「プア ミキノリア ( Pua Mikinolia ) :修正版」
「ポリネシアの歌」
【はじめに】
トワイライト パーティ 「ハッピーな楽しい旅」で歌われた曲です。歌詞の作者 シルヴェスター カラマ (Sylvester Kalama) は カウアイ島の東部内陸部の方で、詩にはこの島の北西部の地名や逸話がさり気なく盛り込まれています。詳しい歌詞の説明は「プア ミキノリア ( Pua Mikinolia )」にありますのでご覧ください。歌詞の日本語訳は沢山知られていて、少々あからさますぎる気がするものが多いようですので、つい注意がそちらに向いてしまうかも知れません。しかし、何度も聴いていくと、同じ カウアイとはいっても、さほど雨の多くない東側内陸部からカウアイ北西部の雨の多い地域を旅した際の印象を綴った曲に思えます。男女のことはむしろ、定番の詩のツヤ出しくらいに考えて、可愛らしい踊りが繰り広げるしみじみとした旅の印象を味わうのが良いと思います。裏声がふんだんに使われていて、いかにも ハワイらしい歌です。ただ、歌うのが得意でない者にとっては、ほぼ、ミッション インポッシブルです。ですから、この アカペラ シリーズ (?) で取り上げるつもりは、当初は、なかったのですが、あの方が誠に可愛らしく踊られている動画、この素人カメラマンにとっては掛替えのない宝物、がありますので、歌ってみることにしました。
以降、最初に アカペラで歌った結果を見ていただいた後に、ハワイ語の原歌詞と先の項で案出された日本語歌詞をお示しし、原曲の拍のとり方を見て、それを参考にした日本語歌詞での拍のとり方の一つの案をお示しします。アカペラではこの拍を用いました。その後、背景に用いた動画について説明を加えさせていただいて、最後に未解決の問題「ミキノリアとはどんな花か ?」の答えを出したいと思います。よく、「ミキノリア」は英語名「マグノリア (magnolia)」がハワイ語化したものだと捉えられています。[1] 「マグノリア」は「モクレン科の仲間の総称」であり、桜より先に咲くふっくら豊かな花で、品種改良の結果、さまざまな色のものがあります。[2] しかし 、歌の表している状況を理解すれば、その様な街路樹などに使われる花ではないことが分かります。
【アカペラで歌う プア ミキノリア】
以下の日本語歌詞を歌います。
いとしき 私の 花よ ミキノリア 求め ている 甘き水を
聞こえる この 歌声 カーフリの この音 流れる 屋根上の水
行かん この 愛は 隠れ家へ 柔らかい 草のうえに パーピオフリの
私が うた えば 貴方が返す ここは ナウエ 屋根の雨音
結果は以下の通りです。
【歌詞について】
ハワイ語の歌詞と日本語歌詞案を項「プア ミキノリア ( Pua Mikinolia )」から引用します。
Aloha kuʻu pua mikinolia i lohia I ka wai kūauhoe
いとしき 私の 花よ ミキノリア 求め ている 甘き水を
Hoʻolono o ka leo o ke kāhuli ka ʻowē a ke wai ma ka piula
聞こえる この 歌声 カーフリの この音 流れる 屋根上の水
E hoʻi ke a--loha i ka māwae i ke kā--welu holu a Pāpiohuli
行かん この 愛は 隠れ家へ 柔らかい 草のうえに パーピオフリの
Puana aku au o mai ʻoe 'o naue i ka wai ma ka piula
私が うた えば 貴方が返す ここは ナウエ 屋根の雨音
歌詞の詳細は歌詞の解析を行った上記の項をご覧ください。ここでは、詩が表している状況を考えるのに重要な言葉のみを考えてみます。
「一行目」
「Ka wai kūauhoe」は カウアイ島の ナパリ海岸沿いの崖に流れ落ちる水のことを表し、オールを崖に打ち込んで、オールの柄から流れ落ちる水を飲んだことから、こういう言葉が出たようです。のどが渇いた時に飲む冷たい水ですから、日本語で言えば「甘露の水」に相当します。つまり、「ミキノリア」はおいしい水を欲している ということです。(11/13 「蝸牛」を「カーフリ」と歌っているので、あるいは「甘き水」をそのまま「クーアウホーエ」と歌っても良いかも知れません。)
