。small dande。 -3ページ目

「下さい」 (焔と鷹と煙草)

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「クソッ…!!」


大佐の拳が振り降ろされ、叩き付けられた机から派手な音が部屋中に鳴り響いた。

大佐の顔が、苦痛そうに眉を顰めている。



テロ対策の為に自ら出した作戦が、敵に逆手に取られてしまった。

そして被害を防ぐ所か、指示を言い渡された部下・憲兵ら、さらには周辺市民にまで危害が加わり、…。


現場に赴いていたハボックも、軽傷ではあるものの身体中を掠り傷等で覆われながら、マスタング大佐の所まで戻って来ていた。

事件発生を聞き付けたホークアイも、大佐の部屋に駆け付ける。



本当に悪いのは、この上司ではないのに…。

頭を抱え込む彼は、どこか焦りを見せ始めていた。


「…たいさ…」

「………」

「大佐…!」

「少し黙ってろ中尉!」


怒鳴られ、ホークアイの身体はビクつく。



それが、大佐の行動が、傍で控えていたハボックの気持ちを逆撫でさせた。


「あんたがこんなんだから、いつまで経っても俺たちはっ…!」


思ってもみなかった人物からの反応に、マスタングもホークアイも思わず振り返る。



最近の大佐は、小さな事でも身動きが取れない様子だった。

こんなの、以前までの大佐らしくない。

俺らが見て来た彼は、こんな所で足を掬われるような人間じゃない…


「…これ以上、あんたにとやかく言うつもりはありません」


自分の上司に対する失言を謝るかのように、ハボックは眉間に皺を寄せた。


「でも…」

「……ハボック」

「何スか」


ハボックが顔を上げると、穏やかな表情でマスタングが彼を見ていた。


「…ありがとう…」


そう言ってロイは微かに笑った。
それを見たハボックも、隣りで控えていたホークアイも、自然と頬が緩む。


「そうやって、いつまでも笑っていて下さいよ。
あんたが元気じゃなきゃ、俺たちも気が沈んじまいますから」



そして、和んだ空気は再び緊張感を取り戻す。


二人の部下が、静かに口を開いた。



「さあ、大佐」

「俺らに、指示を、命令を」





end


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一生という名の (ロイハボ)

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「大佐…」


決して彼から呼ぶ様子がなかったから、
俺から声を掛けてみた





【一生という名の俺の全てを、貴方に捧げ費やし尽くす】





「ねぇ、大佐」

「何だ」

「好きです」

「知ってる」

「大佐…」

「何だね」

「愛してます」

「分かってる」

「…大佐、」

「どうした?」

「俺のこと、好きですか?」


そう訊ねてやっと、愛しい人は読んでた本から目を外し、俺に視線を向けた。



それでも、やはり…


「分かってるだろう?」


自尊心の強い上司は、
笑みを向けながら俺に言い返してきた。



…ま、

あんたはそういう人だって分かってるから、別にいいけど…



拗ねて彼から視線を放した所、頭を優しく撫でる感触……


うまく丸め込まれた気がしないでもないが、
この人にこうしてもらえるのは俺だけだと、そう思ったら気分が良くなった俺は、どこまでも単純な男。


いつでもどこでも、プライベートであろうと公共の場であっても、俺はこの人に弄ばれてばかりいる。

悪い気は、しない。

この人に付き従うと決めたのは、俺自身だから。





end



もちろん、こうして褒美として額にキスしてもらえるのも

俺だけの特権ですよね、大佐?



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…なんだろう、この微妙な甘さ…初ロイハボ。

運命の瞬間 (ハボック夢)

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彼女との熱く甘い時間を終え、静かなひととき。

俺が腰砕けにさせてしまったせいでベッドに横たわったままの彼女の傍で一服していると、不意に声を掛けられた。


「ねぇ、いつからなの?」


寝た体勢のまま俺の方を向く彼女と、視線を交わらす。

いつから、とは一体何を指しているのか…

今吸ってる煙草のことか?


「吸い始めたのは…士官学校に入る前だったかな?」

「…もしかして未成年の時から?
って、聞いてるのはそういうことじゃなくて」


なんだ、違うのか?


「じゃあ、いつからお前とヤりたいと思ったのか?そんなの好きになった時から」

「誰もそんなこと聞いてないって!!もっとデリカシー持ちなさいよっ」

「軍人にデリカシーなんてもの必要ねぇだろ。それにそんなに叫んだら、腰に響くぞ」

「…だれのせいよ…」


そう言って頬を赤く染めながら、彼女は目許まで布団で隠してしまった。

ヤってる際中も十分可愛かったけど、普段でもこんなことされたら…たまんねぇ。


そんなことは胸の内に秘めて、先程の会話を促す。


「で、何を聞きたかったんだよ?」


未だに火照った頬をそのままに、彼女は俺から少し視線をずらし、小さく言った。


「…いつから私のこと、好きになったの?」


思っていたような質問内容ではなかったから、俺の目は自然と見開いた。


「…いつからだったかな?」


簡単に答えが出せるような、問いじゃない。

まだ吸い始めて間もない煙草を手にしたまま考える。

参考までにと、彼女に聞き返した。


「お前はどうなんだ?」

「よく分からない…。
“この時好きになったんだ!”って、確信持って言えるような瞬間が思い当たらないの」


どうやら彼女も同じように答えに詰ってたようだ。


「そうだな…」



俺は彼女と出会った頃からのことを、順々に思い出していった。


「士官学校に入って、初めは同期としてお前と一緒に訓練したり、卒業してからもそのまま同じ勤務地で同じ部署になって、一緒に仕事していって、…
そしたらお前と過ごす時間も自然と増えて…
いつの間にか…」


そう、いつの間にか
彼女に胸を高鳴らせ、
彼女を目で追うようになり、
鼓動を速めて、
彼女に関する小さな出来事で
嬉しくなったり、
逆に落ち込んだり…


「お前のこと、気にしてしまう瞬間が重なって」


気付いたらとっくに、お前に惚れていた



俺の言葉に静かに耳を傾けながら、彼女は俺を見つめていた。

そんな彼女にやさしく微笑んで、そっと手を伸ばす。


「ただ…出会った時から何となくだけど、“普通の関係”で終わらせたくないな、とは思ってた」


指先で彼女の頭を撫でる。

今では、彼女の髪の毛一本さえ愛しく思えて、
彼女の口許が嬉しそうに弧を描けば、俺の胸は熱くなる。


煙草に灯る火を消さずに、俺はそれを灰皿に立て掛けた。







“運命”なんて今の俺にはよく分からないし、信じてる訳でもないけれど

きっと運命の瞬間なんて、
こんな風に互いを愛しく感じただけでも刻まれるものなんだ。


やわらかな唇を、合わせた一瞬でさえも…






end