(「伝説的なステージ」、1966年10月の、オランピア劇場での「さよなら公演(アデュー・オランピア)」からの映像で、前曲、「le plat pays "平野の国"」から引き続き歌われます。この曲「Madeleine "マドレーヌ"」は、「ラストの定番曲」であり、このライヴでも、当然、「最後を締めくくる曲」となりました。この「記録映像」は、最後の「あいさつ」まで収録されています)

(1965年4月、ベルギーのテレビ放送からの映像です。ここでも、この曲は「ラスト」でした)

(1964年10月の、オランピア劇場公演でも、もちろん「ラスト」です)

(1963年7月、ベルギーのリゾート地、クノックで開催された、音楽コンクールの「ゲスト・ライヴ」の映像からです。ここでもやはり、この曲は「ラスト」となっています)

(この曲が発表された、1961年10月のオランピア劇場公演では「中盤」で歌われていました。「アナログ盤」で言うと、「B面の最初の曲」が、この「Madeleine "マドレーヌ"」で、「ラスト以外」なのは、逆に「大変珍しい」とも、現在では言うことが出来ます。ブレルはこの翌年、「バークレー社」へ移籍しており、結局、フィリップス社では、スタジオ録音が行なわれませんでした)

(このジャケット写真は、上掲の「オランピア1961」の「オリジナル・ジャケット」となりますが、ここに聴くのが、「スタジオ録音盤」となります。フィリップスから、バークレーへ移籍した直後の、1962年3月9日に録音されたものですが、「この録音」のみ、第3節と最終節の、「歌詞の順序その他」が異なっているという、「珍現象」が起きています)

(大変「珍しい」、発表当時の「カラー映像(のMV)」です(他に、「Rosa "ローザ"」も、「カラー」のMVが撮影されました)。ただし、音源は、「レコード」からとっているため、「歌詞の順序」は、「レコードのまま」となっています)

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12409744292.html(前回の記事)

https://ameblo.jp/daniel-b/theme-10096189787.html(これまでの記事)

 

今年は、シャンソン界の「3大巨匠」の1人、ジャック・ブレル(1929-78)の「没後40周年」(「10月9日」が「命日」)、来年は、「生誕90周年」(「4月8日」が誕生日)という「記念の年」に当たります。

 

今回紹介する曲「Madeleine "マドレーヌ"」(1961-62)は、ブレル自身も、もう、「何回歌った」か分からないくらい歌っていることでしょう。ライヴの「ラストの定番曲」として、基本的には、「外されることのなかった」曲だとも言えます(ごく一部の「例外」を除いて)。

 

そのため、この曲も、「ブレルのテーマ曲」のような感じで、堂々と、「代表作」の1つに挙げることが出来ると思います。何しろ、「ステージ」で「大活躍」した、「中期」全体を通して歌われた曲と言うことが出来るのですから...(これに続くのが、「le plat pays "平野の国"」でしょう...)。

 

ブレルは、1962年3月、それまでのレコード会社フィリップスを離れ、バークレー社に移籍しますが、この曲「Madeleine "マドレーヌ"」も、その時に録音されたものの1つです(3月9日録音)。ただし、この作品を含む6曲は、先に、前年10月のオランピア劇場公演において「創唱(発表)」されており、その「ライヴ録音」は、当時のフィリップス社の音源ですが(現在は、音楽部門の「廃止」により、レーベルが「消滅」したため、ブレルの場合、「バークレー・レーベル」に「統一」されています)、「スタジオ」での録音は「公演の後」ということになったため、結局、フィリップス社では、録音されることがありませんでした。

 

この「バークレー」での「第1号レコード」、「les bourgeois "ブルジョワの嘆き"」(現在の「通称」)は、12曲収録の「30cmLP」がまず発売され、その直後に、8曲収録の「25cmLP」も続けて発売されました。当時はまだ、この両規格が「混在」していた時代です(現在、「CD」でも発売されているバージョンは、もちろん、「30cmLP」のものです)。

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12366691526.html?frm=theme(参考:「平野の国」の記事)

 