「二行目」
「Piula」とは「トタン屋根」を表します。形状的には、波型に整形した亜鉛メッキの鉄板 (ブリキ板) です。例えば、この様なものです。
沢山の雨が降ったときには、雨水が波型の谷の部分を勢い良く雨樋に向かって流れ落ちて行きますから、雨音とは別に、水の流れ落ちる音が聞こえます。この音を「カーフリ (かたつむり) 」の歌声に例えたのでしょう。ハワイでは「カーフリ」は愛を「歌う」ことがあるようです。
「三行目」
「パーピオフリ」とは「草マット」の材料の植生でよく知られたところだと考えられます。ですから、この行が言っていることは寝室で愛を語りましょうということです。しかし、この行で詩全体を判断するのは良くないと思います。とりあえず、次に行きましょう。
「四行目」
「ナウエ」は相思相愛の「愛」をイメージさせる地名で、結論として、「愛があるなら、ここがナウエだ」ということです。( 11/13 ここで、「私が歌え」ば「貴方が応え」るについて申し上げておかねばなりませんでした。これは ナウエで沢山見ることのできる「ハラの木」のことが根底にあります。詳しくは「ナニ ワレ ナ ハラ( Nani Wale Nā Hala )」の項を見ていただきたいのですが、ハラの木は雌雄異体で、雌雄が仲良く寄り添っているように見え、どちらかが揺れれば、相手の方も揺れるのだと言われています。ナウエに行きたいと考えた作者であれば、当然、このことが頭にあったはずです。)
以上、お分かりのように次の構成になっています。
1 (起) ミキノリアが雨を呼んでいる
2 (承) 屋根上を流れる水の音が愛の歌声
3 (転) 「愛の物語」
4 (結) 雨音の下、「ここがナウエ」と思う
これから、三行目の「愛の物語」は詩の主題を相思相愛のイメージである「ナウエ」に展開させるための仕掛けであり、この「愛の物語」のイメージさせる色が、ひたすらに雨と水音に覆われている詩を鮮やかに彩って「ああ、ここがナウエなのだ」という結論に導いていることが分かります。これが詩の内容だと思います。そして、詩の周囲の状況は、雨を呼ぶ ミキノリア、屋根の水音、寝室以外に行くところがなく、ひたすらに雨の音が聞こえる、というものです。トタン屋根ですから、家中に響く「雨音」がこの歌の背景音です。正に、カウアイの雨な訳です。そして、一つ付け加えるなら、トタン屋根の家に滞在しているのですから、周囲は整備された高級なリゾート地ではありません。自然がいっぱいに広がった、カウアイの一般的な地域と考えるのが、それこそ、自然です。そこに咲く ミキノリアは「モクレン」が相応しいのでしょうか? 素人カメラマンの結論は最後に申し上げます。
【拍についての考察】
弦の低音で拍を取ることにします。丸印「 ❍ 」で低音弦が鳴らされたところを表すことにすれば、音源の音から、以下のようになります。(フォントの違いによるズレを防ぐため、JPEG で表示します。文字データは付録に置きます。)
[拍子: 原歌詞
次に、日本語歌詞との対応を考えます。
[拍子: 原歌詞と日本語歌詞]
これを基に、日本語歌詞と拍の関係を以下のように調整しました。
[拍子: 日本語歌詞]
二行目で、「聞こえる」が拍より先に始まっているのは、音源で「Hoʻolono」がその様に歌われているからです。拍に合わせれば良さそうですが、アカペラを歌う時の都合で音源が聞こえてしまうことから、同じ様な拍の取り方にしました。音源では歌に変化を付ける意味もあってそうしたのかも知れません。
【背景となった動画について】
背景とした動画は以下のものです。
