(「伝説的なステージ」、1966年10月の、オランピア劇場での「さよなら公演(アデュー・オランピア)」での「絶唱」です。この曲の「前」が「Mathilde "(いとしの)マティルド"」、この曲の「次」が「Amsterdam "アムステルダム"」で、「中盤」に「クライマックス」が来ていると言うことも出来ます。「ドラマ性」が感じられる、「演劇的」な名唱です)

(こちらは、「直後」の、11月10日のテレビ、「Palmares des chansons(歌のヒットパレード)」からの映像です。声には「疲れ」も感じられますが、この歌唱も大変「ドラマティック」です)

(こちらが、オリジナルの「スタジオ盤」で、1965年11月6日に録音されたものです)

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12408614335.html?frm=theme(前回の記事)

https://ameblo.jp/daniel-b/theme-10096189787.html(これまでの記事)

 

今年は、シャンソン界の「3大巨匠」の1人、ジャック・ブレル(1929-78)の「没後40周年」(「10月9日」が「命日」)、来年は、「生誕90周年」(「4月8日」が誕生日)という「記念の年」に当たります。

 

今回紹介する曲「ces gens-la "あの人たち"」(1965)は、もはや、「シャンソン」の域を「超えている」作品であるといえ、一種の「戯曲」であり、その後の「ロックオペラ」の「先駆け」となる作品であるとも言える「大傑作」です。

 

4日前に録音された、前回紹介の「(la chanson de )Jacky "ジャッキー"」らとともに、「1965年の新曲」として、「シングル」、「アルバム(25cmLP)」の両方でリリースされました。翌年6月には、「Mathilde "(いとしの)マティルド"」など、1964年発表の曲も加わり、全10曲収録の「30cmLP」(現在でも残る、アナログの「標準規格」であると言えます)として再発売されましたが、このレコード(バークレー「80.323」)が、現在、「CD」でも発売されているバージョンです。

 

私は、「小学6年生」の時に初めてブレルを知り、その翌年には、初めての「(ブレルの)レコード」も手にしました。また、この、「ces gens-la "あの人たち"」から始まる「30cmオリジナル盤(フランス盤)」は、その後、東京の有名中古レコード店に、初めて「通販」を申し込んで手に入れた、「思い出のレコード(初めて手にした「輸入盤」がこれでした)」でもあるのです。

 

この曲、「ces gens-la "あの人たち"」は、ブレル自身の詞・曲による作品です。ここで歌われているのは、「ある家族」です。当時、アコーディオンを担当していたジャン・コルティ(1929-2015)によれば、「ブレルは、たぶん、"実在の家族"から着想を得た」とのことですが、それにしても、「遠慮なく」、「リアル」に描き切る、その「観察眼の鋭さ」は、やはり、ここでも「光っている」と言えるでしょう。

 

とにかく「酔っぱらい」の「ダメ」な長男、「金持ち気取り」の「俗物」な次男、「滑って死んだ」父親、「使徒」のような母親、「お金を貯めこんでいる(に違いない)」祖母、と、「カリカチュアライズ」された「一家」の物語です。

 

この歌の「視点」は、この家族を「見つめ」、「世間話(会話)」の形で歌う、「ブレル本人」のものとなっており、言うまでもなく、「彼自身」が「主人公」です。

 

言わねばなりませんや、旦那

あの連中のところでは

考えてやしません、旦那

考えては...お祈りしているんで

 

「前半」3節の、それぞれの「最後」のところで、ブレルはチクリと、「皮肉」を言います。

けっこう「強い」表現で、「辛辣さ」を感じますが、いかにも「1960年代風」という感じもします。そして、これだけの「インパクト」を与えているだけに、「後半」が、なおいっそう、「盛り上がる」のだとも言うことが出来るのです。

 

これまで、「あの人たちの家」の話をして来た「主人公」ですが、それもそのはず、「そこ」には、同時に、愛する「フリーダ」も住んでいるのです!!