この「Madeleine "マドレーヌ"」は、先述のように、1961年10月のオランピア劇場公演で発表されたのがその「始まり」です。詞はブレル自身が書き、曲は、ジェラール・ジュアネスト(1933-2018)、ジャン・コルティ(1929-2015)との「共作」となります。

 

作曲者の1人であるジャン・コルティ(アコーディオン)の「ソロ」による「Madeleine "マドレーヌ"」です(2007年6月11日の映像ですが、会場は、あの「バタクラン劇場」だということです...)。

 

この作品で歌われている「マドレーヌ」とは、「実在の人物」であると言われています。

 

彼女、「マドレーヌ」(1938-2007)は、ブレルの近しい友人の1人で、ジョルジュ・ブラッサンス(1921-81)によって紹介されたということですが、当時、彼女は、パリで、美容師向けの「モデル」をしていたそうです。そのこともあってか、サンジェルマン・デ・プレにて、詩人や芸術家などと、多くの「付き合い」があったようですが、彼女は1回、ブレルとの「デートの約束」を「すっぽかし」てしまったことがあったそうです。このことが、このシャンソン「Madeleine "マドレーヌ"」に歌い込まれているのだと言います。

 

また、もう1人の「マドレーヌ」は、ブレル自身も「客」だったという、ブリュッセルの「生花店主」だったと言います。彼女も、若い頃に「モデル」だったことがあり、店に飾られていた、その一連のポートレート(「リラの花に囲まれた」写真だったそうです)にインスピレーションを受けたということです。

 

ブレルは、この曲についてこう語っています。

 

「マドレーヌ、それは"女性"ではありません...マドレーヌ、それは"待つ"という行為で、私が好まないことです。..."マドレーヌ"、それは"神"かも知れませんし、"幸運"かも知れないし、何でも良いのです...」

 

「果たされることのない約束」。

 

これがこの作品の「テーマ」であり、これは、後の作品「les bonbons "ボンボン"」(1964)などでも見られるのですが、「la Fanette "ファネット"」(1963)(2016年4月20日付けにて紹介。上掲のリンクよりアクセス出来ます)のような、「悲恋」という結末には至らず、最終節では「希望」の「明るい光」が差し込んでも来ます。

 

この曲で「象徴的」なのが、やはり「アメリカ」の存在でしょう。「マドレーヌ」は、「僕にとってのアメリカ」とはっきり歌われているように、ブレルにとっても、「自由の国アメリカ」、「エンターテイナーの国アメリカ」は、やはり、「憧れ」だったと言えるのです(「曲」も、明らかに、「アメリカ」を意識して書かれています)。このことは、1964年の作品「Jef "ジェフ"」(昨年3月8日付けにて紹介)でも言えることですが、それが、「最晩年」の作品「voir un ami pleurer "泣く友を見ることは(涙)"」(1977)(昨年1月20日付け)ともなると、「(「素晴らしかった」、かつての)アメリカはもうない」と歌われてしまっているのです...。

 

さて、ここで、この曲が使用された、フランスのフィギュアスケート選手、ブライアン・ジュベール(1984-)の演技をご覧いただきましょう。

やはり、ブレルの「没後30周年(2008)/生誕80年(2009)」を記念してのことだと思われますが、このシーズン、彼は、「エキシビション」用にこの曲を選んでいます。

 

「クラシック版」、「l'Univers Symphonique "交響的宇宙"」からの「Madeleine "マドレーヌ"」です。

 

「Madeleine "マドレーヌ"」と言えば、やはり「アメリカ」。今回も、ブロードウェイ・ミュージカル「Jacques Brel is alive and well and living in Paris」(1968)からのワンシーンを載せておきましょう(モート・シューマンら、「オリジナル・キャスト」の音源は見当たりませんでした)。

 

今回、最初に載せている、1966年10月の「さよなら公演(アデュー・オランピア)」の映像では、前曲の、「le plat pays "平野の国"」(1961-62)から収録されています。最初に書いた通り、ステージでは「最も長く」歌われ続けた2曲による「フィナーレ」であり、恥ずかしながら、私自身も、ようやく、この曲順の「意味」を「理解」することが出来ました...。

 

明日、マドレーヌを待とう

映画に行くんだ

それから何度も「ジュ・テーム(愛してる)」と言おう

マドレーヌは、その言葉がとても好きだろうから...

