(「オリジナル録音」。公式の「MV」です)

(アルバムサイズの「ロングバージョン」です)

(「テレビ番組」出演の映像です)

(こちらは、「妻」であった、フランス・ギャルによる歌唱。ベルジェの死後、彼女もこの曲をレパートリーに加えました)

(同じく、フランス・ギャル。こちらは、1993年9月、「パレ・オムニスポール・ド・パリ・ベルシー(現「アコーホテルズ・アリーナ)」での公演からです)

さて、「8月2日」は、フレンチポップの「大御所」とも言える、ミシェル・ベルジェ(1947-92)の「命日」です。昨年は、「没後25周年/生誕70周年」という「ダブル・アニヴァーサリー」に当たっていたことから、その作品をいくつか紹介して来ましたが、まだまだ「不充分」と思っていた矢先に、「妻」であったフランス・ギャル(1947-2018)までもが、この世を去ってしまうことになってしまいました(1月7日)。

 

今年の「命日」は、フランス・ギャルすらも「いない」という「寂しさ」を感じますが、まさに、そうした「寂しさ」が感じられるアルバムから、「珠玉の名作」とも言える作品2曲を、今回と次回の2回にわたって紹介していきたいと思います。

https://ameblo.jp/daniel-b/theme-10097776129.html(これまでの記事一覧)

https://ameblo.jp/daniel-b/theme-10095603016.html(テーマが「スターマニア」の記事一覧)

 

今回と次回紹介する曲は、ともに、ミシェル・ベルジェの「ソロ」名義としては「最後」となった、1990年5月発売の傑作アルバム「ca ne tient pas debout "理屈に合わない"」からの「名作」です。今回は、このアルバムを「代表」する作品「le paradis blanc "白い天国"」、次回は、「l'un sans l'autre "君がいない"」について書いてみたいと思います。

 

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12312740925.html?frm=theme(フランス・ギャル「Ella, elle l'a」の記事)

詳しくは、この記事にも書いてありますが、ミシェル・ベルジェは、「絶頂期」とも言えた「1986年」に、「身近で大切な存在」を、半年のうちに「2人」も「失う」ことになってしまいました。

 

まず、年明け早々の「1月14日」には、「弟も同然」の存在であった、ダニエル・バラボワーヌ(1952-86)を失います。

 

「熱血漢」であったダニエルは、その3年前に「選手」として「初参戦」した「パリ・ダカール・ラリー」で、「序盤でリタイア」という散々な成績と引き換えに、「貧困」、「干ばつ」、「飢餓」という、決して見過ごすことの出来ない、アフリカの「窮状」に直面しました。その体験から、「アフリカ救済」を訴え続けたダニエルでしたが、この年、同ラリーの「主催者側の一員」として、ヘリコプターに乗り込んだ彼は、砂漠の突然の「砂嵐」に巻き込まれて、本当に「突然」に、この世を去ってしまうことになってしまったのです。

 

このニュースは、「フランス全土」を「悲しみの渦」に巻き込むこととなり、ミシェルは、4月に行なった自身のソロコンサート(パリ・ゼニット)で、ダニエルを追悼するための曲、「la minute de silence "沈黙の瞬間"」(1983)を歌いました。この作品は、彼との「共同作業」により生まれた作品だったのです...。

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12345432906.html?frm=theme(「沈黙の瞬間」についての記事)

 

しかし、そのたった2ヶ月後、「6月19日」には、「心のレストラン」の創設者でもある、もう1人の大切な友人、コリューシュ(1944-86)までもが、バイクによる「交通事故」で「亡くなった」というのです。

 

ミシェルは打ちひしがれ、これは、その後の創作に、「大きく暗い影」を落とすことにもなってしまいました。これは、この後に書かれた作品に如実に表れていると言うことが出来ますが、妻フランスのためのアルバム、「Babacar "ババカー(セネガルの赤ちゃん)"」(1987)や、ロックオペラ「スターマニア」の「リメイク版」(1988-89)、同じく「新作」の、「la legende de Jimmy "ジミーの伝説"」(1990)、そして今回の作品、「le paradis blanc "白い天国"」を含むアルバム、「ca ne tient pas debout "理屈に合わない"」(1990)、さらには、「最後の作品」となった、フランスとのデュエット・アルバム、「double jeu "最後のデュエット"」(1992)も、まさにそうだと、私は思います。

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12345132780.html?frm=theme(「evidemment」&「la lettre」の記事)

 

今回のこの作品のタイトル、「le paradis blanc "白い天国"」とは、「南極大陸」のことを表すようです。曲は、クジラ(シャチ)の鳴き声で始まると解説されています。私が最初に聴いたイメージでは、このタイトルは、本当に「天国(雲の上)」を表しているのかとも思っていましたが、それは違っていたようです。しかし、詞も曲も、「死の予感」を思わせるところがたくさん感じられます。「南極大陸」には「長い歴史」があり、まさに、「はじまりの地」という表現が似合う場所だと言えますが、そこで、「すべてのことから解放されて」、「眠りに行きたい(行くだろう)」と歌っているのですから、それは「当然」の印象だと思います。

