キスの仕方も、忘れてしまうほどに(ハボック夢?)
「なんで、キスしてくれないの?」
訝しげに、そしてどこか悲しげに
彼女は俺に尋ねてきた
「私のこと、女として見てないの?」
違う、決してそんなことはない
そう言いたいのに、口が動かない
今にも泣きそうな瞳で、
俺を見つめてる君
言い訳など、君に対しては無意味だ
それが分かっているのに、
どうしてもどかしく感じてならないのか
理由は俺にさえ分からない
君が欲しくて堪らないのに
それがいつしか君を傷付けてしまうのが恐くて
それでも、君を欲さないよう努める俺を
君は憐れんで、泣きそうになっていて…
不意に、肩を掴まれて
彼女の温度がそこから全身に伝わった
ダメだ
触れては、だめだ…
その手を払い除け、俺は一歩後ずさった
俺のしたことに驚き、再び涙を滲ませながら彼女は俺を見つめた
違う、本当は
こんなことがしたい訳じゃないのに…
彼女のそれは、俺が望んだ表情じゃないのに…
接し方も分からなくなってしまったのは
異性だからじゃない
ただ、君が僕にとって
愛すべき人だっただけのこと
気付くと
キスの仕方も忘れてしまうほどに、
僕は深く、君に溺れていた
end
好きなどという言葉も
不釣り合いなくらいに
_
訝しげに、そしてどこか悲しげに
彼女は俺に尋ねてきた
「私のこと、女として見てないの?」
違う、決してそんなことはない
そう言いたいのに、口が動かない
今にも泣きそうな瞳で、
俺を見つめてる君
言い訳など、君に対しては無意味だ
それが分かっているのに、
どうしてもどかしく感じてならないのか
理由は俺にさえ分からない
君が欲しくて堪らないのに
それがいつしか君を傷付けてしまうのが恐くて
それでも、君を欲さないよう努める俺を
君は憐れんで、泣きそうになっていて…
不意に、肩を掴まれて
彼女の温度がそこから全身に伝わった
ダメだ
触れては、だめだ…
その手を払い除け、俺は一歩後ずさった
俺のしたことに驚き、再び涙を滲ませながら彼女は俺を見つめた
違う、本当は
こんなことがしたい訳じゃないのに…
彼女のそれは、俺が望んだ表情じゃないのに…
接し方も分からなくなってしまったのは
異性だからじゃない
ただ、君が僕にとって
愛すべき人だっただけのこと
気付くと
キスの仕方も忘れてしまうほどに、
僕は深く、君に溺れていた
end
好きなどという言葉も
不釣り合いなくらいに
_
世界でたった一人 (ハボック夢)
「もし、世界でたった一人しか生きられないとしたら、ジャンは誰に生き残ってて欲しい?」
ソファに座り、隣りで煙草を吸っている彼に、それとなく聞いてみた。
「んーそうだな…」
優しい彼のことだ。
その“誰”かは、きっと、“私”だ……
「…俺かな?」
悩んだ末、彼が出した答えは“自分自身”…
…予想外のものだった。
「えっ、なんで!?」
あまりにも驚いた様子で反応したせいか、逆にジャンの方が驚いたように返した。
「なんでって…お前は一体俺が誰だと答えると思ったんだ?」
「それは…」
“私の名前を言うと思ってた”なんて正直に答えたら、どれだけ自己中な女なんだよ、って言われそうだったからやめた
(ジャンに限ってそんなこと有り得ないけど)
「でも、なんで?」
彼が出した、恐らく実現することはないであろう問いに対する結論。
その理由が聞きたい。
「だってお前、俺が死んで一人取り残されたらどうする?」
「…生きていられないかも」
「だろ?」
彼はそれが当然だとでも言うように、笑みを添えた。
しかし、それは次第に悲しみの笑みへと変わる。
「でも、俺はお前がいなくなっても自らは消えないよ、多分」
「どうして?」
「お前を忘れたくないから、かな」
その瞳に、迷いは見当たらなくて、
「たとえお前が死んでも、」
けれど、それが
「俺は生きて、泣きながらお前のこと思い出すんだ」
哀しかった。
「お前が俺の中で、生き続けるために」
そんなことされても、私は孤独しか感じない
だから、…
「そんなこと、言わないでよ…」
今在る温もりに、縋り付いた。
end
どちらか片方が消えようと両方が消えようと、
この手に感じるものは何も無くなるのだから
_
No Kiss (ハボック夢)
貴方からは、決してしてくれない
なら、私からするより
他にはないのではないか?
【No Kiss】
彼からキスを仕掛けたことが、無い訳ではない。
しかしこの前、私が放ったたった一言が、相当彼を傷付けてしまったらしい…。
“煙草くさいのは嫌!”
初めて唇を近付けてきた彼。
しかし、あのヤニ臭さを想像すると受け付けられなかった。
反射的に押し返した手の平が感じたのは、彼の胸から伝わる速い鼓動だった。
私はそれにも気付けず彼を傷付け、哀しませてしまった。
それから何となくお互い気まずくなってしまい、ほとんど喋れずにいた。
コポコポと音を立てて沸騰する、湯の入ったポットが置かれたコンロの火を止める。
あの日と比べると、随分煙草の匂いもしなくなった彼の部屋には、静けさがゆっくりと訪れる。
同じ空間内にいるのに、このぎこちなさは何なのか。
それ以前までは、普通に(それでもどこか、幸せを感じられていた)話せていたのに…。
ほんの些細な決まり文句さえ、勇気を要した。
「…珈琲、いる?」
「あぁ…」
リビングのソファに座っている彼の反応も冷たくて、私を突き放そうとしているようにも思えた。
このまま、別れちゃうの?