この素人カメラマンの最後の ハワイアンズ訪問の日、トワイライト パーティで撮影したものです。この「プア ミキノリア」はとても可愛らしくて、この三年間に撮った トワイライト パーティの踊りの中で最高のものだと思います。三名の踊り手さん、アミさん、ウアケアさん、ハナさん、皆さんとても良く踊って居られます。今までですと、ウアケアさんはご自身で踊られることに集中されていたようだったのですが、この頃には、ウアケアさんの踊りが皆さんにじんわりと染み込んでいるようにみえるのです。これはとても素敵なことです。そして、それが ウアケアさんの踊りの ハワイアンズにおける集大成のような感じがします。この三年間を振り返ってみると、ウアケアさんの踊りの深化にはただ驚くばかりでした。そして、この素人カメラマンにとっての最後の日、ウアケアさんはご自身を前面に出されて踊ってくださいました。このことは、これまで中々やって下さらなかったことで、舞踏家ウアケア佳奈子として飛び立つときを予感させてくださるものです。次に ウアケアさんの踊りを拝見するときには、どれほどに感動させていただけるのか、それを考えるだけでも幸せいっぱいです。そのときには、すべての人の心にアロハを届ける踊りを見せてくださるでしょう。そのためにも、この素人カメラマンはできる限りの事をやっていくつもりです。
最近になって思うのです。ウアケアさんの最高の踊りはとても素敵なものになりましょうが、それは、同時に、とても可愛らしいものになりましょう。なぜって、ウアケアさん自身がとても可愛らしい方である様だからです。いままで、ウアケアさんの踊りにいろんな形容を付けてまいりましたが、可愛らしい、魂に響くような可愛らしさのある踊りだと分かって参りました。ですから、この「プア ミキノリア」の動画は私の宝物なのです。
【ミキノリア】
作者の トーマス シルベスター カラマは、当時、カウアイ島東部内陸部の カワイハウ近辺に住んでいた、1856 年生まれで 1906 年に死去された方です。音楽関係の活動をされたのは、カラカウア王から リリウオカラニ女王、そして共和国時代です。カメハメハ 4世王の后であられた エマ王妃や カラカウア王が カウアイ島の ナウエを訪問して大歓迎された記憶もまだ醒めていなかったころだと思います。ハワイ王室の方々は音楽に造形の深い方が多いことはよく知られています。そのため、作者の カラマも ナウエを是非訪れてみたいと考えていたに違いありません。当時ですと、海路を ハナレイ迄行くのが最も便利だったと考えると、片道で3日ほどの旅程でしょう。そうすると、一週間ほどの日程の旅行になるでしょうか。最初で最後の ナウエ訪問であった可能性もあります。ところが、そうしたら、着いた先では連日雨に降り込められたのではなかったかと想像します。窓の外を見ると小さな可憐な花が沢山見える。その雨の中で ナウエを思い、この詩を作ったのではないでしょうか。
「ミキノリア」は「マグノリア」であって、「モクレン科」の花だという理解が、フラの世界では一般的です。その様に書かれている辞書もあります。しかし、植物関係のサイトで「ミキノリア」が「モクレン」だと解説をしている例を知りません。花の通信販売のサイト [2] で「モクレン」を見ますと、その中には、多湿を好まないと書かれた種類もあることが分かります。これは、基本的には 「モクレン」全体に言えることなのだと思います。ですから、雨の多いカウアイ北西部では、目立つほどには自然に育たない種類だと思います。お考えになってみてください、歌にも歌われる ハナレイのあの激しい雨の中、この大柄な花が耐えられるものでしょうか。「モクレン」以外の可能性を求めて、グーグル検索で根気強く調べた結果、「mikinolia hihiu」, 「mikinolia hohono」, 「mikinolia kuku」という名前が出てきたのです。日本語歌詞を検討した項をご覧ください。この様にあります。
分布:おそらく西インド諸島原産で、現在では世界中の熱帯および亜熱帯地域に
広く分布する。ハワイ諸島では、ミッドウェイ、ニイハウ、カウアイ、
オアフ、モロカイ、ラナイ、マウイ、カホオラウェ、ハワイに帰化して
いる。
日本語名「ランタナ」です。この事実は多くの方がご存知だと思います。でも、何故この花だと言わないかと考えますと、おそらく嫌われているからだと思います。上記の名前も散々な形容です。実際、ハワイでは好ましくない植物に指定されていて、人為的に植えてはいけないのだそうです。それは、その旺盛な繁殖力のため密集して繁茂し、他の貴重な植物を圧迫してしまうからです。逆に言えば、カウアイ北西部の自然に囲まれた居住地で外を見れば、この花が嫌でも目に入るのだと思います。ただし、この花は帰化植物種ですから、作者が ハナレイを訪れたときには、まだ、それほどの害が出ていなかったかもしれません。いずれにしても、フラをお踊りの方にすれば、「ミキノリア」のこの事実はとても残念なことでしょうから、名前の似た「マグノリア」つまり「モクレン」に見立てて歌うことにしたのでしょう。
