今回は、この名作をお届けしましょう。

 

今年は、「シャンソン界の3大巨匠」の1人と呼ばれる、ジャック・ブレル(1929-78)の「没後40周年」の記念の年です。さらに、来年は「生誕90周年」ということにもなります。

 

本来の予定では、「没後40周年」の命日(「10月9日」)に合わせた、「秋の特集」で書くつもりでしたが、この曲を「レパートリー」としていたモラーヌ(1960-2018)の「急逝」により、急きょ、「前倒し」で書くことに致しました。

https://ameblo.jp/daniel-b/themeentrylist-10096189787.html(テーマ「ジャック・ブレル」の記事一覧)

https://ameblo.jp/daniel-b/themeentrylist-10095603016.html(テーマ「スターマニア(モラーヌ含む)」の記事一覧)

 

最近になって、フランスでも「訃報」が相次ぎ、1月のフランス・ギャル(1947-2018)に続き、モラーヌまでもが世を去ってしまいました。彼女たちの歌を「好んで」聴いていた私としては、とても「切ない想い」がします。

 

ブレルと「同郷」(ベルギー出身)であったモラーヌの歌で、いま一度、「la chanson des vieux amants "懐かしき恋人たちの歌"」を聴いてみましょう...。

 

1993年、「オランピア劇場公演」からの録音です。

こちらは、ベルギーのテレビ番組からです。

 

さて、今回採り上げたこの曲、「la chanson des vieux amants "懐かしき恋人たちの歌"」は、ブレル自身が詞を書き、ブレルと、専属ピアニストであるジェラール・ジュアネスト(1933-)が曲を書いた、1967年発表の傑作です。このコンビによる作品の中でも、翌年の「j'arrive "孤独への道"」と並んで、特に「傑出した名作」と言うことも出来ると思います。

 

速報:ブレルとともに、数々の名作を世に送り出した、ピアニストで作曲家のジェラール・ジュアネストが、16日、死去したとのことです。85歳でした(この2日に誕生日を迎えたばかりでした)。

謹んで、ご冥福をお祈りしたいと思います。

 

合掌...。

 

 

これまでの記事でも書いているように、ブレルは、キャリアの「絶頂期」に当たる1966年に、突然、「ステージからの引退」を発表します。10月からのオランピア劇場公演は、「さよなら公演(アデュー・オランピア)」ということになり、通常の「ライヴ録音」(レコード)ではなく、「フィルム」で記録されることにもなりました。

 

当時、年間「320日」も歌うという、「超ハードスケジュール」だったブレルには、「休息の時」が必要でした(実際、「当時は行き詰っていた」とも話しています)。

 

この頃から、作風は「転換期」を迎えます。それまで、ステージで「見せる」ことも含めて、「外側」へ向かっていたその「力」は、「内側」を向くようになり、「自身の内面」を見つめた「哲学的」な作品が、その大半を占めるようになっていったのです。

 

実際には、オランピア劇場での「さよなら公演」の後も、契約の関係で、「250回」もステージで歌ったということで、「過労」のため、「充分ではない」パフォーマンスも、やはり「多かった」ようです。

 

この曲、「la chanson des vieux amants "懐かしき恋人たちの歌"」は、1966年中に歌われたかどうかは、現在のところ確認が出来ませんが、レコーディングは、オランピア劇場での「さよなら公演」で発表された他の曲と一緒に、1967年の「年明けすぐ」に行なわれました(この曲は、「mon pere disait..」と同じ、「1月3日」の録音です)。

 

しかしながら、かつては「ない」と思われていたこの曲の「ライヴ録音」は、実は「存在」していました。

それは、1967年5月16日、ベルギーとの国境に近いフランス北部の街ルーベでのライヴです。

 

「通常のライヴ」としては「最後」となったこの公演は、「没後35周年」に当たる2013年に、初めて「商品化」(「全集盤」の1枚)されましたが、上にも書いた通り、「過労」のため、パフォーマンスとしては「最悪」でした。本人の生前は、たぶん、そういった理由で商品化がされなかったのでしょう。容易に想像がつきます。

 

この公演は、オランピア劇場での「さよなら公演」の曲目をベースにしていますが、「2曲」が差し替えられています。

 

オープニング・ナンバーである「le cheval "馬"」(1966-67)は、「le moribond "瀕死のひと"」(1961)に、そして、終盤の「定番曲」であった、「au suivant "さあ続け"」(1964)に代わって、3曲目「la chanson de Jacky "ジャッキー"」(1965)のすぐ後に、この「最新」の曲、「la chanson des vieux amants "懐かしき恋人たちの歌"」が披露されています(残念ながら、この音源は、現在、動画サイトにはありませんでした)。

 

この公演については、以下の記事でも書いています。

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12366040761.html(「瀕死のひと」の記事)

 

この曲で歌われているのは、長年連れ添った夫婦の「感慨」とも言えるものですが、決して「甘い思い出」というものではありません。むしろ、「危機の数々」です。1963年の名作、「les vieux "老夫婦"」同様、ブレルの鋭い「観察眼」が光りますが、この詞からは、さまざまな「教訓」を得ることが出来ると思います。

 

結局のところ、結局のところ

私たちには必要だったのさ

大人にならずに年老いるという「才能」が

 

しかし、恋人たちにとって、「平和」に暮らすということなど

「最悪の罠」だとは思わないかい

 

成り行きに任せることなく

水の流れには気を付けよう

それは、いつでも「甘い戦い」なんだ...

