恐ろしく長文です。GWの暇つぶしに読んでください。
 
いつも忘れ物だらけの僕が、前回レコーディングで沖縄に行った際には一切のトラブルが無く、帰京後に催された由紀さおりさんのツアー初日も無事終えた夜に、嗚呼、珍しく全てつつがなく出来てる!さー、翌朝のレコーディングに向けて編曲の最後の詰めをしよう!
 
と思っていた矢先。その日、作業をしようと持ち歩いていた際の衝撃なのか、編曲に必要なデータ(全音源)の入っているハードディスクドライブの差込口が壊れていることが判明。8割がた完成していた編曲が再生すら出来ない……というところまで書いた前回のブログからの続きです。
 
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コンピュータに馴染みの無い方もいらっしゃると思うので、別のものに例えてみます。
 
通常コンピュータの中に「脳みそ」が入っているのですが、外から接続できるタイプの「追加の脳みそ」がハードディスクで、頭蓋骨に相当する外側のケースの中に収納されています。
 
今回僕の場合は恐らく頭蓋骨の一部のトラブルなのですが、機械の素人の僕にはどうやったら頭蓋骨を直せるかは見当がつかないし、仮に脳みそそのもののトラブルだとしたら、翌朝のレコーディングはほぼほぼ中止。
 
いずれにせよ、早急に検査が必要です。ただし問題なのは、その時点で22時半過ぎということ。
 
 
翌朝レコーディングするアーティストが東京在住の方ではなく、わざわざ前日から東京に宿泊されてレコーディングに臨まれており……
 
 
 
いやぁあああぁぁああああああー
 
絶対に中止には出来ない!!
何とかせねば!!
 
 
 
まずは僕のコンピュータをメンテナンスして下さってるAさんに連絡。
→不在
 
次に懇意にしているエンジニアのBさんに連絡。
→不在
 
 
以前テレビで観てハードディスクを修理する業者さんが存在は知っていたので、ネットで検索。
 
24時間対応との記載があるので、電話をしてみます。
 
僕「すみません。〜というような状況なのですが、今からご対応いただくことは可能でしょうか」
 
業「(※先ほどの例で置き換えるなら)弊社は脳みそを治療する会社でして、そのような頭蓋骨のトラブルの場合対応できる者が居るか担当者に確認しないと分からないのですが、明朝以降に折り返しご連絡差し上げる形でもよろしいでしょうか」
 
僕「ごめんなさい!どうしても今晩中にお願いしたく……お金はどれだけ掛かっても良いので……」
 
業「承知いたしました。担当者に連絡してみます。」
 
24時間対応と記載のあるもう1社も似たような対応。
 
うーむ……事態は思ったより深刻かも……
これで明朝まで連絡が来なかったらどうしよう……
 
 
 
 
 
というタイミングでお仕事中だったというエンジニアのBさんから返信。ありがたい。
 
Bさん「他のハードディスクのケースに差し替えれば何とかなるかもです。替えられるケースって持ってます?」
 
なるほど。別の頭蓋骨の中に自分で脳移植を、というご提案。
 
僕「他のハードディスク!あります!といいつつ、それって自分で出来るようなものなんですか?」
 
Bさん「出来ます!」
 
知らなかった。人はトラブルからはじめて学びます。
 
 
 
「壊すくらいの勢いで!」……
 
めっちゃ怖いけど、背に腹はかえられない。自ら我が子の手術やる!慎重に!ゆっくりと!深呼吸をしながら!
 
バコッ
 
開きました。思ったよりは中はシンプル。何とかなるかも。
 
 
次は、脳みそを入れ替える作業。
 
ケースを代用するもうひとつのハードディスクにも、一応現役の脳みそが入ってるので、ネジをひとつひとつ慎重に慎重に外して……。
 
最後のネジにたどり着いた時です。
気が緩みました。
 
 
勢い余って、ネジをバカにした……
 
 
 
しーーーーーーーん
 
 
 
 
 
取り外せない
 
バカバカバカバカ…………
 
ネジも僕もバカ!!!!!
 
