プロの翻訳者に求められている翻訳品質

 

 

文章の構成には大きく分けて、下記の3つのタイプが存在しています。

 

1 【 I 】で表現されていたキャラクターが、その文章の書き手本人である文章

2 【 I 】で表現されていたキャラクターが、その文章の書き手の創作上のキャラクターである文章

3 【 I 】で表現されていたキャラクターが、複数存在する台詞の掛け合いで構成されている文章

 

【 最近の機械翻訳 】は、【 上記の項目1の文章構成のタイプ 】の文章であれば、人間の翻訳者に近い訳文に仕上げることができますが、【 上記の項目3の文章構成のタイプ 】の文章であれば、たちまち【 誤訳 】ばかり作成してしまうという欠点を持っています。

 

では何故そんなことが起こってしまうのかと言いますと、西洋の言語における人称代名詞の種類は【 I 】【 You 】【 He 】【 She 】【 They 】しか存在しておらず、原文に含まれているキャラクターがどんなに多かろうが、一人称の表現は全てのキャラクターにおいて【 I 】で統一され、二人称の表現も【 You 】で統一されてしまうからです。

 

 

世間では『 今後、機械翻訳がさらに進化していけば、人間の翻訳者は必要なくなる! 』

なんてことが言われているようですが、そんなことありません。

 

 

【 機械翻訳 】の性能をまとめると

【 上記の項目1の文章構成のタイプ 】であれば、【 要約 】【 意訳 】の翻訳品質になりますが、【 上記の項目3の文章構成のタイプ 】であれば、【 誤訳 】【 珍訳 】にしかなりません。そのため、【 機械翻訳 】は翻訳対象となる原文の文章構成によって、翻訳品質の安定しない翻訳ツールということになるため、その弱点を補うために、どうしても人間の翻訳者が必要になるわけです。

 

 

 

 

 

【 検証 1 】

【 機械翻訳 】【 I 】で表現されているキャラクターが、複数存在する台詞の掛け合いで構成されている文章を翻訳するとどうなるのか?

 

【 検証 1 ① 】

【 好きな漫画の台詞の掛け合いになっている文章 】【 機械翻訳 】で英訳し、

【 機械翻訳で訳出されてきた英文 】を文章の上段に配置し、

英訳する前の文章を下段に配置する

 

【 検証 1 ② 】

【 機械翻訳で訳出されてきた英文 】【 機械翻訳 】で和訳し、

【 機械翻訳で英訳する前の漫画の文章 】に、ちゃんと元に戻るのかを検証する。

 

 

 

Death Note

 

【 検証 1 ① 】

【 原文と英訳( 翻訳品質 意訳 ) 】

 

 

【 夜神 月 】 Mikami Teru? Yes, that's right. Don't hide, come inside.

【 夜神 月 】 魅上 照? そうだ。隠れてないで中へ入ってこい。

 

【 魅上 照 】 God!

【 魅上 照 】 神!

 

【 夜神 月 】 ( Mikami, You did well. )

【 夜神 月 】 ( 魅上、よくやった。 )

 

【 魅上 照 】 God ! As you wish.

【 魅上 照 】 神!仰せの通りに。

 

【 夜神 月 】 How many seconds after the first name ?

【 夜神 月 】 一人目の名前を書いてから何秒ですか?

 

【 魅上 照 】 36、37、38、39…。

 

【 夜神 月 】 Nia, I win !

【 夜神 月 】 ニア、僕の勝ちだ!

 

 

【 松  田 】 It won't die. A minute has passed... I will not die.

【 松  田 】 し…死なない。一分は経った…。死なない。

 

【 ニ  ア 】 So I have told you many times that you will not die.

【 ニ  ア 】 だから死にませんと何度も言ったはずです。

 

【 魅上 照 】 Why, why won't you die.

【 魅上 照 】 な…何故、何故死なない。

 

【 夜神 月 】 Mikami, But this can't be.... What's going on....

【 夜神 月 】 魅上、しかし、こんなはずは…。どういう事だ…。

 

 

【 ニ  ア 】 See for yourselves.

【 ニ  ア 】 自分達の目で確認してください。

 

【 ニ  ア 】 The first four are definitely our SPK's real names.

