「抗がん剤を投与することを、家族はまだ決めていなかった」
とパニックになっていた私でしたが、CVポート埋め込み術をキャンセルし、強引に退院するという強行には出れませんでした。
ここでキャンセルしても、他の病院も同じ治療方針だったら?
先に原発の大腸癌を手術してくれる病院があったとしても、その手術がきっかけで、寝たきりになってしまったら?
何を選択しても、後悔が残る気がしました。
この強行退院をしなかったことも、後にならなければ、結果が分からない。
CVポート埋め込み術は無事に終わり、3日間抗がん剤を投与して、退院という運びになりました。
このときの私は、抗がん剤を投与された父は、どんどん衰弱し、そのまま退院すらできないのではないかという悪い思いしか浮かびませんでした。
そしてズルイ私は、父は抗がん剤治療を納得して受けたという言葉が欲しくて、抗がん剤投与前日に父に電話をしました。
「お父さん、先生から説明を受けて、納得して抗がん剤治療をするんだよね?」
父「そうだよ、抗がん剤で癌を小さくするんだ」
私「じゃあ、頑張らないとね。でも、副作用で辛かったら、すぐ看護士さんを呼ぶんだよ」
父「わかってる。お父さん、負けないから」
この、"負けないから"の言葉は、今思い出しても涙が出てきます。
これから治療を頑張ろうとする決意の表れの言葉を
私の醜い保身が引き出した言葉のように感じたから。