 

前半の「緊張感」が、ここで一気に「解き放たれ」て、「爆発」します。「主人公」の「感情」が、「そのまま」描かれているため、その曲の「動き方」も実に「リアル」で、まさに、「オペラ」の1曲を聴いているかのようです。ミシェル・ベルジェの「スターマニア」に先立つこと「13年」。「劇(物語)風」のシャンソンは数多くあれど、ここまで「演劇性」を「意識した(感じさせる)」作品は、そう多くはありません。従来のシャンソンの「伝統」を、「さらに一歩先に進めたもの」と言うことが出来ると思います。

https://ameblo.jp/daniel-b/theme-10095603016.html(参考:「スターマニア」がテーマの記事一覧)

 

そのため、この作品は、「音域の広さ」はもちろんのこと、ストーリーを「正しく再現」させてみせる、「高度な技術」が「必要」となります。それはまさに、「オペラの精神」そのものです。この曲を「歌う」ことが「出来る」アーティストは、当然、「絞られてくる」と思います。

 

オリジナルの「凄さ」ゆえに、かつては、カバーも「敬遠」されたというブレル。この、フローラン・パニー(1961-)が歌うバージョンはどうでしょうか...。

 

アダモ(1943-)が歌うのは、ひょっとして「大変珍しい!?」

出身は、イタリアのシチリア島ですが、現在は、ベルギーの首都、ブリュッセルの近郊に在住ということで、ブレルと同じく、「ベルギーのアーティスト」ということになっています。

 

さて、「ces gens-la "あの人たち"」と言えば、このグループは挙げておかなくてはいけないのではないでしょうか。「フレンチ・プログレッシブ・ロック」を「代表」する「偉大」なグループであり、「ロック・テアトル(シンフォニック・ロック)の祖」とも言える、「アンジュ」です。

 

実は私も、このグループの存在は、かなり以前から知ってはいたものの、こうして実際のパフォーマンスを「見聞き」するのは、今回がたぶん「初めて」です。いや、「強烈」ですね...。

 

こちらが「オリジナル盤」(1973)です。

 

「ノワール・デジール」も、「フランスのU2」と呼ばれた、人気ロック・バンドです。

 

このように、ブレルは、「ロック世代」にも、本当に「大きな」影響を与えたということでも「特筆」されるアーティストだと言えます。

 

最後に、「オランダ語で歌われるブレル」ということで、たびたび記事中に採り上げている、オランダの名歌手、リースベト・リスト(1941-)による歌唱を見つけましたのでぜひどうぞ。

 

それでは以下に、「ces gens-la "あの人たち"」の歌詞を載せておくことにいたしましょう。

 

先述のように、この歌詞は、とても「辛辣」なところがあります。しかし、「芸術的価値」という観点から、出来るだけ、原詞のニュアンスに近い訳語を用いていますので、どうかご了承ください。

 

それではまた...。

 

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ces gens-la  あの人たち

 

d'abord, d'abord, y a l'aine

lui qui est comme un melon

lui qui a un gros nez

lui qui sait plus son nom

Monsieur tellement qui boit

ou tellement qu'il a bu

qui fait rien de ses dix doigts

mais lui qui n'en peut plus

lui qui est completement cuit

et qui se prend pour le roi

qui se saoule toutes les nuits

avec du mauvais vin

mais qu'on retrouve matin

dans l'eglise qui roupille

raide comme une saillie

blanc comme un cierge de Paques

et puis qui balbutie

et qui a l'oeil qui divague

faut vous dire Monsieur

que chez ces gens-la

on pense pas Monsieur

on pense pas, on prie

 

まず...まず長男がいる

メロンのようなやつ

でかい鼻をして

もう、自分の名前すら分かんないんですよ

旦那、あまりにも飲み過ぎる

いや、こんなにも飲み過ぎたんで

自分の10本の指すら使おうとしない

もうすっかりダメになり

ぐでんぐでんになって

王様にでもなったようなつもりでいる

品の悪い(まずい)酒で

毎晩酔っぱらっている

でも、朝には見つかる

教会で眠っているのが

でっぱりのように硬くなり

復活祭(イースター)のろうそくのように白く

その上ろれつが回らない

眼は当て所もなくさまよう

言わねばなりませんや、旦那

あの連中のところでは

考えてやしません、旦那

考えては...お祈りしているんで

 

et puis y a l'autre

des carottes dans les cheveux

qu'a jamais vu un peigne

qu'est mechant comme une teigne

meme qu'il donnerait sa chemise

a des pauvres gens heureux

qui a marie la Denise

une fille de la ville

enfin d'une autre ville

et que c'est pas fini

qui fait ses petites affaires

avec son petit chapeau

avec son petit manteau

avec sa petite auto

qu'aimerait bien avoir l'air

mais qui a pas l'air du tout

faut pas jouer les riches

quand on n'a pas le sou

faut vous dire Monsieur

que chez ces gens-la

on ne vit pas Monsieur

on ne vit pas, on triche

 