 

ミシェル・ベルジェは、本当に「突然」の心臓発作でこの世を去ってしまいますが、彼は、もともと心臓が「弱かった」ようで、それを心配した父親から、「医者に診てもらった方がいい」との手紙も受け取っていたそうです。

 

さて、妻であったフランス・ギャルの逝去もあって、この1月から2月にかけて、ミシェルの「ソロ作品」も含めて上演されたミュージカル、「RESISTE」(2015年初演)の「大特集」を組ませていただきましたが、このミュージカルで歌われるナンバーのうち、次の2曲は、このアルバムからの作品です。

 

「その3」で紹介。「a quoi il sert "何の役に立つの"」。

 

こちらは、「その5」で紹介。「chanson pour Man Ray "マン・レイに捧げる歌"」です。

 

それでは、最後に、「le paradis blanc "白い天国"」の歌詞を載せておくことにいたしましょう。

 

「le paradis blanc "白い天国"」は、「元恋人」であった、ヴェロニク・サンソン(1949-)も歌っています(1999年)。

 

本文に直接関係はありませんが、昨年暮れから、今年初めにかけて亡くなった2人の、貴重な「2ショット」です。

 

バックに流れている曲は、ミシェルが、ジョニー・アリディ(1943-2017)と「コラボ」して書いた作品、「quelque chose de Tennessee "テネシー・ウィリアムズの何か"」(1985)です。

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12336086130.html?frm=theme(「テネシー・ウィリアムズの何か」についての記事)

 

次回は、先述のように、このアルバムの中の、これもまた「名曲」です。「l'un sans l'autre "君がいない"」。この曲について書いてみたいと思います。

 

それではまた...。

 

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le paradis blanc  白い天国

 

y'a tant de vagues et de fumee

qu'on arrive plus a distinguer

le blanc du noir

et l'energie du desespoir

le telephone pourra sonner

il n'y aura plus d'abonne

et plus d'idee

que le silence pour respirer

recommencer la ou le monde a commence

 

たくさんの波と蒸気が

もう、見分けも付かないくらいに立っている

暗闇の白

そして、「絶望」のエネルギー

電話が鳴るだろう

そこにはもう、取る人もいないのに

それからもう、

この一呼吸するための静寂は

「はじまりの地で再び始まる」といったことしか思い起こさせないだろう

 

je m'en irai dormir dans le paradis blanc

ou les nuits sont si longues qu'on en oublie le temps

tout seul avec le vent

comme dans mes reves d'enfant

je m'en irai courir dans le paradis blanc

loin des regards de haine

et des combats de sang

retrouver les baleines

parler aux poissons d'argent

comme, comme, comme avant

 

僕はこの「白い天国」に眠りに行くだろう

そこは、「時間を忘れてしまう」ほど夜が長いところ

風とともにたったひとりで

子どもの頃に見た夢のように

僕はこの「白い天国」に走りに行くだろう

憎しみの視線からも

流血の闘いからも遠く離れて

クジラたちにめぐり会うことだろう

銀色の魚たちとも話をするだろう

まるで、まるで、まるで昔のように

 

y'a tant de vagues et tant d'idees

qu'on arrive plus a decider

le faux du vrai

et qui aimer ou condamner

le jour ou j'aurai tout donne

que mes claviers seront uses

d'avoir ose

toujours vouloir tout essayer

et recommencer la ou le monde a commence

 

たくさんの波と、たくさんの考え

もう、判断することが出来ないくらいに湧き起こって来る

真実の虚偽を

そして、愛してくれる人、または「非難」する人を

僕がすべてを捧げられる日

僕のピアノがボロボロになる日

すべてを試してみようと

望み続けたために...

「はじまりの地」で、再び、始めることにしよう

 

je m'en irai dormir dans le paradis blanc

ou les manchots s'amusent des le soleil levant

et jouent en nous montrant

ce que c'est d'etre vivant

je m'en irai dormir dans le paradis blanc

ou l'air reste si pur

qu'on se baigne dedans

a jouer avec le vent

comme dans mes reves d'enfant

comme, comme, comme avant

 

僕はこの「白い天国」に眠りに行くだろう
そこではペンギンたちが、夜明けとともにたわむれて

「その姿」を、

「生きている証」を、僕たちに見せてくれる

僕はこの「白い天国」に眠りに行くだろう

ここでは、空気はいまだに澄んでいて

僕たちはその中に浸っている

風とともに遊んでいる

子どもの頃に見た夢のように

まるで、まるで、まるで昔のように

 

parler aux poissons d'argent

et jouer avec le vent

comme dans mes reves d'enfant

comme avant...

 

銀色の魚たちとも話をするだろう

風とともに遊ぶだろう

子どもの頃に見た夢のように

まるで昔のように...

 

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(ヴェロニク・サンソンによる、ミシェル・ベルジェの作品集です)

 

(daniel-b=フランス専門)