殺人の実態はどうなっているのか? 「日本の殺人」 | フォトリーディング読書感想文

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日本の殺人 (ちくま新書)/河合 幹雄

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「殺人者は凶暴なのか?」


犯罪の中で、最も罪が重いものの一つである、殺人。
本書は、殺人者を中心に、その実態と種類と数、捜査、取調べ、刑務所、出所後の生活、被害者と司法のあり方を書いたものです。


「人殺し」と聞くと、凶悪な殺人者がいるイメージがありますが、
これは、しばしばメディアなどで扱われる論議での前提となっていると感じられます。

実際の殺人事件を調べると、現実は全く違うことがわかります。


この本は、目次を見れば、一目瞭然、
殺人のことを詳しく徹底的に、もれなく網羅している内容です。


第一章 殺人事件の諸相
日本は殺人が多いか / 心中 / 子殺しの類型 / 嬰児殺は減少してきているが… / 嬰児殺の理由 / 嬰児殺と報道 / 児童虐待は増えているか / 児童虐待するのは誰か / 親子心中の詳細 / 障害児の殺害 / 重い障害児の殺害事例は少ない / 尊属殺と違憲判決 / 親が悪いか子が悪いか / 介護と親殺し / 殺人でも短期刑や起訴猶予される場合とは / 本当の凶悪事件はどのくらいあるか / 高齢者の虐待 / 配偶者、恋人間の心中 / 配偶者殺しと別れ話 / 離婚・別居と配偶者殺し / 社会的ハンディにからむ事件 / 男女関係の殺人の実相 / 被害者側の素行不良に原因がある親族間の殺人 / キレる若者あるいは突然型 / 親族による殺し方 / 世間体と殺害動機 / 放蕩者殺しの量刑は軽い / 兄弟姉妹殺しのケース / その他親族、複雑な家庭での殺人 / 複雑な事情と更生可能性 / 殺人と人間関係の濃密さ / ケンカによる傷害致死 / ケンカによる殺人 / 飲酒とケンカ殺人 / ケンカ殺人の凶器 / 銃と殺人 / ケンカする人は誰と誰か / 殺人者の職業 / ケンカ殺人が減った理由 / ケンカ殺人の量刑 / ヤクザによる殺人 / ヤクザの抗争 / 強盗殺人・強盗致死のバリエーション / 金目当ての意味するところ / 銀行強盗 / 強盗殺人・強盗致死の刑罰 / 強姦致死と強姦殺人 / 保険金目当ての殺人 / 保険金殺人の調査 / 保険金殺人の手口にパターンはあるか / 保険金殺人の数と刑罰 / 誘拐 / 誘拐殺人 / 身代金誘拐事件の歴史 / 身代金誘拐殺人は成功しない / 身代金誘拐のターゲット / 身代金誘拐殺人の量刑 / テロ組織による誘拐 / バラバラ殺人事件 / 大量殺人 / 一家皆殺し / 連続殺人 / 狭義の大量殺人 / 赤ん坊と幼児の被害者 / 猟奇事件 / 凶悪事件の真相 / 死刑が存在する影響 / 精神異常者による殺人 / 精神異常者の犯行形態 / 殺人の複雑多様さ

第二章 捜査、刑務所生活、出所後の生活
捜査 / 完全犯罪あるいは闇に消える事件 / 捜査の現実 / 警察の対応 / マスコミと捜査報道 / 逮捕とその直後 / 留置場と拘置所 / 取調べ / 裁判中の生活 / 弁護人との関係 / 刑務所のバリエーション / 刑務所生活 / 教誨師の仕事とは / 少年院での暮らし / 出獄・仮釈放後の行き先 / 保護観察の実際 / 更生可能性 / 釈放された無期刑者 / 前科者はどこに居るのか / 境界で仕切られた安全神話 / 知られざる献身 / 更正をむずかしくする地域の力の衰退 / 冷たい世間から匿名社会へ / 伝統的手法はもはや維持できない