 
 
 
 
先ほど僕がBさんに「何とかなりそうです。ありがとうございます」と送った際に、Bさんはこんなアホみたいな激励メールを返信してくれたのに申し訳が立たない……。
 
 
(改めてBさん、アホだ……)
 
 
 
そんな折、トラブルは重なるもの。
 
先日仕事でお世話になっためちゃめちゃ目上の方から深夜の電話が。目上の方といっても、例えば普段からご一緒させて貰っている松尾潔さんのような方だったら事情を説明して電話を改めさせて貰うことも出来そうなのですが、それが難しいくらいの距離感の方で、更に時間的にも恐らく緊急事態なので、まず電話に出ます。
 
タダならぬ気配。案の定、仕事上の大トラブル。どうしてもその日の内に解決しなくてはならないことのようで、その方のお話が止まりません。
 
ん?そんな最中に、割り込み着信が。……あ、さっきのハードディスク復旧業者の人だ。出たい。あ、でも今は出られない。出たい。呼び出しが切れる。嗚呼……。
 
ふたたび着信。出られない。また切れる。
 
ふたたび着信。今度は別の復旧業者の方からの電話。されど目上の方のお話は佳境で、どうしても電話は切れない。
 
 
 
 
 
 
THE カオス
我がハードディスクちゃんよ、こんなダメな父親を許して……
 
 
 
 

結局、その方からの電話は40分ほど続き、電話を切った時点で気付けばもう深夜0時近く。内容も内容だったので恐ろしく体力も気力も消耗。その日はコンサート本番の後でそもそも疲れてるし、もう何もかも忘れて寝てしまいたい……。
 
 
以前「久保みねヒャダこじらせナイト」という番組で「スマホの液晶保護フィルムを貼る時にゴミが入り込んだ時の死にたさ=1snt(シニタ)」というのをやっていたのですが、それで言うなら今の自分は30,000sntくらい。10時間後には……レコーディングがはじまっている……。Zzzzzz……(辛すぎて強めの眠気襲来)。
 
 
 
 
自失呆然としていると、そんなタイミングでコンピュータをメンテナンスして下さってるAさんより電話が。
 
Aさん「あー、ごめんなさい。先ほどまで仕事でして。その感じなら、おそらく直せると思いますよ。今から僕が川口さんの所に行っても良いですが、ウチの事務所に来て貰った方が早いかもです」
 
僕「……………はい。
どこまででも行きます…(感涙)」
 
 
まず病気の我が子をプチプチでグルグルに包んで、深夜の道で事故に遭わないように深呼吸を繰り返しながら麻布にあるAさんの事務所へ。
 
検証して貰ったところ、脳みそそのものは問題が無かったようで、新たな頭蓋骨に交換して頂き無事復活。
 
 
「パパー、治ったよ!」
 
我が子よ!!!!!
本当に良かった!!!!!!
途中心折れかけて(睡魔に襲われて)本当にごめん!!!!!!
 
 
 
トラブル発覚から2時間の出来事(うち40分ほどは電話)とは思えない2日分くらいのドタバタ感と疲労感。
 
その後、異様な集中力と火事場の馬鹿力でアレンジは仕上がり、何なら思っていたより多くの睡眠時間も確保できた上で、翌日楽しくレコーディングに臨んだ僕は、心臓の一部に異様な密度の剛毛の生えてる珍獣、究極のバカな生き物なのかも知れない。
 
とはいえ、バカな生き物なりに二度と同じことを繰り返さないように改善を。まずは衝撃に強いハードディスクに変えたこと。
 
 
冷静に考えると、僕の全部の音源のデータの入ってる「追加の脳みそ」を、よりによってあんな衝撃に弱そうな剥き出しのケースに入れておくの、マジで怖い。
 
トラブルから学びます…。
 
あと、Aさんに脳みそのクローンを作って貰うことにしました。今回の一件もクローンさえあれば起きなかった騒動。
 
「ハードディスクのクローンは必要かもですね」と提案口調で言ってみたところ、去年からお世話になっているAさん曰く、クローン作成は常識中の常識のようで「今までよくクローン作ってなかったですね」と驚かれました。ええ……大変バカな生き物なので、考えたことすら無かったです。
 
トラブルから学びます…。
 
後日作品が発表された際に、この時の話を改めて書きますね。アーティストの名前を聞いたら、僕がどれだけのパニック状態に居たか、より具体的にご想像いただけると思います。
 
にしても、ブログがある時代に生まれて良かった。こんなトラブル続きの日々を自分ひとりでは抱えきれない。文章にして、誰かに読んで頂くことでしか、成仏不可。
 
以上、物事が上手くいけば、それと同量のトラブルも勃発する僕の人生の質量保存の法則が実証された日のブログをお届けしました。