 

明るく、「開かれた」終わり方です。こうして、「約50分」のプログラムは終わり、「quand on n'a que l'amour "愛しかないとき"」(1956)のインストゥルメンタルが流れます。本当に「これが最後」という、「厳粛」な気分にさせられます。思えば、この「quand on n'a que l'amour "愛しかないとき"」は、ブレルの「出世作」であり、オランピア劇場公演では、「フィナーレ」として、必ずこの曲が流されていました。言わば、「ブレルの歴史」そのものが、この「フィナーレ」に「凝縮」されているのです。そのように聴いてみると、これまで聴いて来られた方でも「再発見」があることだと私は思います。

 

その後、「ガウン姿」で挨拶をするところまで収録されています。

 

je m'en remercie...parce que cela justifie quinze annees d'amour

j'en remercie

(ありがとうございます...15年間の愛は証明されました。そのことに感謝します)

 

舞台の「裏」では、劇場支配人、ブリュノ・コカトリクス(1910-79)や、マネージャー、シャルリ(チャーリー)・マルアニ(1926-2017, ちょっと、「ミシェル・デルペッシュ」に似ている...)、秘書で親友の「ジョジョ(ジョルジュ・パスキエ)」(1924-74)、バークレー社社長エディー・バークレー(1921-2005)も映っていますね。「さすが」です...。

 

それでは以下に、「Madeleine "マドレーヌ"」の歌詞を載せておくことにいたしましょう。

 

ここでは、実際に、「ステージ」で歌われていたバージョンで、掲載することにします。

1961年に、初めて歌われたバージョンも「これ」だと言えるのですが、なぜか、翌年3月の「移籍後初のレコード」では、「歌詞の順序」その他が「変更」となっています。「第3節」では、(*)の部分が入れ替わり、「最終節」では、(**)の部分が、「第3節」の「いとこのガスパール」になっています。しかし、これにもかかわらず、ブレルは、ステージでは、「元のまま」歌い続けました。「le plat pays "平野の国"」の件もありますし、このアルバムは、本当に、「謎」が多いと言えますね。

 

10月9日は、いよいよ、ブレルの「命日」です。

 

それではまた...。

 

..........................................................................................................................................................................................

 

Madeleine  マドレーヌ

 

ce soir j'attends Madeleine

j'ai apporte du lilas

j'en apporte toutes les semaines

Madeleine elle aime bien ca

ce soir j'attends Madeleine

on prendra le tram trente-trois

pour manger des frites chez Eugene

Madeleine elle aime tant ca

Madeleine c'est mon Noel

c'est mon Amerique a moi

meme qu'elle est trop bien pour moi

comme dit son cousin Joel

mais ce soir j'attends Madeleine

on ira au cinema

je lui dirai des "je t'aime"

Madeleine elle aime tant ca

 

今夜、僕はマドレーヌを待っている

リラの花を持って来た

毎週持って来ているんだ

マドレーヌはリラ(そうすること)が好きだから

今夜、僕はマドレーヌを待っている

33番のトラム(路面電車)に乗って

ウジェーヌの店のフリット(フライドポテト)を食べに行くんだ

マドレーヌは、それがとても好きだから

マドレーヌ、それは僕の「クリスマス」

僕にとっての「アメリカ」

僕にはもったいないくらいの娘

彼女のいとこのジョエルが言うように

でも、今夜、僕はマドレーヌを待っている

映画に行くんだ

それから何度も「ジュ・テーム(愛してる)」と言おう

マドレーヌは、その言葉がとても好きだから

 

elle est tellement jolie

elle est tellement tout ca

elle est toute ma vie

Madeleine que j'attends la, la

 

彼女はとても美しい

彼女は僕のすべて

彼女は僕の人生そのもの

マドレーヌを、僕はここで待っている

 

ce soir j'attends Madeleine

mais il pleut sur mes lilas

il pleut comme toutes les semaines

et Madeleine n'arrive pas

ce soir j'attends Madeleine

c'est trop tard pour le tram trente-trois

trop tard pour les frites d'Eugene

Madeleine n'arrive pas

Madeleine c'est mon horizon

c'est mon amerique a moi

meme qu'elle trop bien pour moi

comme dit son cousin Gaston

mais ce soir j'attends Madeleine

il me reste le cinema

je pourrai lui dire des "je t'aime"

