手術は全身麻酔で行われます。
其の為、麻酔科の先生に受診し、アレルギー有無等の確認と、
全身麻酔による副作用の可能性について説明を受けました。
次に口腔外科の受診です。
親知らずの抜歯からその後の歯肉の炎症でお世話になってきましたが、
今後は手術によってできる口から鼻への大きな空洞を塞ぐ大きな入れ歯みたいなもののサポートをしていただくことになります。
その為の僕の歯型取りをしました。
「これから不自由を感じるでしょうけど、
我々もできるだけフィットするものを作って行きますからね」と先生は言ってくれます。
それと、それがずれたり落ちてきたりしないように、
フックか何かが必要で、今回の手術とは関係ない右上の一本の歯を少し削りました。
それから、歯と鼻が繋がってしまうので、口のバイ菌で炎症が広がらないように、
今まで以上に口内を清潔に保つ必要があり、その指導を受けました。

病院から連絡があり、
手術は、9月26日、前日に入院することになりました。
金沢の兄たちからも激励の電話を貰いました。
僕は僕で、心残りがないように、食べたいものを食べました。
和食好きなので、お寿司に、天ぷらにお蕎麦にすき焼き。
そしておやつの小豆もの。
関空まで妻とドライブをして、
雲ひとつない澄み渡った空と航空機の離発着を眺めていたら、
心が空っぽになって癒されました。これで愛車ともしばらくお別れです。

入院前の一週間は、親知らずを抜いた後の痛みが強さを増していました。
ちょっとアルコールが体に入っただけでも痛みが増すので、アルコールは絶っています。
鎮痛剤のカロナール300一回二錠を一日三回服用していますが、
それでも仕事中は左頬を左手のひらで覆っているか、
両手をチューリップのような形にして、その上に顎を載せて痛みを緩和させていました。
そんな痛みから逃れたくて、早く手術日が来ないかと思いました。
PETの結果を踏まえた最終治療方針を聞く前日の夜が、
一番寝つけませんでした。
がんが転移してはいないか心配が駆け巡ります。
担当の先生からはこのがんは転移しにくいと聞いていますが、
それでも転移していないとは言い切れません。
判らないことは心配しても無駄と言っている人の発言と思えないと感じるかもしれませんが、
転移がなければ方針に従い進む、
転移していたら新たな治療方針を再検討するかもしれない、
との間で気持ちが揺らぎます。

9月16日の頭頸外科の診察室。先生の言葉を待ちます。
「PETの結果を見てもがんは手術で切り取る方針で良いと思う。
もし骨を突き抜けていたら、その後放射線治療を行います。
又、癌転移の症状も見られない。」と言われました。
本当に、目の前がパッと明るくなったような気持ちになりました。
「手術をお願いします。(妻も同意)」
「では入院の手続きを進めましょう。」
「大阪大学の助教授も先生の治療方針を支持すると言っていました。」
にっこり笑って「頭頸外科は狭い世界ですから、学会等で会うんですよ。」
手術日、入院日は別途連絡をいただけるということでした。
診察室を出て待合室で待機していると、看護師さんが寄ってきて、
「最初お目にかかったよりすっきりされたご様子です。
がんは不幸ですけど、これを乗り越えて頑張って下さい。」
と励まされました。
僕はお礼を言い、良い病院で手術してもらえる幸運を感じました。


                    
セカンドオピニオンを聞きに、大阪大学医学部付属病院に行きました。
早速、担当の助教授の意見を伺います。
「先生、私の担当の先生の治療方針をどう思われますか?」と聞くと、
「そうですね。とても患者さんのこと、
つまりあなたのことをよく考慮した治療方針だと思いますよ。
治療法には我々もわかり得ない副作用が潜んでいます。
それが、20年後30年後の出てくる可能性は否定出来ない。
現に私どもの病院にも後々の副作用で苦しんでおられる患者さんがおられる。
あなたは まだ若いので、
後々のことを考えるとそういうリスクがもっとも少ない手術を第一に考えるという方針は、
良いのではないでしょうか。」と先生はおっしゃる。
「次に伺いたいことは、このCT並びにMRIを見られて、先生なら手術を選択しますか?」と聞きました。
「うーん、難しい質問ですね。ご担当の先生は手術に自信を持たれているから踏み切るのではないでしょうか。医者は自信のないことはなかなか踏み切れません。」
妻は「手術をするとなると口の中からメスを入れて、
顔に傷がないように手術をしていただけるものでしょうか?」
「この場合、鼻の横に沿ってメスを入れて、
鼻の下のくぼみ、人中に、にメスを入れます。
メスの精度が上がっているので、傷は目立たないし、
顔には多くの動脈が通っているので、治りも早いですよ」
「最後に、先生は私の担当先生のことをご存知ですか?」
「ええ、学会等でお会いします。立派な先生です。
私のセカンドオピニオンは、全面的に支持する、にしようと思いますがよろしいですか?」
「はい結構です。ありがとうございました。」

書いてもらったセカンドオピニオンを持って、大学病院を後にしました。
違う治療法の提示がないセカンドオピニオンになりました。
でも僕と妻にとっては、とても大きな意味のあるセカンドオピニオンです。
手術方針についての決心がついた上に、
担当の先生への信頼がぐっと強くなりました。
担当の先生の手術をお願いしよう、そう決心が確固なものになりました。
セカンドオピニオンには、そういう効果もあるということを知りました。