この医者は前の医者と全然違った。
いざ、診察。
まず、かーちゃん一人ではなく、とーちゃんと二人で呼ばれた。
これはかーちゃんにとっては助かった。
何をどう説明していいかわからない、それを考える気力もないので、とーちゃんにしっかりと話してもらえる方がありがたかったのだ。
問診で聞かれたのは、
1.どんな症状があるか
2.仕事をしているか
3.仕事の内容はどんなものか
4.結婚しているか
5.出産をしているか
6.普段の生活習慣はどんな感じか(食事・睡眠・飲酒・喫煙)
7.とーちゃんとかーちゃんそれぞれの家族構成と、居住場所
8.地元で育ったか(かーちゃんは他県出身)
9.他県出身であれば、地元に住んでどのくらい経つか
10.親族に、精神的疾患を患った者が過去にいたか
・・・・とまあ、問診の細かいこと

穏やかな声で、これらのことを淡々と聞かれる。
しかも、「差支えなければ教えてください」と言われる。
タレ目の先生なので、笑ってなくても笑っているような顔なのがまたいい。
おかげで「コイツ作り笑顔だ!」と変に卑屈になることもなかった。
問診が終わると、今度は200問を超す問診票の記入。
美しい看護師さんが、「ゆっくりでいいですからね」と声をかけて、席を外して一人にしてくれた。
だんだんイヤになるほどの質問量だったが、なんとか書き上げた。
この間、とーちゃんは、待合室に置いてあった「のだめカンタービレ」に夢中。
爆笑しながら読み進んでいた。
そして再度、とーちゃんとかーちゃん二人して診察室に呼ばれて、先生に言われた。
「問診票の結果が、○○点(低)~△△点(高)の間の点数の人は、『うつ病』と診断されます。あなたの点数は、最高点の△△点に限りなく近い。その結果と、僕の問診の結果を合わせて、僕はあなたを『うつ病ではない』と診断できません。
この言葉にあなたが納得できるのであれば、僕はあなたの治療をします。
どうされますか?」
かーちゃんは、とーちゃんに助言も求めなかった。顔を見合わせることもしなかった。
ただ、自分の言葉でハッキリと言った。
「お願いします」と。
端で見ていたとーちゃんは感心した。
「見事だ!!見事なまでの説得力だ!!」