Madeleine elle aime tant ca

 

今夜、僕はマドレーヌを待っている

でも、僕のリラに雨が落ちている

毎週のように雨が降っている

そして、マドレーヌは来ない

今夜、僕はマドレーヌを待っている

33番のトラムに乗るには遅すぎる

ウジェーヌのフリットを食べに行くにも遅すぎる

マドレーヌはやって来ない

マドレーヌ、それは僕の「地平線」

僕にとっての「アメリカ」

僕にはもったいないくらいの娘

彼女のいとこのガストンが言うように

でも、今夜、僕はマドレーヌを待っている

まだ映画が残ってる

まだ、「ジュ・テーム」を言うことは出来るはず

マドレーヌは、その言葉がとても好きだから

 

elle est tellement jolie

elle est tellement tout ca

elle est toute ma vie

Madeleine qui n'arrive pas

 

彼女はとても美しい

彼女は僕のすべて

彼女は僕の人生そのもの

マドレーヌはやって来ない

 

ce soir j'attendais Madeleine

mais j'ai jete mes lilas

je les ai jetes comme toutes les semaines

Madeleine ne viendra pas

ce soir j'attendais Madeleine

(*)tiens le dernier tram s'en va

on doit fermer chez Eugene(*)

Madeleine ne viendra pas

Madeleine c'est mon espoir

c'est mon Amerique a moi

mais sur qu'elle est trop bien pour moi

comme dit son cousin Gaspard

ce soir j'attendais Madeleine

(*)c'est fichu pour le cinema

je reste avec mes "je t'aime"(*)

Madeleine ne viendra pas

 

今夜、僕はマドレーヌを待っていた

でも、リラの花も捨ててしまった

毎週のように捨てている

マドレーヌはもう来ないだろう

今夜、僕はマドレーヌを待っていた

(*)ああ、最終のトラムも行ってしまった

ウジェーヌの店も閉まったに違いない(*)

マドレーヌはもう来ないだろう

マドレーヌ、それは僕の「希望」

僕にとっての「アメリカ」

確かに、僕にはもったいないくらいの娘

彼女のいとこのガスパールが言うように

今夜、僕はマドレーヌを待っていた

(*)映画も「おじゃん」だ

僕の「ジュ・テーム」だけが残った(*)

マドレーヌはもう来ないだろう

 

elle est, elle est pourtant tellement jolie

elle est pourtant tellement tout ca

elle est pourtant toute ma vie

Madeleine qui ne viendra pas

 

彼女は、それでも彼女はとても美しい

それでも彼女は、僕のすべて

それでも彼女は、僕の人生そのもの

マドレーヌはもう、来ないだろう

 

mais demain j'attendrai Madeleine

je rapporterai du lilas

j'en (r)apporterai toute la semaine

Madelene elle aimera ca

demain j'attendrai Madeleine

on prendra le tram trente-trois

pour manger des frites chez Eugene

Madeleine elle aimera ca

(**)Madeleine c'est mon Noel

c'est mon Amerique a moi

tant pis si elle est trop bien pour moi

comme dit son cousin Joel(**)

demain j'attendrai Madeleine

on ira au cinema

je lui dirai des "je t'aime"

et Madeleine elle aimera ca...

 

でも、明日も、マドレーヌを待とう

またリラの花を持って行こう

一週間、ずっとそうしよう

マドレーヌはリラ(そうすること)が好きだろうから

明日も、マドレーヌを待とう

33番のトラムに乗って

ウジェーヌの店のフリットを食べに行くんだ

マドレーヌは、それが好きだろうから

(**)マドレーヌ、それは僕の「クリスマス」

僕にとっての「アメリカ」

仕方がないけれど、僕にはもったいないくらいの娘

彼女のいとこのジョエルが言うように(**)

明日、マドレーヌを待とう

映画に行くんだ

それから何度も「ジュ・テーム(愛してる)」と言おう

マドレーヌは、その言葉がとても好きだろうから...

 

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(daniel-b=フランス専門)