オリバー・ツイスト | おだんご日和

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Dango茶屋・いちのせの徒然記

文豪チャールズ・ディケンズの小説を、巨匠デビット・リーン監督が映画化した文芸大作…と、DVDパッケージの裏に書いてありました。
ミュージカル「オリバー!」の元ネタになっているということで、私はてっきり、ハウス名作劇場の「小公女セーラ」をミュージカル化したような作品を勝手に想像していたのですが、良い意味で裏切られました。



まず、ミュージカルではありません。
デビット・リーン監督後年の名作「ドクトルジバゴ」とそっくりの重くて暗い嵐から始まります。
その後に続く、孤児院や葬儀屋での生活は「セーラっぽい」のですが、「子ども窃盗団」が登場したあたりから雰囲気が変わってきます。
なんだか「犯罪の匂い」がただよってくるんですね。
それでも、明るく楽しいミュージカルを期待していた私は「窃盗団の親分をしている老人から生きる強さを学んで、オリバーは成長して行くに違いない。最後はみんな幸せになって、ハッピーエンドに違いない」と望みをつないでいました。
ところが、物語はどんどん「クライムサスペンス」の方向に舵を切り、女性は撲殺されるし、親分は極悪人だし、子ども窃盗団は逮捕されるし、陰謀は渦巻いているしで、登場人物のほとんどが救われないまま、オリバーだけがさして努力もせずに幸せになって映画は終わります。



子ども窃盗団の面々が捕まるシーンは、自業自得とはいえ、ちょっとかわいそうでした。ほとんどリンチなんですもん。



オープニングの嵐の美しさや、街のセット、緊張感のある脚本など見所も多く、想像とは違っていましたが面白い映画でした。
誤解を恐れず言ってしまえば「一人の少年が運命に翻弄される」だけのスケールの小さな物語です。
それをデビット・リーン監督が撮ると、どこか叙事詩的な雄大さが漂う大作になるのですから、さすがと感心することしきりでした。