それから...もう1人のやつ

ニンジンのような赤毛で

くしなど見たこともなく

蛾のように不愉快なやつ

たとえ貧しくても、幸せな連中に

そのシャツを恵んだのだとしても

ドニーズ嬢と結婚したやつ

都会の女と

それも結局、他の街の女でさあ

それで終わりじゃない

コチョコチョ(つまらない)仕事をするやつ

小さな帽子で

小さなコートで

小さな車で

偉そうに見せようとしても

全然、そんな風に見えないんで

金もないのに

金持ちぶるもんじゃありませんよ

言わねばなりませんや、旦那

あの連中のところでは

生きているんではないんで、旦那

生きているんでは...ごまかしているんで

 

et puis y a les autres

la mere qui ne dit rien

ou bien n'importe quoi

et du soir au matin

sous sa belle gueule d'apotre

et dans son cadre en bois

y a la moustache du pere

qui est mort d'une glissade

et qui regardent son troupeau

bouffer la soupe froide

et ca fait des grands flchss

et ca fait des grands flchss

et puis y a la toute vieille

qui en finit pas de vibrer

et qu'on attend qu'elle creve

vu que c'est elle qui a l'oseille

et qu'on n'ecoute meme pas

ce que ses auvres mains racontent

faut vous dire Monsieur

que chez ces gens-la

on ne cause pas Monsieur

on ne cause pas, on compte

 

それから...他の連中

おふくろは何も言わない

あるいは、何でもしゃべっている

晩から明け方まで

使徒のような表情で

そして、木製の額縁の中では

滑って死んだ

おやじのひげが

家族の連中を見ている

冷たいスープをすすっているのを

大きな音で、シュルルルルと...

大きな音で、シュルルルルと...

それから...おばあさん

震えが止まらない

みんなが彼女の死を待っている

ため込んでいるのを知っているから

連中は聞こうともしない

その哀れな手が物語っているのを

言わねばなりませんや、旦那

あの連中のところでは

話をしているんじゃないんで、旦那

話をしているんでは...金勘定をしているんで

 

et puis et puis

et puis y a Frida

qui est belle comme un soleil

et qui m'aime pareil

que moi j'aime Frida

meme qu'on se dit souvent

qu'on aura une maison

avec des tas de fenetres

avec presque pas de murs

et qu'on vivra dedans

et qu'il fera bon y etre

et que si c'est pas sur

c'est quand meme peut-etre

parce que les autres veulent pas

parce que les autres veulent pas

les autres ils disent comme ca

qu'elle est trop belle pour moi

que je suis tout juste bon

a egorger les chats

j'ai jamais tue de chats

ou alors y a longtemps

ou bien j'ai oublie

ou ils sentaient pas bon

enfin ils veulent pas

enfin ils veulent pas

parfois quand on se voit

semblant que c'est pas expres

avec ses yeux mouillants

elle dit qu'elle partira

elle dit qu'elle me suivra

alors pour un instant

pour un instant seulement

alors moi je la crois Monsieur

pour un instant

pour un instant seulement

parce que chez ces gens-la

Monsieur on ne s'en va pas

on ne s'en va pas Monsieur

on ne s'en va pas

mais il est tard Monsieur

il faut que je rentre chez moi...

 

それから...それから...

それからフリーダがいる

彼女は太陽のように美しく

私がフリーダを愛しているように

彼女も私を愛してくれている

しかも、しばしば話し合っている

家を持とうと

たくさんの窓があって

壁がほとんどない家を

その中で暮らせば

さぞかし気持ちが良いだろうと

でも、自信が持てないのは

やっぱりたぶん

他の連中が望んじゃいないから

他の連中が望んじゃいないから

連中はこう言う

彼女は、私にはもったいないくらい美しいと

私は、猫をむごたらしく殺すぐらいが

ちょうどいいのだと

私は猫など殺したことはない!!

それとも、はるか昔のことか...

すっかり忘れてしまったのか...

それとも、匂いが良くなかったのか(または、「彼らは快く思っていなかったのか」)

とにかく、連中は望んじゃいないんで

とにかく、連中は望んじゃいないんで

時折り、2人で会う時

何でもないように

うるんだ瞳で

「私は家を出ます」と

「あなたについて行きます」と彼女は言う

そうすると、ほんの一瞬

ほんの一瞬の間だけ

私は、ちょっと「本気」にするんでさあ、旦那

ほんの一瞬

ほんの一瞬の間だけ...

なぜって、あの連中のところではさあ、旦那

家出はしないんで...

家出はしないんでさあ、旦那

家出しないんで...

でも、もう、夜も遅いんでさあ、旦那...

私は帰らにゃなりませんや、自分ちへ...

 

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(daniel-b=フランス専門)