【 ニ  ア 】 最初の四人は我々SPKの本名に間違いありません。

 

【 ニ  ア 】 And the only one who is here and has no name is Light Yagami.

【 ニ  ア 】 そして、ここに居て、唯一名前がないのが夜神月。

 

【 ニ  ア 】 Mikami, He called you God and said he did as he was told.

【 ニ  ア 】 魅上は、あなたを神と呼び、言われたとおりにしたと言った。

 

【 ニ  ア 】 It's settled !

【 ニ  ア 】 決まりです!

 

 

【 夜神 月 】 It's a trap! It's a trap !

【 夜神 月 】 罠だ!これは罠だ!

 

【 夜神 月 】 It's a trap set by Nia to trap me !

【 夜神 月 】 ニアが僕を陥れるために仕組んだ罠だ!

 

【 夜神 月 】 Isn't it strange that you wrote your name in the notebook and didn't die ?

【 夜神 月 】 ノートに名前を書いて死なないというのはおかしいじゃないか!

 

【 夜神 月 】 That proves it's a trap !

【 夜神 月 】 それが罠だという証拠!

 

【 ニ  ア 】 I said you wouldn't die because I tampered with the note.

【 ニ  ア 】 ノートに細工したから死なないと言ったじゃないですか。

 

【 夜神 月 】 No, you... No, it can't be.

【 夜神 月 】 いや、おまえが…。違う、あり得ない。

 

【 夜神 月 】 It's a trap. I don't know anyone like that.

【 夜神 月 】 罠だ。僕はそんな奴は知らない。

 

 

【 相  沢 】 It's too late, Light. Nia won.

【 相  沢 】 月くん、もう遅い。ニアの勝ちだ。

 

【 相  沢 】 Earlier, you said, "I won."

【 相  沢 】 さっき、君は「 僕の勝ちだ 」と言った。

 

【 相  沢 】 That was a confession.

【 相  沢 】 あれは自白したのと同じだ。

 

【 松  田 】 Light, why did you...?

【 松  田 】 月くん、なんで…。

 


【 Death Note 12巻 Page 102 我慢 Page 103 宣言 から引用 】

 

 

 

Death Note

 

【 検証 1 ② 】

【 英訳と再和訳( 翻訳品質 珍訳 ) 】

 

 

Mikami Teru? Yes, that's right. Don't hide, come inside.

三上 照? そうだよ。隠れてないで中に入りなさい。

 

God!

神様!

 

( Mikami, You did well. )

( 三上、よくやった。 )

 

God ! As you wish.

神様!お好きなように。

 

How many seconds after the first name ?

最初の名前から何秒後ですか?

 

36、37、38、39…。

 

Nia, I win !

ニア、私の勝ち!

 

 

It won't die. A minute has passed... I will not die.

死なない 1分経過 私は死にません

 

So I have told you many times that you will not die.

だから、私は死なないと何度も言ったでしょう

 

Why, why won't you die.

なぜだ、なぜ死なない

 

Mikami, But this can't be.... What's going on....

三上 でも、こんなはずは…どうなってるんだ

 

 

See for yourselves.

自分の目で確かめてください

 

The first four are definitely our SPK's real names.

最初の4人は間違いなく我らがSPKの本名だ

 

And the only one who is here and has no name is Light Yagami.

そして、ここにいて名前がないのは夜神月だけだ

 

Mikami, He called you God and said he did as he was told.

三上、彼はあなたを神と呼び、言われたとおりにしたと言った

 

It's settled !

決まった!

 

 

It's a trap! It's a trap !

罠だ!罠だ!

 

It's a trap set by Nia to trap me !

ニアが私を陥れるために仕掛けた罠だ!

 

Isn't it strange that you wrote your name in the notebook and didn't die ?

ノートに名前を書いて、死ななかったのは、おかしくないか?

 

That proves it's a trap !

罠の証明だ!

 

I said you wouldn't die because I tampered with the note.

ノートをいじったから、死なないんでしょ?

 

No, you... No, it can't be.

いや、君は…そんなはずはない。

 

It's a trap. I don't know anyone like that.

罠だ。そんな人、知らない

 

 

It's too late, Light. Nia won.