彼とキスも交わさないまま、
腕の中で抱き締められながら眠ることも叶わないまま
これ以上の思い出をつくることもないまま…
やだ、やだ、やだ
珈琲をカップに注ぎかけていた手を止め、彼の元へと歩み寄る。
ソファで寛いでいるかのように見えた彼が手にしていたのは、水着姿のお姉さん達が写った写真集だった(それはもう素晴らしく彼の好みのスタイルが勢揃いの)。
もう私なんかには愛想尽かしちゃったのかしら…
紙面に描かれたピチピチの女性の方が愛しいのだろうか
涙が零れ落ちそうになるのを、必死でとめた。
写真集を見ながら彼が咥えていた火の点いていない煙草を、不意に取り上げる。
彼は不思議そうな表情を浮かべて、私を見上げた。
もしかしたら、私だけが求めてばかりいるのかもしれない
そんな不安が、胸を掠める。
「ジャン…」
彼の傍まで近寄った私は、腰を屈めて目線を合わせ始めた。
互いの額を、突き合わせる。
「煙草くさくてもいいから、…キス、して」
我が儘な私に、呆れるだろうか
それとも、振り回されてばかりで腹を立てるだろうか
どちらにしろ、それでは私が求めた行為を与えてくれそうにはない
「後悔しないか?」
ジャンは私が思っていたような反応を示さなかった。
それどころか、少しだけ嬉しそうな顔をしている。
如何わしい本は既に閉じられ、彼の横へと置かれていた。
「後悔しないから」
だって、このまま貴方と離れてしまう方がよっぽど恐い
「だから、…」
言葉は続かなかった。
吐き出されなかった言葉の代わりに、塞き止められていた心のシコリが流れていった。
私が瞼を開いている内に、彼はそっと唇を放した。
微かに、煙草の味。
触れた瞬間から離れるまでずっと、思っていたよりも遥かに心地よかったそれ。
あぁ、ヤバい…
どうしよう
「癖になりそう…」
end
_
なら、私からするより
他にはないのではないか?
【No Kiss】
彼からキスを仕掛けたことが、無い訳ではない。
しかしこの前、私が放ったたった一言が、相当彼を傷付けてしまったらしい…。
“煙草くさいのは嫌!”
初めて唇を近付けてきた彼。
しかし、あのヤニ臭さを想像すると受け付けられなかった。
反射的に押し返した手の平が感じたのは、彼の胸から伝わる速い鼓動だった。
私はそれにも気付けず彼を傷付け、哀しませてしまった。
それから何となくお互い気まずくなってしまい、ほとんど喋れずにいた。
コポコポと音を立てて沸騰する、湯の入ったポットが置かれたコンロの火を止める。
あの日と比べると、随分煙草の匂いもしなくなった彼の部屋には、静けさがゆっくりと訪れる。
同じ空間内にいるのに、このぎこちなさは何なのか。
それ以前までは、普通に(それでもどこか、幸せを感じられていた)話せていたのに…。
ほんの些細な決まり文句さえ、勇気を要した。
「…珈琲、いる?」
「あぁ…」
リビングのソファに座っている彼の反応も冷たくて、私を突き放そうとしているようにも思えた。
このまま、別れちゃうの?
彼とキスも交わさないまま、
腕の中で抱き締められながら眠ることも叶わないまま
これ以上の思い出をつくることもないまま…
やだ、やだ、やだ
珈琲をカップに注ぎかけていた手を止め、彼の元へと歩み寄る。
ソファで寛いでいるかのように見えた彼が手にしていたのは、水着姿のお姉さん達が写った写真集だった(それはもう素晴らしく彼の好みのスタイルが勢揃いの)。
もう私なんかには愛想尽かしちゃったのかしら…
紙面に描かれたピチピチの女性の方が愛しいのだろうか
涙が零れ落ちそうになるのを、必死でとめた。
写真集を見ながら彼が咥えていた火の点いていない煙草を、不意に取り上げる。
彼は不思議そうな表情を浮かべて、私を見上げた。
もしかしたら、私だけが求めてばかりいるのかもしれない
そんな不安が、胸を掠める。
「ジャン…」
彼の傍まで近寄った私は、腰を屈めて目線を合わせ始めた。
互いの額を、突き合わせる。
「煙草くさくてもいいから、…キス、して」
我が儘な私に、呆れるだろうか
それとも、振り回されてばかりで腹を立てるだろうか
どちらにしろ、それでは私が求めた行為を与えてくれそうにはない
「後悔しないか?」
ジャンは私が思っていたような反応を示さなかった。
それどころか、少しだけ嬉しそうな顔をしている。
如何わしい本は既に閉じられ、彼の横へと置かれていた。
「後悔しないから」
だって、このまま貴方と離れてしまう方がよっぽど恐い
「だから、…」
言葉は続かなかった。
吐き出されなかった言葉の代わりに、塞き止められていた心のシコリが流れていった。
私が瞼を開いている内に、彼はそっと唇を放した。
微かに、煙草の味。
触れた瞬間から離れるまでずっと、思っていたよりも遥かに心地よかったそれ。
あぁ、ヤバい…
どうしよう
「癖になりそう…」
end
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