第三章 ひとを殺すとはどういうことか
被害者は誰か / 遺族の辛さ / 被害者の正体 / 匿名社会における被害者  / メディアと被害者 / 再出発できた被害者遺族 / 死刑は殺人か / 世界の死刑 / 司法判断の存在意義 / 死刑にすべき人間 / 本当に悪いやつ / 死刑の抑止効果 / 日本における死刑 / 戦争 / 正しい殺人 / 戦争犯罪 / 核兵器使用 / 畳の上でない死 / 凶暴な殺害者 / 殺人の魅力 / 殺す「自由」 / 裁判員は殺しの実行者 / 愚かな判断を避けようとする愚かな判断 / 陪審の魅力とリスク

終章 社会的大転換の裁判員制度

まとめとして/裁判員制度と今後の日本の刑事司法/裁判員になることの意味

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■日本の殺人3ポイント

①殺人は減少している

②家庭がらみが半数以上

③社会現象が事件の要因として大きい

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心中
日本の殺人事件でのもっとも典型的なものは、心中である。社会的カテゴリーとして、男女間の無理心中はともかく、親子心中、それもとりわけ一家心中は殺人事件として理解されていない・・・・


人殺しは家族の事件が多い
殺人事件のうち、半数近くが、親族による犯行とわかる・・・・
「殺しきる」には、よほどの強い動機が必要であり、それがあるのは家族間の関係なのであろう・・・・
家族は、人の命を生み育てるところであるとともに、命を奪う可能性も持っていることである。


殺人者の職業

断然トップは「その他無職」の601人である。「主婦」が86人で、2位である。これは、家庭内殺人が大半であることを裏付けてくれる・・・・
失業率あるいは経済的豊かさと犯罪発生率が強く関係することは、世界各国で検証されている。


嬰児殺と報道
戦後社会変化のなかで、10分の1以下までに減ってしまったということは、殺す犯人の個人的な問題であるよりも、社会環境のせいで起きていたことを示していると結論してよい。80年代に入ってから現在に至るまで、殺人事件は大きく減少してきたが、その減少分の半分は嬰児殺の減少で説明できる。


殺人でも短期刑や執行猶予がされる場合とは
事件数は年間1400件ぐらい、そのうち、刑務所に入所するのは、600人余りである。殺人事件を起こしても刑務所に入らない方が多いとは驚きであろう。執行猶予付きが130から140ある。残りは裁判にかけられていない・・・・
このうち多くは、被疑者死亡と考えられる・・・・
ついて、心神喪失で不起訴が100件たらず、執行猶予が数十件たらず、起訴猶予が数十件足らず。


畳の上でない死
外因による死亡者数は、2003年、日本全国で7万5638人であった。その中で、大きなカテゴリーは、「不慮の事故」「自殺」「他殺」である。交通事故を含めた「不慮の事故死」は、3万8000人、「自殺」は3万2000人もある一方、他殺は705人である。
この705人のうち、凶悪な事件は少数である・・・・


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■自殺の多さ

人の命を守るといる観点からは、
殺人事件は重要なカテゴリーでないといいたいほどの小数です。

それに対して、
自殺は殺人の40倍以上です。
自殺は隠されているのです。
取り組むべき大問題であるにもかかわらず、その対策はほとんど聞かれません。
国は何をしているのでしょうか?



■匿名社会とメディアのあり方

統計上、以前より犯罪数は減っているのに、
極めて少数ですが、
何の落ち度もない普通の人が被害にあう事件が起きて、不安感が大きくなっています。
不安をあおるメディアのあり方が大きく影響しています。
視聴率をとるためだけの報道はやめるべきです。



■視点の違い

以前、読んだ殺人に関する本
「人を殺すとはどういうことか」、書評はブログに書きましたが、
殺人者から見た自分自身と他の殺人者の実態を書いた内容でした。

・「日本の殺人」⇒情報やデータで一般化して考えること
・「人を殺すとはどういうことか」⇒当事者の実情を掘り下げること
同じテーマでも、書く人や書き方で、伝わる内容も意味も、随分違っています。

何事も偏らない視点と考え方を持つことは大切です。



人を殺すとはどういうことか―長期LB級刑務所・殺人犯の告白/美達 大和

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