,80%くらいかな」
「そうですか」
「痺れが強くなってます。」
「わかりました」
不安から、症状がいまだ進行形であることを伝えたかった。
この時点では、脳梗塞という病気の全容がわからない。
ただただ症状が進行していることが不安だ。
それを見越してなのか、どうかはわからないが、
医師が口を開いた。
「ではこれから、移動します。
HCUに。」
えっ?HCU?なにそれ?
~~~続く
あらためて左腕、左足が痺れでまともに動けなく
なったことに、焦ってきた。
なんとしても、治したい。
医師に聞く。
「痺れが強くなってきてる感じがしますけど・・・」
医師はしばらくの間答えなかったが、
口を開いた。
「今すぐどうなるものでもなりませんが、
状況はわかりました。
暫くは監視する必要があります。」
サポート人員をとおしての、答え。
医師には笑顔はなかった。
深刻なのか・・・
そうだよな・・・
と、あらためて深刻さに気付く。
脳梗塞・・・
過去に脳梗塞になった有名人は誰だった?
巨人の長嶋さんってたしかそうだよね。
あの人確か脳梗塞だったよな。
死にはぐったけど、なんとか立ち直った。
だけど右手見せなくなったな。
そういうことか。
左手をしびれながらも動かそうとしながら回想する。
俺も動けなくなるのかな・・・
ここにきて、この先あまり短くないのでは?と感じながら
まだ娘達が幼すぎることに、焦りと憤りを激しく感じ始めていた。
~~~続く
医師と看護士はカーテンを開けて中に入ってきた。
「何か変わりはない?」
よくもちょうど入って来てくれたと思った。
ここぞとばかりに言う。
「ちょっと、手足の痺れが強くなってきました。」
「どんな風に?」
「なんか、こんな感じにすると、痺れの感覚が出る。」
と言いながら、例の蓋を回す動作をする。
医師は私の腕を見るけど、特に反応しない。
「足は?」
ベッドに寝ながら足をあげて、膝から曲げる。
「この時に・・・」
医師はそのまま足を見る。しかし反応はない。
そして、例の確認が始まった。
「人差し指を鼻にあてたあと、私の人差し指にあててください。」
「目を見開いてください。」
「ベロを出してください。」
「両手をあげてください。」
「右足をあげてください。」
ここまでは難なくできた。
「左足をあげてください。」
ん?
あがらない・・・
わけではない。
でもかなり違和感がある。
踏ん張ることはできるが、
痺れのせいで何か細かい動きができなくなっている。
ここにきて脳梗塞の後遺症、
特に不都合について、
あらためて認知した。
~~~続く
尿がたくさん詰まった尿瓶を右手に持ちながら、
左手に蓋を持って閉めようとする。
左手の痺れのせいで、うまく閉めることができない。
左手は動かせて、麻痺していないことはわかっていた。
だけど、痺れが効いているのか、左手首が
円滑に回せない。
それを見ていたサポート男性が、
「やりましょうか?」と言って
助けてくれた。
「ありがとう」
と言って、ベッドに戻る。
考え込む。
なんで蓋がうまく閉めれたなかったのか?
もう一回蓋を回す動作を確かめてみる。
左手首を回そうとする。回す動作自体はできる。
しかし、痺れがあるせいか微妙な力加減ができず、
そしてある動作のある場所だと痺れが強く出て、
動きがぎこちなくなる。
今までと同じように、何も考えずに、普通に回す動作が
できなくなっている。
足も試しに動かしてみる。
ちょっと動きがおかしい。
いよいよこれは参ったぞと
いまさらながら思う。
そこに医師らしき人と看護師が伴ってきた。
~~~続く
サポート男性は俺を見て口を開く。
「尿瓶を持ちましょうか?」
えっ?
それって見られながら、もよおさなければいけないってこと?
