
¥1,850
Amazon.co.jp
発売日:2008年8月10日
☆☆☆☆☆
「そんなことがなぜ起きるのだろうか?」
ケニアの牧畜の民、カレジン。その人口はおよそ300万人、世界の全人口の0.05%。
陸上男子の800メートルからマラソンまでの6種競技の歴代記録10傑のうち、半分はカレジンによって占められている。
「カレジンの身体のいったいどこが、ランナーとして優れているのだろうか?」
この本は、その謎の答えを探す旅です。
2週間ほど前に、「ランナーズ」というランニング雑誌で見つけた本です。
ブログで「ランナーズ」の書評は書きました。
この本を読みました。
もっともっと深く、感動の内容です。
必読本
です。------------------------------------------
■グラスゴー・コペンハーゲン・ロンドンにて
科学者、動物生理学者とデータの解析と議論。
「遺伝子」「心肺機能」「筋肉の質」「身体的特徴」
どれをとっても決定的な違いは見つけられない。
■カプサイト・モンバサ・デルドレットにて
コーチ、選手と話す。
現地の人々の生活習慣を見る。
注目したのが、
「身体感覚」「グループ練習」「信じる精神力」
------------------------------------------
■身体感覚
練習はストップウォッチがあればなんとかなる。身体の状態なんて、機械を使わなくたって自分でわかる。感覚が大事。研ぎ澄まされた感覚が我々の強みだ。
カレジンの人々は、耐え方を知っています。だから人間の限界まで力を出せるのだと思います。どんなペースで走るのも怖れません。自分の身体の感覚だけを頼りに走っています。
■グループ練習
彼らの生まれついた性質である競争意識を殺してはいけません。そのメンタリティが彼らの速さの秘密なのです。そしてこの性質はグループで練習することによって磨かれています。個人の練習では磨かれません。
レース中に起きるかもしれないどんな状況にでも対処できるように練習している。レースのように練習している。早く走るための練習なんだから、「もっと速く走れる」と感じたらそれを試す。
■能力を信じる
カレジンは自分たちの走る能力を信じている。それは通学のときなど日常の生活で長い距離を歩いたり走ったりしているからだ。
カレジンランナーを走らせているのは、自然に備わった彼らのメンタリティだ。練習すれば早く走れると思える。だれかにできるのなら自分にもできると信じられる。そういう思考が土台にある。
多様なペースへの適応力を鍛えていることになります。走るんだ、先頭を走るんだ、先頭を走り続けられればレースに勝てるんだ、というふうに考えている。彼らにとってはそれが自然なのです。
------------------------------------------
イタリア人のケニアコーチであるカノーバの言葉です。
■「ヨーロッパのランナーはコーチを必要としています。いろいろなことを教えて、一緒にいてくれる存在を求めます。しかしケニアは違います。生き方が違うのです。赤ん坊は自分で立ってドアを開けられるようになったら、赤ん坊として母親に面倒を見てもらう時期は終わりです。あとは母親から離れて、コミュニティの中の子供集団の中に入れられて育ちます。5歳になったら、どこへ行って何をするかは子供が自分で判断します。道に迷って死んでしまっても子ども自身の責任。・・・・・だから、走ろうという意思を持ったら、彼らはどこまでも走ります。誰かに教えてもらおうなんて発想は存在しないのです」
育ってきた環境・・・・とよく言われますが、ケニアの自立した精神は、マラソンだけではなく、人としての甘えのない、本来の強さであると感じます。
■「ケニアの人たちは、一人ひとりの才能の違いはほとんどないと思っています。持っている才能はみんな同じだ、と。だから、彼に走れるのなら、自分にも走れると、自然に思っているのです。でも、私にはそんなふうには思えません。ある人は才能を持っていて、ある人は持っていない。そういうふうに考えるはずです。あなたは違いますか?」
ランニングで豊かな生活を手に入れようとする経済的な動機でさえ、後から付け足されたように思えます。身体の特徴や暮らしぶりはランニングの技術的な側面を補強する枝葉に過ぎないのです。
■「私は個人主義者です。一人ひとりの人間を信じています。白人とか、黒人とか、若者とか、老人とか、そういうふうに集団を色分けすることは下らないと思います。外見にとらわれることは人種差別の入り口です。ケニアの山村に行くと、私を見た赤ん坊は大泣きをします。見せかけの違いを怖れているのです。大人はどうでしょうか。異なる考え方を理解するといることは、知らない何かを学ぶことです。日本人のあなたは、きっと私が知らないことを知っているはずです。心を開かなければなりません。知性のある大人にはそれができます」
大切な教えが書かれています。
心が動きました。
■「優れた農夫も、そうでない農夫も、自分の土地しか耕せない。つまり、そんなことを考えてもしかたがないんだ。持っているもので、できるだけのことをやるしかないのさ」
カレジンのことわざです。
何事にも、特別な才能は必要ないのかもしれません。
才能の違いは一人ひとりの個性の中にあるのです。
カレジンの速さの秘密は、彼らのメンタリティの中にあるのです。
目次
第1章 グレートリフトバレー—プロローグ 略奪者カレンジン
第2章 グラスゴー—遺伝子狩りと科学者の夢
第3章 コペンハーゲン—運動生理学者の葛藤
第4章 ロンドン—科学とスポーツ
第5章 カプサイト—キャンプという独特の仕組み
第6章 モンバサ—彼らが走る理由
第7章 エルドレット—競争心にあふれたメンタリティー
第8章 東京—エピローグ 謎解きの行方