とーちゃんの知り合いで、男性のうつ病患者がいた。
もちろんかーちゃんとも顔見知りだ。
この男、ひどい言い方をするようだが、まさしく「根暗」を地で行くような男だった。
かーちゃんとは、性格も価値観もまっっったく合わない男。
あるとき、この男、かーちゃんがうつ病と知って、同じ穴のムジナを発見したと思ったのか、
「Rayさんも同じ病気なんですねー!わかりあえることがきっとありますよね!」
と嬉しそうにメールを送ってきた。
「はぁ・・・・・」
かーちゃんは、適当にソイツとメールを交わしていた。
だがだんだんそのメールのやりとりが苦痛になってきた。
ソイツのメールときたら、とにかく日々の愚痴をグチグチグチグチ書き連ね、
すべて悪いのは誰かのせい、環境のせい、不運のせい・・・
自分が悪いこともあるとは、一つも思っていない。
うつ病患者としては、珍しいタイプかもしれぬ。
普通うつ病患者は、自分を責めることが多いものだからだ。
とにかく、ソイツのメールを開くたびに、
ド~~~~~っと@@
ずーーーーっと下までスクロールするまで、
ひたすら愚痴とうらみつらみが綴ってあるのだ。
こんな奴とは、関わってはいられない。
ただでさえ、自分自身が沈まずに浮いているのが精いっぱいなのだ。
同じ病の「負」の要素満載のヤツの相手など、できるわけがない。
当然、その後かーちゃんはだんだんとメールを返さなくなった。
それでもソイツからは、
「同じうつ病どうし、励まし合いましょう!」
とメールが届いていた。
「励まし合う?」
冗談じゃない、アンタがやってることは、
「僕の愚痴を聞いて
僕は悪くないよね
僕を励まして」
の甘ちゃんづくしだ。
とにかくもう無視するしかない。
とーちゃんもそれは納得した。
その後彼とは、日を置かずして、町でバッタリ出会ったのだが、
このときも延々と、愚痴話につき合わされてぐったり疲れた。
この彼の場合は、ちょっと例としては極端かもしれないが、
うつ病患者は、ただでさえブラックホールのように負のパワーを発している。
本人自身もそれに落ち込みそうで必死なときに、
似た境遇同士で、悩みを打ち明けあうだけの友人関係を築くのは、かーちゃんはオススメしない。
同じ境遇同士というのは安心感が持てるかもしれないが、
互いに負のエネルギーで巻き込み合う危険性が高い。
同じレベルで落ちたまま、浮上することが難しいと思われる。
かーちゃんは、誰に言われるまでもなく、
できるだけうつ病とは関係のない人と関わるようにした。
打ち解け合うことができれば、病気のカミングアウトもしながら、
なるべくプラスの要素が多い人と一緒にいるようにした。
その方が、相手の力を借りて、精神的な浮上ができるからだ。
どうしても苦しい思いの吐露や愚痴は、
「家族」
「互いにリアルでは害のないSNS」
「カウンセラー」
の3者ぐらいに留めておいたほうがよさそうだ。
ちなみにこの彼、先日数年ぶりにとーちゃんが会ったそうだが、
相変わらず病状は続いたまま、相変わらずグチグチと愚痴にまみれ、
周りを恨む生活を送っているようだ。
気の毒だが、「同じ穴のムジナ」で傷をなめ合うような暮らしをしてこなくて、本当によかったと思う。