 

ブレル自身は、1950年に結婚し、3人の娘の父ともなりましたが、この曲が発表された当時は、まだ「37歳」でした。

それなのに...、あまりにも「鋭い」...。「鋭い」と思いませんか?

 

この曲はまた、「盟友」である、ジュリエット・グレコ(1927-)の「最重要レパートリー」としても有名です。

 

こちらは、「第一線」を退く直前、「2015年」の映像とのことです。ピアノは、もちろん、「夫」でもあるジェラール・ジュアネストです。

「原点」に立ち返り、しみじみとした「詩情」を感じます。

 

同じく、ジェラール・ジュアネストとの共作で、「最晩年」の「未発表作品」の1つであったこちらの曲、「l'amour est mort "愛は死んだ(過ぎ去りし恋)"」(1977)も、テーマ的には「近い」作品であるといえます。

「日本盤ベスト」にも収録されています。

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12374930046.html(参考:「1940年5月」の記事)

 

最後に、いま一度、モラーヌをどうぞ。こちらは、「5月3日」の映像です。

ブリュッセル出身の女性歌手、ティフ・バロウ(1987-)とのデュエットです。

 

こちらが、「生涯最後」のステージだということです。死の前日、「5月6日」の映像です。

同じく、ティフ・バロウとのデュエットですが、彼女は、「10日」が「誕生日」ということです。

 

あらためて、モラーヌのご冥福をお祈りしたいと思います。

 

以下に、歌詞を載せておくことにいたしましょう。

 

それではまた...。

 

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la chanson des vieux amants  懐かしき恋人たちの歌

 

bien sur, nous eumes des orages

vingt ans d'amour, c'est l'amour fol

mille fois tu pris ton bagage

mille fois je pris mon envol

et chaque meuble se souvient

dans cette chambre sans berceau

des eclats des vieilles tempetes

plus rien ne ressemblait a rien

tu avais perdu le gout de l'eau

et moi celui de la conquete

 

もちろん、私たちには嵐の日々もあった

20年間の愛など、まさに狂気の沙汰だ

何度 お前は荷物をまとめ

何度 私は家を出たことだろう

ゆりかごのないこの部屋の

家具のそれぞれが憶えている

昔の嵐の稲妻を

もう何も、似通ったものはなく

お前は水の味を忘れ

私は征服欲もなくしてしまった

 

mais, mon amour

mon doux mon tendre mon merveilleux amour

de l'aube claire jusqu'a la fin du jour

je t'aime encore tu sais je t'aime

 

ああ、私の愛よ

私の愛しいひと 優しいひと 素晴らしいひとよ

夜明けから1日が終わる頃まで

私はまだ、お前を愛しているんだ 愛してる

 

moi, je sais tous tes sortileges

tu sais tous mes envoutements

tu m'as garde de piege en piege

je t'ai perdue de temps en temps

bien sur tu pris quelques amants

il fallait bien passer le temps

il faut bien que le corps exulte

finalement finalement

il nous fallut bien du talent

pour etre vieux sans etre adultes

 

私は、お前のまやかしもすべて分かっている

お前は、私の呪いもすべて分かっている

お前は、罠から罠へと、私を捕え続け

私は時折り、お前を見失った

もちろん、お前も時には浮気をした

そういうことも、時には必要さ

「肉体の歓び」というものも

結局のところ、結局のところ

私たちには必要だったのさ

大人にならずに年老いるという「才能」が

 

oh, mon amour

mon doux mon tendre mon merveilleux amour

de l'aube claire jusqu'a la fin du jour

je t'aime encore tu sais je t'aime

 

ああ、私の愛よ

私の愛しいひと 優しいひと 素晴らしいひとよ

夜明けから1日が終わる頃まで

私はまだ、お前を愛しているんだ 愛してる

 

et plus le temps nous fait cortege

et plus le temps nous fait tourment

mais n'est-ce pas le pire piege

que vivre en paix pour des amants

bien sur tu pleures un peu moins tot

je me dechire un peu plus tard

nous protegeons moins nos mysteres

on laisse moins faire le hasard

on se mefie du fil de l'eau

mais c'est toujours la tendre guerre

 

時が経つにつれ

私の苦しみも増していく

しかし、恋人たちにとって、「平和」に暮らすということなど

「最悪の罠」だとは思わないかい

もちろんお前もすぐには泣かなくなり

私もすぐには傷つかなくなった

隠し事をするのはもうやめよう

成り行きに任せることなく

水の流れには気を付けよう

それは、いつでも「甘い戦い」なんだ...

 

oh, mon amour...

mon doux mon tendre mon merveilleux amour

de l'aube claire jusqu'a la fin du jour

je t'aime encore tu sais je t'aime...

 

ああ、私の愛よ...

私の愛しいひと 優しいひと 素晴らしいひとよ

夜明けから1日が終わる頃まで

私はまだ、お前を愛しているんだ 愛してる...

 

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(daniel-b=フランス専門)