彼は以前から口数の少ない子供だった。


誰かと親しく話すこともなかった。


なにを考えているのか分からないけれど、少年は彼に猫と鴨の親子を会わせたくなった。


彼と川原に足を運べば、今朝の悪夢が綺麗に消え去るような気がした。




今朝の悪い夢は少年の気持ちを暗くした。


その夢が現実に起こるのではないかと信じ込んでしまった。


そんなことが起きてほしくないと、少年は強く願った。


その思いを叶えるために、少年は猫に声を掛けた。


(朝方、川原で約束したのだから、猫は必ず鴨を守る)


その希(のぞみ)が叶うことを願いながら、少年は神聖な場所に友達を連れて行きたいと考えた。


(彼なら嫌な思いを消しさってくれるはず…)


これまでの生活を通して、少年は漠然とした判断基準を見つけていた。


(誰かと鴨に餌をあげるなら、彼と一緒に行きたい)


(彼ならミルクを舐める可愛らしい猫を、ボクと同じように愛してくれる…)





いつしか少年の思いは確信へと変わる。



少年の周りでは、すべてが上手く回り始めている。



この子と猫と鴨の親子を通して、深い関係を結びたいと願い始める。


「いただきます」と皆で声を合わせた後、いつものように少年はパンとミルクをカバンに入れた。


少年の隣の子が、いつものようにパンをくれた。


「もし良かったら、ボクのパンも持って行って」


少年は、「ありがとう」とだけ伝えた。


そこで隣の席の子が、


「そのパンを、どうするの?」


と丁寧な口調で尋ねた。


「誰にも言わないって誓ってくれる?」


少年は耳元で囁いた。


「誓っても良いけど、そんなに重要なことなの?」


少し疑問を感じながら、このことを誰にも言わないと誓った。



少年は不安を抱えながら、教室で四時間を過ごした。


朝、起きた時の不安は、幾分が和らいでいた。


しかし不安が、まったくなくなった訳ではなかった。




そんな気持ちを抱えながら給食の時間がやってきた。


いつものグループで机を揃えた。


給食の準備も整えた。