今年で40年目を迎えるシマノジャパンカップ。まずは今まで運営された方々のご尽力に、心から敬意を表します。


40年もの時の流れ、そしてこれからの未来、投げ釣りの有り様も変わりゆくものとは思いますが・・・。


今年のジャパンカップ投のルールを見て驚きました。

本当にこれでいいの?何でそうなるの?


「出たことも無いヤツが偉そうに」って言われるかもしれませんが、この釣りが好きだからこそ、投げ釣りの将来を案ずればこそ違和感を覚えるんです。


超絶に長い話になりますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。


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シマノジャパンカップ投、第1回は1984年7月に石川県小松市で開催されました。


月刊フィッシング1984年10月号の記事をご覧ください。


表紙


第1回優勝の河西美次氏

拡大して文章もご覧ください

競技の様子

競技終了、表彰式

結果は、匹数で勝る2位の選手を抑え、遠投で良型を揃えた河西選手が優勝でした。

近投手返しで数を稼ぐか、遠投で型を揃えるか、重量制というルールにどうアプローチするのか?
ポイントが遠ければ針数を減らしてでも遠投しなければならず、近ければ多点針仕掛けを手返し良く捌く技術が求められる。

誰でも手軽に楽しめて、追究すれば奥が深い。投げ釣りって、やっぱり面白いです。

記事にも書かれていますが、ジャパンカップ投は磯、チヌ、ヘラ等の大会よりも先に開催されました。
投げ釣り不人気が囁かれる現在とは、人気も注目度も大きく違ったようです。

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第1回を制した河西氏については、以前この記事でも取り上げました。 


この記事では「遠投と一投多魚の両立こそ、戦後に発展した投げ釣りが30年かけて辿り着いた到達点」と書きました。


そもそも投げ釣りの発展は、戦後のグラスロッドとスピニングリールの普及があればこそ。

その陰にはこんな先人の努力も有りました。



小田原一鱚氏、富士工業の大村隆一氏、釣りサンデーの小西和人氏や徳島の松本恒雄氏、河西美次氏や塩田淳氏といった一流トーナメンターたち。

先人たちの努力や様々な大会での交流、その上で日本独自に築き上げられた現代の投げ釣りスタイル。


全長が3mを超えるような多点針仕掛けを絡ませずに捌き、100m以上の彼方から魚を何匹もゾロゾロと釣り上げる。


そんな釣技、世界中のどこを見ても有りません。

個人的には重要無形文化財になっても良いとすら思っています。


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現在のジャパンカップの取り組みを見てみましょう。


【2024年のルール】
針数は3本まで、しかし検量匹数は無制限、
ということです。

過去の流れは、
「仕掛けの針数は10本まで、総重量を競う」
から
「仕掛けの針数は5本まで、10匹の重量を競う」 に変更。
そして今年は
「仕掛けの針数は3本まで、総重量を競う」 
になったと・・・。

う〜〜〜ん・・・・・・・・・・。

ジャパンカップは何を競って、何を発信しようとしているのでしょうか?

針数が問題なの?

激しく疑問です。

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では、考えるべき問題点はどこなんでしょう?以下にいくつかまとめてみます。

【資源保護について】
魚を釣り過ぎないよう、資源保護を意識させるのは悪くないと思います。
(100匹も釣って近所に配ってる人は、この点少し意識してください。)
ならば、何故「検量匹数は無制限」なのでしょうか。
資源保護を考えるならば、制限すべきは針数ではなく匹数や重量なのでは?
あるいは小さすぎる魚を釣らないために、8号未満の針は使用禁止とか。

例えば、最も早く300g釣った人が勝ちというルールだったら、釣り過ぎること無く、多点針でも遠投でも存分に釣技を発揮することが出来ますよね。

せっかく確立された「一投多魚釣法」を禁じるのは、先人たちの努力を踏みにじる、投げ釣りの歴史に対する冒涜です。

釣り過ぎない意識は大切ですが、資源枯渇を心配するなら問題は他にあると思います。


【環境問題について①釣り人の立場で】
投げ釣りをしていて、申し訳なく思うのは高切れや根掛かりです。
仕掛けやその他のゴミをいくら持ち帰っても、切れた道糸や鉛の天秤は永遠に海の中。

ならば、高切れや根掛かりによる仕掛けのロストを回避する方法をルール化するべきです。
具体的には糸を太くする、浮き上がりの早い天秤に限定するなど。
あと、鉛に代わる錘や自然分解する糸の開発も課題。難しいけど、放置してはいけない問題です。

【環境問題について②釣り以外の原因】
釣り人がどうこうじゃなく、投げ釣り存続のために最大の問題は、河川工事や港湾の工事。
治水のためとは言え、砂防ダムが出来たり河川をコンクリートの三面張りにした結果、砂浜がどんどん小さく狭くなっている。

(必要な工事ならともかく、公共工事の予算消化って場合も?諫早湾のギロチンをやっちゃう国ですからね。)

鳥取では1980年代に鳥取港の拡大に伴い、千代川河口の向きを変える大工事が行われました。
結果、砂浜がどんどん狭くなってるし、鳥取砂丘が草原化しているのも、少なからずこの工事が影響しているようです。

50年後には、気持ち良く投げ釣りが出来る砂浜なんて、無くなっているかもしれません。
「シロギスを」ではなくて、渚や砂浜の保全活動こそ最重要課題。

ジャパンカップの前夜祭で専門家を招いてディスカッションをするとか、未来に向けての具体的な行動計画を考えるとか。
全国から投げ釣りを愛するトップレベルが集まる場だからこそ、この問題について考える絶好の機会だと思います。

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僕が子どもの頃、最先端のタックルで6色や7色も遠投する大人に「カッコいい〜!」って憧れたし、8本針や10本針仕掛けに鈴なりでキスを釣り上げる写真を見て「いつか自分も」と夢見たものです。

三つ子の魂百まで。

いまだに投げ釣りが好きなのは、あの頃見たカッコいい大人の姿が忘れられないから・・・。

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ジャパンカップは何を競って、何を発信する場なのか?

まずは素晴らしい釣技を競って、カッコいい投げ釣り師の姿を見せて欲しい。

そして、憧れた子ども達が大人になったときも、白い砂浜で美しい水平線に向かって投げ釣りを楽しめる世の中であって欲しい。

40年続くジャパンカップだからこそ、そういう姿や思いを発信する場であって欲しいと、心から強く願います。

針数を議論するのでは無く・・・。

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最後に。
ルール改正については、僕とは別の視点で様々な意見が有る中で、運営の方々が苦慮された結果だと思います。
僕のような人間が場外からとやかく言うのは、大変失礼な話。
不快な思いをされた方には、心からお詫び申し上げます。

ですが・・・、
お年玉でシマノエアロキャストを買ってから40年、投げ釣りを愛するが故の意見として、耳を傾けていただければとも思います。

最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。