【おわりに】
「プア ミキノリア」はとても良い曲で、歌えるものなら歌ってみたいと思ってはいました。しかし、声が出ないという現実には、どう仕様もありませんでした。でも、毎日「プア ミキノリア」の動画で ウアケアさんの可愛らしい踊りを拝見していると、この歌をなんとしても歌わなければならないような気がして来るのです。そこから、裏声を出す練習が始まりました。最初は、裏声を出しても、音程が届きませんでしたが、数週間もトライしていると音程だけは届くようになり、何とか歌ってみたのが今回の結果です。まだ下手です。改善点は見えていても、実際に改善するのは難しいことですから、気長に行こうと思います。
【付録 01 : 拍子: 原歌詞】
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Aloha kuʻu pua mikinolia i lohia i ka wai kūauhoe
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Hoʻolono o ka leo o ke kāhuli ka ʻowē a ke wai ma ka piula
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E hoʻi ke aloha i ka māwae i ke kā--welu holu a Pāpiohuli
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Puana aku au o mai ʻoe 'o naue i ka wai ma ka piula
【付録 02: 拍子: 現歌詞と日本語歌詞】
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Aloha kuʻu pua mikinolia i lohia i ka wai kūauhoe
いとしき 私の 花よ ミキノリア 求め ている 甘き水を
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Hoʻolono o ka leo o ke kāhuli ka ʻowē a ke wai ma ka piula
聞こえる この 歌声 カーフリの この音 流れる 屋根上の水
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E hoʻi ke aloha i ka māwae i ke kā--welu holu a Pāpiohuli
行かん この愛は 隠れ家へ 柔らかい 草のうえに パーピオフリの
❍ ❍ ❍ ❍ ❍ ❍ ❍ ❍ ❍ ❍ ❍ ❍ ❍ ❍ ❍ ❍ ❍ ❍ ❍ ❍
Puana aku au o mai ʻoe 'o naue i ka wai ma ka piula
私が うた えば 貴方が返す ここは ナウエ 屋根の雨音
【付録 03: 拍子: 日本語歌詞】
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いとしき 私の 花よ ミキノリア 求め ている 甘き水を
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聞こえる この 歌声 カーフリの この音 流れる 屋根上の水
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行かん この愛は 隠れ家へ 柔らかい 草のうえ パーピオフリの
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私が うた えば 貴方が返す ここは ナウエ 屋根の雨音
[1] 西沢佑,「ハワイ語の手引き」, 千倉書房, 2021.
[2] 21世紀の花木、マグノリア , タキイ ネット通販.