それは・・・
と思いつつ、他の方法をこの時点では思いつかない。
そもそも脳梗塞患者で病院におり、
点滴やら心電図やらいろいろジャラジャラと体についている。
そんな状況で「トイレへ行きたい」とは言えない。
考えているうちに、尿意がやばくなってきた。
もう腹をくくるしかない。
「お願いします。」
尿瓶を持ってもらい、
自分はベッドの傍らにたち、もよおす。
その間サポート男性は明後日の方向を見ている。
溜まっていたことと、点滴が追い打ちをかけて、
結構な量が出る。
尿瓶があふれそうだ。
溢れたら、このサポート男性の手に自分の尿がかかる。
長いから、相当な量が出てるとはわかるが、
まさかあふれるとは思ってないだろう。
明後日の方向見てるから、状況はわからない。
まだ残ってるけど、止め時を見図る。
でもまた尿意をもよおしたら、またこれが待ってるのやだな。
なんて思ってたら、尿が止まった。
しかしまだ、最後のピッピッが残ってる。
これを慎重におこなわないと、サポート男性の
手に尿が飛ぶ。
いつもより弱めのピッピッを慎重にやって、
やっと終了。
「終わりました。」
尿瓶ににふたをしようとする。
そこで左手が痺れてうまく閉めることができないことに気づいた。
~~~続く
暫くの間、ご無沙汰してしまった。3か月ぶり?かな。
それというのも、10年以上住んだフィリピンとお別れして
日本に帰ってきたから。
それも家族であるフィリピン妻と幼き子供3人と一緒に。
脳梗塞がもちろん要因。
帰国してから、3か月バタバタしまくり。
10年ぶりの日本。
に、住むための手続き。
プラス、フィリピン妻の初めての日本生活
するための手続き。
幼い子供たちが
日本で住んでいく手続き。
そして両親が亡くなった後の
手続き。
これらをこなすために、バタバタが
とんでもなかった。
3か月たち、
ようやくブログを書く余裕が出てきた。
脳梗塞にな った例の小説を書き終わったら、
手続き関係のこと、書いてみようかなと思う。
そしてお金には余裕がない状態に、
「お待たせしました。」
と言いながら、サポート男性がも出ってきた。
ただ彼の手には尿瓶があった。
それをみた瞬間まさに
「!?」
の表現がまさに頭をよぎった。
「えっ!トイレ行くんじゃないの?」
の!?だ。
彼は私に尿瓶を渡す。
「はぁ・・・」
私は尿瓶を持つ。
実は尿瓶での催しは、過去1回あるが
ある人に尿瓶を渡されて、その人は
スペースから出て行ったが、
今回なぜかサポート男性がそばにいる。
「出てってくれ」
とは言いづらい。
「男なのに何恥ずかしがってんの?」
なんて思われるの嫌だし。
それも中年のおっさんが。
そもそもそんな状況じゃないでしょ?
って自分でも思う。
意を決して、尿瓶での放尿を決意する。
大の方じゃなくてよかった。朝すっきりしたところだ。
まずは寝そべりながら、
布団で隠しながら行おうとするが、
うまくいかない。
試行錯誤してたら、
サポート男性と目が合った。
~~~続く
医師が去ってから、暫くしてから看護師がアンプルを持ってきた。
そして、点滴にその薬を注入する。
「これは血の塊を失くす薬です。」
この言葉を聞いて、
やっとかと思った。ここまで長かった。
これでひと先ずは安心と思い、
タクシーに乗ってからのドキドキはようやくここで落ち着いた。
暫くベッドの上で寝ようと思った。
しかし落ち着いたからなのか、
点滴を打って水分が体内に多くなっているからなのか、
膀胱のもよおし感が強くなってきた。
今このカーテンの中には、男性の日本語サポートの人が一人いる。
彼に
「トイレに行きたいのですが」
と伝える。
「おしっこのほうですか?」
と聞かれたので、
「はい」
と答える。
暫くお待ちくださいと彼は答ええ、カーテンの外へ出て行った。
先ほどとは違う意味で落ち着かなくなっている。
「早く看護師きてくれないかな。」
と思いながらふと体をみると、心電図用のパッドがついて、
さらに点滴だけでなく、生体センサがごっつい機械に
つながっている。
「こりゃトイレのたびに外すの面倒だな」
なんて思ってると、カーテンが開いた。
看護師でなく、サポート男性が戻ってきた。
彼は尿瓶をもっていた。
~~~続く
「ここに黒いところが見れるでしょう?」
写真の脳の右側、実際には左側の頭頂部に近いところらしい。
私の目にもわかるとおり、その部分は右側と違い
黒くなっていた。
「はい、見えます。」
「これは過去に脳梗塞が起こったところです。
いつ発生したかはわかりませんが・・・」
「・・・」
「多分こちらの脳梗塞の時には、無症状だったのでしょう」
「・・・」
押し黙るしかなかった。
まさか複数回発生しているとは。
そんな予兆はあったのか、なかったのかわからない。
だって今回ですら、痺れがとれないことに違和感を感じた
だけだったから。
ここで一気にこの病気に対して、恐怖感を感じた。
この先、また発生したら今度は痺れだけですまないのでは?
俺は一体何歳まで生きることができるんだろう ?
もう10年も生きられないのか?
いろいろ頭に考えが巡る。
「まずは薬を処方します。そして病室に移動します。」
「わかりました」
医師は去っていった。