もう遅い、ライト ニアの勝ちだ

 

Earlier, you said, "I won."

さっき、"俺の勝ちだ "って言ったろ?

 

That was a confession.

あれは告白だ

 

Light, why did you...?

ライト、何故?

 


【 Death Note 12巻 Page 102 我慢 Page 103 宣言 から引用 】

 

 

【 検証 1 ② 】

【 機械翻訳で訳出されてきた英文 】【 機械翻訳 】で和訳し、

【 機械翻訳で英訳する前の漫画の文章 】にちゃんと元に戻るのかを検証した結果

 

この文章には何人の登場人物が含まれていて、それぞれの文章が誰の台詞でダレに対しての台詞であるのかが、原文と比較してメチャクチャになってしまった。

 

・ライト、松田、ニアの一人称が全て【 私 】で統一されて訳出されてきたため、

3人のキャラクターの識別ができなくなってしまった。

 

・ニアが話し掛けているのは、この場に存在しているライトと魅上を除く全ての人間であるため、【 自分の目で確かめてください 】という台詞は誤訳、正しくは【 自分達の目で確かめてください 】と複数形になっていなければならない

 

・ライトは自分の台詞の中で、自分のことを【 私 】と表現しているのに、

相沢の台詞の中では【 俺 】に変更されてしまった

 

 

 

 

 

【 機械翻訳 】の性能の検証結果から分かること

 

文章構成のタイプが

1 【 I 】で表現されていたキャラクターが、その文章の書き手本人である文章の場合なら、

【 要約 】【 意訳 】の翻訳品質の訳文を作成できるが、3 【 I 】で表現されていたキャラクターが、複数存在する台詞の掛け合いで構成されている文章なら、【 誤訳 】【 珍訳 】の翻訳品質の訳文しか作成できないため、翻訳対象となる原文の文章構成のタイプによって性能がまったく安定しないのが【 機械翻訳 】であると言えます。

 

この検証における例題は、そこまで長い文章ではないため、【 誤訳 】と言っても、そこまで酷い【 誤訳 】にはなっていませんが、A4の紙4ページから6ページくらいの文章量を訳すと、もう目も当てられないほどの【 珍訳 】にしかなりません。

 

 

 

【 プロの翻訳者に求められている翻訳品質とは? 】

 

翻訳対象となる原文の文章構成のタイプが、下記のどのタイプの文章であったとしても、

1 【 I 】で表現されていたキャラクターが、その文章の書き手本人である文章

2 【 I 】で表現されていたキャラクターが、その文章の書き手の創作上のキャラクターである文章

3 【 I 】で表現されていたキャラクターが、複数存在する台詞の掛け合いで構成されている文章

 

安定した翻訳品質の訳文をお客様に提供できるのが、

【 これからの翻訳業界に必要とされているプロの翻訳者( 人間の翻訳者 ) 】だと言えます。

 

 

 

 

 

そのため、【 機械翻訳 】の脅威に対抗できる翻訳者の最低条件とは、

下記の項目を満たす翻訳者であると言えます。

 

【 人称代名詞への理解 】

1.翻訳対象となる原文に含まれているキャラクターの総数が理解できる翻訳者

2.それぞれのキャラクターの性別や性格が理解できる翻訳者

3.それぞれのキャラクター同士の人間関係が理解できる翻訳者

4.その台詞が誰の台詞で、ダレに対してのどんな感情を込めた台詞であるのかの理解ができる翻訳者

5.それぞれのキャラクターの識別ができる翻訳者

 

 

上記の項目への理解が不足している状態で翻訳に臨んだとしても、この記事で検証した【 機械翻訳 】と同じくらいの精度の訳文しか作成できません。【 機械翻訳と同程度の翻訳品質しか提供できない翻訳者 】には、【 人間の翻訳者 】としてのアドバンテージは限りなくゼロに近くなるため、その需要はどんどん減少していくと思います。

 

 

そのため、【 これから先の未来で活躍できる翻訳者 】になるためには、【 英文法や英語構文 】の勉強ばかりしていないで、【 文章読解力 】の向上を図れる勉強へとシフトチェンジする必要があると私は考えています。

 

 

 

 

 

下記のURLのリンクから、意訳と直訳についての解説の目次に移動ことができます。